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心に光を灯す小説

こんにちは。

書籍化が待ち遠しい作品があります。
現在、小学館のWEBきららにて連載中の柚木麻子さん著の『らんたん』です。
先月号では、三部作の内の第二部の連載が開始しました。

『ランチのアッコちゃん』の著者でもある柚木さんが、母校の創設者を主人公とした『らんたん』は、日本女性の教育や地位向上に尽力した女性たちが活躍する作品です。

<あらすじ>
女子教育の黎明期。
女子高等教育のために志高く尽力した女性たちがいた──。
道とゆり。
ふたりのシスターフッドが世界に新たな明かりを灯す大河女子小説。

津田梅子、村岡花子や広岡浅子。
近代の働く女性の礎を築いた人物が次々と登場します。
史実をベースにフィクションで味付けした『らんたん』は、読むとちょっと前向きになれる作品。

作中では明治から大正に変わったところですが、いつの時代も対人関係、恋愛結婚、お金と人間の悩みは変わりません。
過ぎ去りし日の後悔に思いをはせる人、成し遂げたい何かを追い求める人、何かを掴むために模索する人。
人の想いと思想が絡み合い、分かりあえないままの人間関係もあるものの、登場人物たちは皆大なり小なり悩みを抱えながらも真剣に歩み続けます。

特に「WEBきらら 3月号(2月20日配信)」で津田梅子による決断とラストシーンは見もの。
お互いの背負うもの、立場を忘れて、ひとりの人間として向き合う二人。
親友の名誉のためにした決断と行動、最期の語らいに思わず涙がこぼれます。

フィクションのお仕事小説のように勧善懲悪でもなければ、人の数だけトラブルも発生します。
ひとつネタバレをするならば、作中の徳富蘆花や有島武郎、野口英世は現代でもいそうなキャラクターですが、周囲にいると怒りたくなるかもしれません…。
一方で登場する女性は強くてたくましい!
自分の名声が傷つかないか恐れる徳富蘆花、「僕はどちらの味方でもありませんよ…」なんてアタフタする有島武郎を前に、創作によって汚名を着せられた親友のために立ち向かう津田梅子の頼もしいこと。
スポンサーの娘である婚約者の悪口を言う野口英世を一刀両断する河井道の物おじしない態度。
渡辺ゆりの河井道とともに夢を叶えるための決意。
今週更新される最新号での展開も楽しみです。

女性は癖の強い人物が多数集まっているにも関わらず、誰かを悪者にすることなく、立ち位置や主義主張の差によるものとして描いているので、昼ドラ度数は低めでマイルド。
これを機に著者の他の作品も手に取ってみたくなりました。

なお、これまでのストーリーの振り返りや登場人物のおさらいをしたい方には、インタビュー記事が参考になります。
教科書にのっていた人物もや朝ドラで見た人物も次々と登場するので、平塚らいてう、柳原白蓮、明治から昭和にかけて話題になった人たちを少しでも知っているとより楽しく読み進めることができるかもしれません。
『らんたん』を読むまでは、主人公二人のことをほぼ知らなかったので、次の休みには関連書籍もいくつか読んでみたいと思います。



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