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図書館と君へ

人生で一度だけ一目惚れをした。

大学の図書館で書物の整理をしていた君は、外から差し込んでいた太陽光と相まって特別輝いているように見えた。

小柄で、落ち着いた色のニットの上に、特に意味のなさない図書館特有のエプロン。そしてスキニー。

かわいい。

この言葉を意図もせずに口に出してしまったのは初めてのことだった。

君に聞こえていなかったことが唯一の救いである。

例えるならば、麦本三歩を実写化したような。

真面目なんだけど、おっちょこちょい。

たぶんそんな感じ。

それからは就活と偽って、毎日図書館に通った。

本を読むふりをしたり、パソコンをかまっているふりをして君を探した。

結局その日以降は図書館で一度も見かけていない。



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