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赤いニットと君へ

11月のある日、朝起きてテレビを付けると、毎日恒例の星座占いが行われていた。

珍しく自分の星座が1位だった。

占いはあまり信じないけど、ちょっとだけ嬉しかった。

でも嬉しかったのは束の間。ラッキーアイテムは「赤いニット」とアナウンサーが言った。

持っていない。いや、持っていたとしても多分着ない。

だけど、その日は自分の運勢が1位であることは占いの結果を知る前から分かっていた。

図書館で一目惚れしてから1年が経とうとしており、もう君とは会えないと諦めかけた頃に、適当に取って適当に受けようと思っていた講義で奇跡的に再会した。(一方的な再会)

しかもその日は講義内で行われるディスカッションのグループが同じ日だった。

いつもより早く家を出て大学の講義室に向かった。

ワクワクした気持ちを抑えるのに必死すぎて、どの道を通って登校したのか未だに思い出せない。

到着した約5分後に君が教室に入ってきた。

驚いた。いや狼狽の方がしっくりくる。

図書館で一目惚れした頃と変わらない容姿と、”赤いニット”。

慌てふためく姿は君に見せたくなかったので、君が隣に座るや否や、生きてきた中で一番大きな深呼吸をした。

かわいい。

この日は口に出さなくてよかった。たぶん口に出していたら聞こえていた。

ラッキーアイテムってそういうことかよと、掃除をしない男子に注意する女子のように、神様の悪戯を叱りつつ、そして感謝をした。

単位がかかっているので講義は真面目に受けようと思った。

でもふとした瞬間に目に入ってくる赤い繊維が気になって集中はできなかった。

その日の講義は、予め課題として出されていたお題について、グループでディスカッションをするという内容だった。

ディスカッション中、君は情報量と発想がすごいと褒めてくれた。

そりゃあ君に嫌な顔されないように丸一日使って考えましたから。

なんてことは言えなかった。

結局君はそれぞれの意見をちょうど良くまとめて、自ら進んで発表してくれた。

真面目で、聞き上手で、褒め上手で、話し上手。

これ以上の理想の人は一生会えないなと感じた。

「1ヶ月もすればクリスマスだね。」

講義が終わるまで時間があったので雑談をしていると、何かの話がきっかけでこの言葉を発してしまった。

講義終了のチャイムと同時に君は、悲しくなるから何も聞かないでと言い、次の講義へ向かって行った。

君が席を立つと同時に、空中に舞った一本の赤い繊維が、空を駆けるサンタのように見えた。



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