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旅の技術‐休暇とは空(から)にすること。

どのような休暇を過ごしたい?

あなたは1週間の休暇がもらえたら、何をしたいか?

ヨーロッパ周遊、観光地巡り、あちらこちらに行って…という日本人が多いと思う。それはそれで楽しい。普段見たことのないような景色や、人や、食べ物と出会え、仕事とは違った楽しみを与えてくれる。

しかし、その1週間の後はどうだろう。なんとなく"旅疲れ"があるような気はしないか。

ツアー旅行に行くと、毎朝5~6時に起きて、寝ぼけ眼に時差ボケと闘いながら朝食を詰め込み、そのあとバスに詰めこまれる。写ガイドにつれられるがまま、”映え”スポットにつれていかれる。1週間という貴重な時間を使って、可能な限り世界を見渡したいものだから、それはもう忙しい。

日本の空港に帰ってきたとたん、疲れがドッと来る。明日から会社…?

これは休暇というのか?

休暇の定義

休暇の定義とは、仕事や労働などを休む日のこと。つまり何かに従事していることから離れて、それ以外のことができる時間。

休暇を英語で言うとVacation。これはラテン語の”vacare"=「空にする」というところからきている。つまり、言語そもそもの意味は、「空にする時間」ということ。そこにすし詰め状態のスケジュールをみっちり入れたら、本来の意味するVacationではないのではないか。

毎日忙しい日本人的に考えれば、「空にする時間」って何?という感じであるが、私が思う「休暇の達人」であるヨーロッパ人から教えてもらったことの事例をいくつか挙げる。

休暇の達人1

あれは私が大学生のころ、住んでいた町の国際文化交流事業で、オーストリアのウイーンに2週間滞在した時のこと。ホストファミリーは市内の湖がある地区のほとりに"サマーハウス"なる別荘を持っていて、そこで過ごした。私としては毎日観光したり、お隣の国に行ったりしたかったが、ほぼ毎日したのは、湖のほとりで過ごすこと。

常時水着を着用しているホストシスターに引っ張られ、朝から湖に突き落とされる。お腹がすくまで泳いで、お昼になったらホストマザー手作りのご飯を食べる。昼寝をしたらまた湖。夜は小さな手漕ぎボートに乗って虫の音を聞く。他のホストファミリーも泳いでいないときは、湖畔のベンチでゆっくり本を読んでいた。

その頃はまだスマホがなくて、Wifiもほぼないから、インターネットも無縁。ひたすら「空っぽ」の予定がない時間を過ごした。

休暇の達人2

イタリアのプーリア州(かかとの部分)の海沿いのある町に訪れた。それは太陽がまぶしい夏で、みんなビーチでゴロゴロ。これは日本人でもできると思う。

そのホテルはプライベートビーチのほかにもプールもあった。プールサイドにビーチチェアにごろんとしているドイツ人が数人いた。ある年老いた女性に「あなた日本人でしょう。私は日本人がたくさん住んでいるデュッセルドルフから来たのよ」と話しかけられて、ひと時のおしゃべりを楽しんだ。

彼女は海にも行かず、プールでひたすら読書。話せそうな人がいたら気ままに話しかける。彼女の予定はスーパーフレキシブル。まさに予定は「空」。彼女のリラックスした雰囲気に私もリラックスさせられた。

休暇の達人3

私は、ドイツで勤務していたことがある。とにかくドイツ人は休む(休暇&病欠)。ここでは休みが息しているのと同じくらい平等に与えられている。30日という休暇を従業員がとらなければその会社は法律によって罰則が与えられるからだ(ちなみに病欠は別の休暇があてがわれるので30日フルで単純な休み)。

そうはいっても働いているので、仕事のことも鑑みながら30日を数回に分けてとることが多い。ある同僚は次の週から休みだった。私は当然のごとく「どこかに行くの?」と聞いた。彼女は「今度の休みは家でしっかり休むの。家事もたまっているし。」と。

残業もほとんどしない(制度的にできないといったほうが良い)のに、さらにしっかり休んで家事もやるだとぉ?!と理解できなかった。休み明けの彼女はピカピカしていた。仕事のストレスや家事がまるきり「空(から)」になっているのが感じられた。

休暇=どこかに行く、特定のことをするではない

この三つの例を見てみると、ヨーロッパの人たちは日本人とはずいぶん違った過ごし方をしている。もちろん、ツアー旅行に参加して短い期間で世界を見て回る人たちもいるだろう。ただ、ヨーロッパ人の休暇というのは、それをすることで決して疲れないこと=元気になることをしている気がする。

日々の忙しさを一回「空(から)」にし、自分自身と向き合う時間、を作る。それは緻密な計画性のあるものではなく、その時の状態や気持ちに合わせて、行動をする。それがどこか自分の家から離れた場所であったとしても、自分の家だったとしても、コンセプトは一緒。一度「空(から)」にして、整えること。

日本人でも、日本でも実践できる「空(から)」にする休暇方法

私がこの休暇の取り方を知り、100%とまではいけないが、少しずつ取り入れるようにしている。もし1週間休みがあれば、

旅行に行く場合:①2日間以上同じ町に滞在する②計画を密に作りすぎない③本当に行きたい場所だけ決めて、あとは現地に行ってその時の状態や地元の人の話を聞いて予定を作る

ステイホームの場合:①自然の中に身を置いて、普段の忙しさを「空(から)」にする時間を作る。それは近所の公園でもよい。②逆に予定を作る。ただし大まかにざっくりと。午前中は読書と運動、水曜日はスイーツを買いに行く、金曜日はしゃぶしゃぶ、等かなりざっくりしていて、リラックスできる行動。③なるべく人ごみに行かない。

今年は特にコロナの影響で「ステイホーム」が定着したが、そこには日本人が今まであまり実践してこなかった、ヨーロッパ人的な休暇の要素が含まれていて、私たちはその時間を豊かに過ごすために、今新しい知識と技術を身に着けていると思う。

もちろん、私たち日本人は島国から出てどこかに行くのは、往復最低2日費やすし、1週間しかなかったらすし詰め状態旅行も効率的。ただ豊かな休暇のためには「空(から)」にする、という技術を休暇の中に盛り込んでみるのもよいと思う。

今年はゴールデンウイークも、夏休みも、お家で「休暇」を楽しんだ。何か特別なことをしたわけでもなく、どこかに行ったわけでもなく。お正月もこの「空(から)」にする休みを楽しみたい。

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