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教科担任制 〜子どもが1人の大人を絶対視しない〜

こちらのマガジン、記事は埼玉県久喜市で無料塾を運営している作者が1週間に1本、教育に関する話題について書くものです。今週もよろしくお願いします。

さて、この話題は先週になってしまうのですが、今週の「啐啄同機」で検討したいと思います。小学校高学年を対象に外国語、理科、算数での教科担任制の導入を求める中教審(中央教育審議会)答申が出されるのではないかというものです。

(参照:Yahooニュース(朝日新聞デジタル)2020年8月29日最終アクセス)

https://news.yahoo.co.jp/articles/92449a30248e52728190218336e1f331badeec98

まず、前提として現在小学校では学級担任の先生がほとんどの授業を行う学級担任制、中学校、高等学校では教科ごとに担当する先生が異なる教科担任制がとられているのが一般的です。学級担任制、教科担任制それぞれについては、これまでも専門家の先生方などが分析的なお話をされているとは思います。

ここでは元小学校教員であり、中学校の現場も知る私が私なりの小学校の教科担任制を考えてみたいと思います。主なポイントとして2点からお話しできればと思います。1つ目は教科担任制を導入する教科、学年などの条件について、もう1つは教科担任制の留意点についてです。

教科担任制導入条件を考える

今回、教科担任制が導入されようとしているのは小学校5年生、6年生、そして教科は算数、理科、外国語とみられています。

小学校高学年を対象とすることについては私は賛成です。やはり、低学年、中学年くらいまでは1人の先生が手厚く学級を見ていくことが重要と思います。"教員"というよりも"先生"という感じで心理的距離が近い感じで日々の学校生活を送れるようにすることが必要ですよね。今回の議論の延長として少人数学級などが進めば、よりよくなるのかなと思いました。

対して高学年になると、子どもたちもそれぞれ大人に近づいていく中で"大人との距離感"も重要になってきます。それが教科担任制であれば大人と子どもの距離感について、学級担任制よりも意識しやすいと思います。

続いて教科ですが、算数とかは少人数授業が積極的に行われている印象です。すでに学級担任以外の複数の先生で行っているのであれば違和感なく行えるでしょう。あとは英語ですが、英語もALTの先生がいらっしゃることが多いですから、学級担任の先生だけで行うという印象ではないと思うんですよね。実施のハードルは比較的低いと思います。理科はどうでしょうか。理科というのは担任の先生の負担が非常に大きい教科の一つですよね。実験の準備、片付けなどは非常に大変です。そのような中、教科担任制ができるのであれば先生の負担軽減にもつながります。とてもいいと思います。

ちなみに、私の小学校時代でも5年生、6年生両方とも理科は理科担当の先生が授業を行なっていました。だから、私自身この3教科であれば実施のハードルはそこまで高いものではないのかなと思っています。

教科担任制の留意点

教科担任制については、ヒト・カネが揃い現場で運用できる段階にあれば基本的にはいいことだらけと思います。

ただ、私は導入初期に一つだけ気をつけることがあると思っています。それは

子どもを前にして、教員同士で互いの教育、指導への批判が行われるのではないか

ということです。どういうことか。

小学校の先生は現行免許では全ての教科を教えることができます。特にベテランの先生になれば1〜6年生の多くで指導経験があり、年間を通した授業の進め方もなんとなくわかっているという方もおられるでしょう。そうした中で教科担任制が導入されると自分ではない人が学級の授業を持つようになる。教科担任の先生による進め方や指導法が自分とは違かった場合、それに違和感を持つこともあるでしょう。そうなったときに教科担任の先生について子どもの前であれこれ言ってはならないということです。

実はこれは私も日頃から気をつけていますし、よく反省することでもあります。塾の業界でも代講だったり、一時的に別のクラスの授業を行うことがあるのですが、「?」って思う時があるんですよね。それについて直接的には言わないけれど間接的に言ってしまうことがあります。言った後に後悔しますよね。塾は学習を教えるだけだからいいですが、学校だと生活指導など指導する場面も増えます。そういうときに他の先生の信用を下げるような行為、言動はそれを言われた先生の教員人生にもつながりかねません。この教科担任制は教員の倫理観は充分であるという性善説でもって行われようとしています。

終わりに

先ほども言いましたが、教科担任制はそれを運用するためのヒト・カネが揃っていればとても効果的に行うことができると考えます。

やはり、担任の先生1人を絶対視する、これを6年間もやるのは危険があります。なるべく早い段階で様々な先生による多様な教育に触れることで子どもたち一人ひとりの学力向上、精神的安全につながるのではないでしょうか。今後の展開が興味深いですね。


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