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「趣味・特技」

履歴書を書く時に毎回惰性でなんとなく埋めている項目の一つ、「趣味・特技」。アルバイトや就活(新卒)向けのフォーマットではほぼ必ず用意されているが、この頃はここを迷わずに書ける人のほうが少数派なのではないかと思い始めている。

まず「趣味」に関してだが、一体どこまでを趣味と呼ぶべきなのか、その範囲を明確にするのは難しい。時間をかけていれば趣味になるかと言われればそうでもないし、得意なこと=趣味でもない。趣味というのは案外漠然としたもので、無理矢理単語にして捻り出そうとすると多くの部分が切り捨てられてしまう。このことは、下手に書くと間違って解釈される恐れがあることを意味するため、一旦考え始めてしまうと必然的に筆は進まなくなる。

また、趣味と聞けばそこで結構な深掘りが可能だと思っている人も世の中はいるので、ハードルが知らないうちに上がってしまうこともある。趣味にそこまで求められても困るのだが。「昼寝」なら一瞬で片付くけれど、「ギター」と書けば細かく突っ込まれる可能性がある。大変面倒くさい。

「特技」はもっと難しい。辞書的な定義は「特別の技能」(デジタル大辞泉より)だが、そもそも「特別」の意味もよくわからない。世間的に見て特別な才能を持っている人などほとんどいないわけだし。英語でいうところの"Personal Skill"とイコールである感じもあまりしない。実際に役立つ個人のスキルを書けばいいというわけではなく(そもそもこの項目を含んでいるフォーマットを記入するほとんどの人に「特別な技能」は期待されてない)、具体的な内容を細かく記入することも求められていない。では何をもって空白を埋めれば良いのか?個人的には、ここには「趣味の延長」的な何かを書くのが一般的なやり方として定着している印象を受ける。特に、習い事として教育を受けたことのあるスポーツや楽器などがテンプレとして当てはまりやすいと言えるだろう。別にその点で飛び抜けて優秀だったことをアピールしたいわけではなく、これくらいしか思いつかなかったから仕方なく書くのである。

そもそも、特別なスキルを求められていない人向けのフォーマットに、「趣味」はまだ良いとしても「特技」が含まれ続けているのはいささか不自然な気がする。所詮は相手の人となりを知るための材料に過ぎないのだから、わざわざ強制的に書かせる必要もないのではないか。そもそも、特別な技能は資格・経験などとして別の欄に書く場所が存在するのだから。履歴書の「特技」はもはや辞書的な意味を超え、独自の定義を持ち始めている。どうせなら横文字で「パーソナル・スキル」や「スペシャル・アビリティ」などと書いもらったほうがいくらか有難い。心置きなく空欄にできそうだ。


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