鮫島@眠り鱶

眠り鱶になりたい人生だった

鮫島@眠り鱶

眠り鱶になりたい人生だった

マガジン

  • 節気刊無代誌 眠り鱶

    架空のサークル「眠り鱶」の架空の無代誌。 要するに節気ごとに書いたものをまとめたディレクトリ。

最近の記事

さよちゃん

 雨上がりの、とても気もちのよい日のことでした。  さよちゃんとかよちゃんは、えんがわで、おままごとをしています。さよちゃんが、おかあさん。かよちゃんが、こどもです。 「かよちゃん、かよちゃん。ごはんですよ」  さよちゃんは、つみ木のおにぎりと、たまごやきを、おままごとのおさらにのせました。かよちゃんは手をたたいてよろこびます。それから、つみ木のおにぎりをとりあげて、いただきまあす、と、ぱくり。おくちにくわえてしまいました。 「あらあら、これはつみ木ですよ。まねっこだけ

    • うららちゃん

       小さい頃、たぶん、四歳くらいだったと思うんだけど。今じゃ考えられないけど、あの頃ってそのくらいの年の子供が一人で遊びに行くのなんて普通だったわけじゃない? それで、私いつも団地の中の公園に一人で遊びに行ってたのね。  そこは団地の結構広い範囲から子供らが集まるもんだから、当然知らない子とかもいたし、そこで知り合う遠くの棟の子とかもいたのね。で、ある日私より少し年上くらいの女の子と仲良くなったの。うららちゃんて言ったかな、たぶんそう。  うららちゃんは古風な感じの美人で、

      • 猫(取扱注意)

         そういえば、「猫」というものについてまだ説明していませんでしたね。  実のところあれをなぜ「猫」などと言うようになったのかは、もう誰にもわかりません。昔からそう言われていましたから、その呼称が生まれた当時の職員は誰も残っていませんしね。まあ、色々な形状がありますから、猫みたいなやつがいたのでしょう。  あれは平たくいえばバグに塗れた魂です。傷ついた、でも構いませんが。人によっては癌化している、などとも言いますね。イメージは伝わりますか?それは良かった。続けます。  人

        • 双色

           双色《フタイロ》の話をしよう。  昔昔、ある島の海辺の洞窟に、双色という名の異人が住んでいた。見た目はヒトのようだが、片方の目が赤、もう片方の目が黒で、根の国の使いであるとされていた。年に一度、双色が洞窟から出てくると近くの村の人々は皆家に閉じこもり、戸も窓も厳しく塞いで楽土の神に祈りを捧げながらこれが去るのを待った。  しかしこの双色は海神に遣わされて人の世の善悪を見守る神であったともいわれ、時折子供のいる家の前に立ち子供と何事か問答をして、その子の霊魂が邪悪なものであ

        さよちゃん

        マガジン

        • 節気刊無代誌 眠り鱶
          18本

        記事

          怪物と接骨木(にわとこ)の話

           昔々、あるところに人喰いの怪物がおりました。怪物は生まれながらの邪悪でしたが、不幸なことに、おのれの魂の醜悪さと犯した罪の重さについては、よくよく承知しておりました。しかしその知は罪を求めるあさましい欲を抑止するにはいたりません。  怪物は欲望のままに人を襲い、穢し、その上骨も残さず喰らい尽くす有様です。幾人もの勇者が怪物を滅ぼさんと挑みかかりました。しかし怪物に与えられた邪神の加護はいかなる聖剣の一撃も跳ね返し、聖水を蒸発させ、聖遺物による破邪の矢じりをも放たれる前に朽ち

          怪物と接骨木(にわとこ)の話

          鬼のはなし

           昔昔、ずうっと、昔。  東の国の山奥に、鬼が住んでいた。赤い肌に角をはやしたその鬼はたびたび麓の村に現れては女を拐って我がものとし、飽きれば頭からばりばりと喰い、骨だけを崖の下に放り投げてまた次の女を拐いに行った。  ある時、鬼が拐ってきたのはカガリという名のたいそうな醜女であった。体は男のように大きく、色は浅黒くて頬骨が張り、口をいつでもへの字に曲げている。おまけに大酒飲みの暴れん坊で、当然嫁の貰い手もなく、独り身のまま三十をとうに越していた。  カガリは鬼の

          鬼のはなし

          この素晴らしき世界

           昔昔、とは言ってもそう遠くはないほどの昔。  あるところに一人の偉大なる魔法使いがいた。  魔法使いは古今東西のありとあらゆる魔法を修めていた。もっとも得意とするのは変化の術。猫でも、蛇でも、蝙蝠にでも、どんなものにでも姿を変えることができた。人の目には見えない小さな壁蝨にも、巨大極まる竜にさえも、およそ生き物であるならばどんな姿にでもだ。  どんな姿になろうとも、突然現れた新入りを物珍しげに取り巻く彼らとは決して同胞ではない。そのことに少しの寂しさを覚えることはあれど、そ

          この素晴らしき世界

          頭頂に主張の強い白髪あり抜くな我とて君のヒストリ

          頭頂に主張の強い白髪あり抜くな我とて君のヒストリ