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【小説レビュー】傲慢と善良

辻村深月さん原作の「傲慢と善良」が映画化され9月27日に上映されるとの事で、私はたまたまテレビで取り上げられているのを見ていました。
主演の(W主演かな?)藤ヶ谷さんが原作についてとても真摯にコメントされていたのが印象的で、シンプルにこの作品を読んでみたい!と思い、早速ネットで試し読みをしたところ、とても読みやすく面白そうな予感がしたので、文庫本を即購入。
そして、その予感は的中しました。
週末なのを良い事に、ひと晩で一気に読了し
最後まで読み終えたのは、早朝の4時前…。
久しぶりに徹夜をしてしまいました。

まず、声を大にして言いたいのは、作者様の人に対する深い考察力に物凄く脱帽したという事。
多くの人が、多かれ少なれ身に覚えがあるような、あまり言語化されたくないような感覚を、見事に丸裸にされている様な。ああ、マウンティングの正体とはこういう事なのか、と腑に落ちるような。
人生の在り方を問われる作品です。

そしてミステリー要素がある為見方によっては、恋愛小説らしくないのかもしれないけれど、私はれっきとした大恋愛小説だと思いました。
恋愛というのは当然、対人間関係、そして自分自身の在り方というものが複雑に絡み合い成り立っていくものだと考えられるので、
それらを極限まで掘り下げて削ぎ落とし輪郭をはっきりとさせていく工程が実に丁寧に描かれ見事に本質に迫っている作品です。


ここから少しネタバレを含みます。



私は自らの恋愛にも当てはめながら物語の行方を追っていたのですが、最初に思うところ
人は何故、失うまでその真価に気付かないのでしょうか?という事です。

特に男性に多い様に感じました。
女性と比べ不器用だったり、ビジョンを描くのが苦手な生き物なのかもしれません。

再婚した私の最愛の夫も実はそうでした。
彼の場合はお互いに子供が居る故の葛藤という、明確な理由はあったのですが、交際1年以内に私は2回も振られています。
しかし結局、その2回を経て離れ難かったという現実を彼はついに受け入れそこから離れるという選択肢は一切なくなり今に至るのです。

話は脱線しましたが、私が本作を大恋愛小説だと思うもう一つの理由が、このお話の結末です。

離れた時にお互いが自身を省みたり大切さを再確認したり
それをお互いが出来た時にだけもう一度やり直せる
チャンスがあり、

そしてやっとの想いで再び結ばれた暁には、
強固な絆が出来て、簡単に離れてはいけないという事を身を持って学ぶのです。
リアリティーがありすぎます。
私と夫も作中のエピソードとは全く異なりますが、間違えなくこの大枠の過程を踏んでいるのです。
大恋愛でした…。


久しぶりに出会えた良作が嬉しくて、ついレビューを書いてしまいました。
9月の上映は絶対に観に行こうと決めています。
まだ手に取ってない方には絶対にオススメなのでぜひご覧下さい。
きっと自身を省みるような良い気付きが得られる事と思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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