異世界転生‐男の娘/僕はこの世界でどう生きるか 55-57
55 ハイルーズ山の人影
ハイルーズ山はこの地方で最も高い山で、標高は3000メートルくらいもある。
山肌に沿って浮かび上がるように飛んでいると、次第に気温も低くなって寒くなってきた。
リリーが最初に派手にくしゃみをした。
「寒いなあ。鎧の下に何か着込んでくるんだった」
「何だ、しょうがないな」
今度はロイナース師が言う。
ロイナース師が口の中で何か呪文を唱えたのだろう。
僕らの周りを泡のような膜が包んで、じんわり暖かくなってきた。
「さすがですね。エロくてもちゃんと魔導士なんだなあ。ところで魔力の方は完全に回復したんですか?」
ロイナースはハイルーズ山の霊廟を凍結させるときに、魔力を完全に使い果たしていたのだ。ゲーム用語でいえばMPゼロという事だ。
大丈夫だとは思うけど、念のため聞いてみた。
「ああ。完全じゃ。ただ自分一人ではあの紅い触手を封じることは無理だとわかっていたからな。仲間になる者がいないか探していたのだ」
「でも、霊廟を凍らせたって言ってたけど、氷はもう溶けてるんじゃないの?」
今度はリズが聞いてきた。
確かに、ロイナース師がその処置をしてからすでに一ヶ月は過ぎているはずなのだ。
「大丈夫。ただの氷ではないしな。それに標高も高いし、普通の氷でも溶けにくいくらいなのだから。外部からの力が働かない限りは数年は持つはずじゃ」
ロイナース師はそう言うけど、僕はなんだか胸騒ぎがしていた。
もしかして、この召喚事件をその紅い触手が起こしているとしたら、その目的は何か。
ついそんなことを考えてしまったのだ。
ハイルース山の寺院が見えてきた。
「資料室はどのへんなんですか」
僕がロイナース師に聞くと、彼はもっと奥だと言った。
「普通なら霊廟のある塔を通らないといけないのだが、空からなら先までいきなり行けるだろう」
寺院に近づくに連れ、異常な状況が見えてくる。
その寺院には今は誰も居ないはずなのだ。
ロイナース師が脱出した時点で、他の魔導師たちは皆やられてしまっていたのだから。
しかし、寺院の門の前には人影が見えてきた。
誰かが、門番のようにして立っていたのだ。
「あれ、骸骨が立ってるぞ」
一番前に乗っているリリーが叫んだ。
死霊術師の洞窟で見たのと同じような鎧を着た骸骨の兵隊だった。
もしかしたら、紅い触手は自分の手足になる兵隊を召喚するつもりで魔法を発動していたのではないだろうか。
手当たり次第に召喚していて、僕やカオルや桃太郎などはそのとばっちりを受けたというようなことは。
それを言うと、ロイナース師は腕を組んで、
「だとしたら霊廟の氷も砕かれているのかもしれんな。そいつらに」
と言った。
「とにかく、資料を探すのが先だわ。今のところ敵に気づかれていないようだし、回り込んでいきましょ」
タバサが言うのに、ロイナース師も賛成のようだ。
僕は正門を左側から迂回するように飛行経路を変えた。
裏門からは崖っぷちの道が、さらに山頂まで続いているようだった。
その裏門前に着陸する。この門には番兵はいなかった。
こちらからの襲撃はあり得ないものと思われているという事か。
でも、そう思っているのは誰だろう。
あの骸骨の兵隊に、そう言う判断をする知能があるようには思えないのだ。
「ということは、ある程度戦略を考えるだけの能力のある手下が召喚されて、向こうについてるって事かもね」
リズが僕の考えをまとめてくれた。
「じゃあいくぞ。みんな、姿勢低くしてな。じいちゃん、案内してくれ」
リリーが淫電の鞭を腰からするりと外して、戦闘態勢を整えるとロイナース師にうながした。
タバサは炎の短剣を抜き、リズは弓矢の準備。
僕も氷の短剣を抜きたくてむずむずするけど、怪我するからやめておけと言われそうだから我慢する。
ロイナース師が先頭になって、こそこそと物陰に隠れながら進んでいく。
幸いこっちの守りはほとんどいないようだ。
何処からともなく、カツーンカツーンと鉱山を掘るような音が聞こえていた。
「あの塔が資料塔になっている。入り口にも誰もいないようだな」
ロイナース師の指さす方を見ると、大きめのレンガを積み上げて建てた円筒状の塔が雪化粧されて立っていた。
56 熱波の部屋
塔に入る所は誰にも見られずに済んだようだった。
「門番以外は霊廟の氷を砕くのに忙しいのかもしれないわね」
タバサが、さっきの鉱山を掘る音の事を想像したのかそう言った。
「だとしたら、まだ怪物は氷に閉ざされているという事だよな」
リリーの言うとおりなら、まだ間に合うかもしれない。
その怪物は、この世界の亀裂から身体の一部分現れた途端に、全能力が解放される前に此処の魔導士たちに魔力で封じ込められてしまったのだ。
その怪物が完全にこの世界に移動してきて、その能力をすべて解放されたら、僕たちだけでは封じるのは到底不可能に思える。
無人の塔の中をロイナース師は、階段を上がり二階のドアを開いた。
その先は高い天井まで本棚が並び、ちょっとした県立図書館みたいに本がぎっしりだった。
「どの本かわかりますか?」
僕が聞くと、ロイナース師は、右手を伸ばして、紐を引くような動作をした。
その先の天井に近いところで三冊の本が引き抜かれ宙を浮いてゆっくり降りてきた。
念動魔法のようだ。
「このあたりだと思ったが……」
茶色の革表紙を捲りながら、ロイナース師が文字に目を走らせる。
さっきまではロイナース師の温暖泡魔法がないと凍えるほどだったけど、塔の中に入ったせいか、その魔法なしでも寒さは感じない。
椅子に座り分厚い本のページをめくるロイナース師。
タバサとリズは、近くに敵が潜んでいないか、警戒中。
僕は近くの明り取りの窓から外を覗いてみる。
しかし、30センチ四方くらいの窓は、すりガラスの様で何も見えなかった。
開くことも出来ない嵌め殺しの窓だ。
少し暑いな。額とわきの下にじんわりと汗を感じる。
さっきまで寒くて凍えていたのに、この部屋に入った途端にこんなに暖かくなるなんて。
「おい、暑くないか?」
リリーもおでこの汗を手で拭いながら言った。
「ちょっと出ようか。この部屋暑すぎるよ」
リズが出口の扉に向かう。
「おお、あったぞ。ここだ」
ロイナース師の言葉で、いったん部屋を出ようとしていたみんなの足が止まった。
天空に湧いてきた紅い触手とフリーマン大師の戦いは一週間に及び、三人の老師の犠牲はあったものの、最終的にはフリーマン大師の封印魔法で決着した。
その概要を簡単にロイナース師は読んで聞かせる。
「その封印魔法ってわかるの?」
タバサが聞く。
「詳しくは書かれておらんが心当たりはある。しかし暑いな。ここを出るか」
ロイナース師も椅子から立ち上がる。
もうみんな汗だくだった。
しかし、その部屋から出るのは簡単な事じゃなかった。
いつの間にか扉に鍵が掛かり閉ざされていたのだ。
「こいつは罠だよ。そうだ。ジュン、超人の力でこの扉破って」
タバサが扉を指さして僕に言った。
ようし、力を解放するぞ。
僕は身体中にみなぎる怪力で、その扉を破壊する。
右手を一閃すると、硬い樹でできた扉は新聞紙を突き破る程度の感触でバラバラになった。
階段に出たが、その場でも暑さは変わらなかった。
どうやらこの塔全体が熱気を持っているみたいだ。
「熱波の術だな。塔全体を包むとは、かなりの強力な魔導士だ」
ロイナース師がつぶやいた。
僕は塔の出口の扉を前にして、振り向く。
「外からの攻撃に準備してくださいね。破りますよ」
皆が、了解の合図を送ってきた。
僕は再び怪力を発動して、その分厚い扉に殴りかかる。
しかし、今度はさっきと同じにはならなかった。
まるで弾力のあるゴムを殴った時みたいに跳ね返されたのだ。
おかしいな。そう言う僕に、ロイナース師が言った。
「魔力の壁でロックされているようだな。物理的には壊せないだろう」
じゃあどうやって開けるんだ? 魔法のロックは魔法で解かなければならないのだろうが。
「少し待て。解錠の術で探ってみる」
ロイナース師は目を閉じてぶつぶつと呪文を唱えだした。
そうしているうちにもどんどん中の気温は上がっているようだ。
「み、水をくれ」
リリーが僕の持っているかばんに手を突っ込んだ。
そのリリーがまず一口飲んで、皆に回してやる。
僕も最後に一口飲んだら空っぽになってしまった。
「やばいな。このままじゃ暑さで体力持って行かれて戦闘にならないぞ」
リリーが大きく革鎧の胸元を開けた。形のいい小ぶりの乳房の胸元が見え始める。
男の時の僕だったらドキドキものだけど、今はサキュバスだし、暑さでそれどころじゃなかった。
「駄目だ。敵の魔力が強すぎる。これは敵は一人二人の魔導師ではなさそうだ」
解錠の術で探っていたロイナース師がため息をついた。
「じゃあどうなるの? このままじゃあ干からびちゃうわよ」
タバサが言うけど、ロイナース師一人の魔力には限界があるのだ。
「そうだ。じいちゃんの精をお尻で受けて、魔力を分けてもらえばいいじゃないか」
リリーの言う方法、僕も思いついてはいたけど、この暑さでエッチなことする気にもならなかったのだ。
「仕方ないな。どれ、尻を出せ」
ロイナース師も男の娘サキュバスについては知識があるようで、すぐにそう言って僕のローブをめくった。
暑いからすぐにローブを脱いで僕は裸になった。
でも、ロイナース師のペニスはゆるいままだ。
「もともとわしは男が好きってわけじゃないからなあ」
そんなこと言ってるけど、今は緊急事態なのだ。
「ええい、じゃあこれでどう? 早く立たせなさいよ」
リズが叫んで、ズボンを下げると、裸の桃尻をロイナース師の目の前に差し出した。
陰毛に覆われた縦長の女の割れ目が現れる。
おお、と呻くロイナース師の股間の一物はじんわりと力を帯びてきていた。
今のうちと僕はその亀頭を口に含んで刺激してやる。
この世界で鍛えぬかれた僕のフェラテクで、やっとロイナース師の肉棒は挿入に足りる硬さを取り戻したのだった。
57 魔導士になった僕
ロイナース師も僕も全裸でバックから交尾の間、リズやリリー、タバサもこの部屋の暑さに耐えかねて服を脱いで裸になっていた。
タバサの豊満な胸、リリーのくびれた腰つきからふっくらしたお尻にむっちりの太腿、それらが溢れて満開の花園に居るようだ。真夏の花園だ。
その光景を見たロイナース師が、ただでさえ暑くて萎えそうな肉棒に元気が出るなら一石二鳥だった。
彼の肉棒は僕のお尻の中で、ゆるゆると出し入れされる。
いつもなら僕も感じて何度もメスいきをするところだけど、やはりこの暑さの中では感じるものもいまいち感じ切れないでいた。
熱波の術で敵を参らせるというこの戦法、自分たちは攻撃されることなく敵だけを打ちのめすなかなか頭のいい戦略だ。
ロイナース師の魔法で周囲だけを涼しくするエアコンみたいな術はあるけど、そればかりやっていても魔力を浪費するだけなのだ。戦闘時のために魔力はなるべくとっておきたいから。
ヒイヒイ言いながらも何とかロイナース師は僕の中に射精した。
ここに来る前に一度僕が口で吸い取っていたから、量は少しのようだった。
でも、その少しの量の精でも、僕に力を与えてくれる。
ロイナース師の精をお尻に受けて、さっそく僕は授かった魔力を確認する。
心の中を探るようにすると、解錠の術に触れることができた。
「じゃあ、やりましょう」
僕がロイナースしに言って、二人でこのロックされた扉の解錠にかかった。
扉に意識を集中するとその扉を覆う粘膜のような物が見えてきた。
「では、力を合わせるぞ」
ロイナース師が行ったときに、僕もその粘膜をはがすように魔力を込めた。
粘膜がじゅるじゅると少しずつはがれていく。
しかし、新しい膜が外からかぶさってくる。剥がしても剥がしても、そうやって外からくるからロイナース師一人では無理だったんだな。
でも、今は外からくる粘膜がガードされて扉まで来れない。
僕の魔法で粘膜を剥がして、ロイナース師がガードしているのだ。
「そろそろ扉が開きますよ。戦闘準備してください」
僕が言うと、暑さにだれながらもあたふたとリリーたちは鎧装備を着こんだ。
では開けるぞとロイナース師が言って、扉を手で開く。
扉が開いた途端、冷気が身体を包みこむ。
汗がすっと引いていく。真夏の熱射の中、冷房の効いた喫茶店に入った感じだった。
すぐにたくさんの矢が飛んでくる。僕は魔力の盾で泡を作りその矢を防いだ。
「いいぞ、その調子じゃ」
ロイナース師に褒めてもらえた。ちょっと嬉しい。
矢が効かないとわかって、大勢の骸骨の兵隊たちが剣や斧をかかげて向かってきた。
さあてやってやりましょうか。タバサが気合を入れて炎の短剣を抜いた。
僕は氷雪の術を骸骨兵たちに浴びせる。
これをまともに食らうと冷気ダメージと共に、動きが鈍くなる効果もあるのだ。
動きの鈍くなった骸骨兵たちは、タバサとリリーに次々と倒されていく。
リズはと言うと、弓で遠くの弓兵たちを狙って倒していた。
しかし、きりがないな。まだまだ骸骨兵は大勢いるのだ。
ずずんと地響きがして、僕らの周りで炎が飛び散った。
遠くに立っているローブを着た敵の魔導士からの大炎球の様だった。
それが着弾する寸前にロイナース師が防御してくれたのだ。
あ、あれは、とロイナース師が驚いた声を上げた。
「ガイルズ師ではないか。クボタ師とキースまで、彼らが死霊術で召喚されておったのか」
ロイナースの見る方に注目すると、同じような魔導士のローブを着た敵が立っている。もしかして、ロイナース師の仲間だった四人の魔導士か。
「駄目だ。いったん退却だ。ジュン、頼む」
僕はそう言うロイナース師を後ろから抱え込むように抱くと、皆つかまって、そう叫んだ。
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