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陰謀論を真に受けていた私が冷静になって種苗法改正について考えたこと①

ここ数ヶ月ホットな種苗法改正について。恥ずかしいけど私はよく調べもせずに陰謀論的なものを長いこと真に受けていた。4月くらいから農業に関わるいろんな方が発信してくださったのが目に入ったことで、ようやく、自分の認識がすごく狭くて偏りのあったことに気づいた(みなさんありがとうございます、、、)。この文章は、一次情報にもあたらず感情で流されてしまって思考停止だった自分を記録しておこうと思ってこの2ヶ月くらいうんうん考えてたことを書いているけど、私に気づきをくれた農家さんたちみたいにこれが誰かにとっての気づきになればいいな、とも思っている。
※まだまだ勉強中なので、何か間違っているところがあったら教えてください。

種苗法改正について知ったきっかけ

私が初めて種苗法のことを知ったのが2018年の11月。しあわせの経済フォーラムというローカリゼーションに関するイベントで、国際ジャーナリストの堤未果さんからグローバル企業に日本が食われていくという文脈で種子法廃止の話と、その後元農林水産大臣の山田正彦さんから種苗法改正についてもお話があった(このイベントでの話ではないけれど一番最後にリンクまとめています)。農家さんが自家採種できなくなって自分たちの食がグローバル企業によって脅かされるかもと聞いて、なにそれこわい、やばいじゃんとなっていた。種をまもろう、農家さんをまもろう、自分たちの食をまもろうというのを、そっか、まもらなきゃなのかと思いながら聞いていた。当時の私は今ほど農業の生産現場には興味がなくて、それきりで、SNSで同じような話をたまに見かけるくらいだった。農業に興味をもってからも、実際のところどうなのかいつかはちゃんと勉強したい分野という位置づけのままだった。

今年の4月になってから、SNSで農業に関わる方たちが次々と種苗法改正について誤解があることや賛成だと発信しているのを目にして、びっくりした。もともと生産よりも消費側に興味があったこともあってか、農家さんをまもるために反対しようという消費者からの発信ばかりを目にしていていて、初めて賛成する意見を見たし、当事者となる農業に関わる人たちの意見を見た。あれ、私の今まで聞いていた話とちがう、どういうこと??しかもどっちも農家さんをまもるって話をしていて、なにこれ全然わかんないんだけど、、、となっていた。

農業に関わる方々がしきりに仰っていたのはまずは法律案を、国の資料を見て、ということ。たしかに私、一次情報見たことなかったし、何がどんな背景でどう改正されるのか、そもそも種苗法が何を定めた法律なのかも、本当になにも知らなかった。。。


自分で調べて整理したこと

とりあえず一次情報にあたらなきゃということで、農水省の資料を見た。

種苗法の一部を改正する法律案について

よくある考え方だけど、私はいつも①現状、②理想、③現状と理想のギャップから生まれる課題、④課題の解決策、のフレームワークで整理するので、今回もそうしてみた。(これは私が私の考えやすいように整理したものだから、もしまだ法律案自体を見たことがなかったらそっちを先に見てほしい。)

①現状:日本で開発された優良品種が海外へ流出していて、本来日本の農家さんが生産・輸出して得るはずの利益が失われている。
②理想:然るべき人が利益を得て、持続的な生産活動が行われる。
③課題:日本から持ち出すことが違法でなく、海外で品種登録する以外に海外流出を防止はできない。
④解決策:品種登録の際に、育成者権者が輸出先国、栽培地域を指定できるようにする。(今までは認められていた)登録品種の自家増殖については、育成者権者の許諾制にすることで、増殖を行う者を把握する。

海外流出のことも全然知らなかった。農水省の資料をいろいろ見ていると、海外流出の問題は近年始まったことでもなく、平成16年の資料でも問題視されていた。こんなに前から品種保護について検討会が重ねられていたのも全く知らなかった(逆にここまでなんでこんな時間かかってしまっているんだろうとさえ思ってしまった)。

植物新品種の保護に関する研究会(平成16年)
植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会(平成18年)
優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会(平成31年〜)

こうやってみていくと改正の必要性はすごく理解した。


議論になっている自家増殖について

議論や誤解が生まれているのは④解決策の自家増殖の部分らしい。私もそこは誤解してて、全部禁止になっちゃう(→種代が負担になって農家さんが困っちゃうという)のだと思っていた、、、でも上であげた資料にもあるように、登録品種のみの話。あと、上にあげた検討会での農家さんからへのヒアリングとか、
江藤大臣の会見を見る限り、種代がめっちゃ負担になるわけでもなさそう?自家増殖については農業者の自家増殖検討会配付資料(平成27年〜)が分かりやすかった。今までどんな議論がなされてきたのか、流れがよくわかる。

仮に種代が負担になってしまうとしても、誰かが何年もかけて作った品種に対して、お金を払わなくて良いということではないよなとも思う。農業以外の話だとちょっとあり得ない話だし(好きなアーティストのCD買ってきて自分で複製してCD作って売っていいってことだもんね…?)。農業の分野でOKだったのは、農業がもともと産業としては存在していなくて、日々の暮らしや生きることそのものだったからなのかなと思う。種は地域で代々受け継いでいくもので、食べものという誰にとってもなくてはならないものの源として、誰でも使う権利のあるものだった。でも産業としての農業が生まれて、その中で研究開発した種が生まれて、その人の権利というのが生まれているのが今の時代なのかな。

大学の授業でチューリップの品種開発の話を聞いたことがあるけど、一つの品種を作るのに20年近くかかるそう。富山県のHPにもそんな話があった。20年て私が4歳の時から今までってことを考えると本当に途方もない。。。検討会の資料で新品種の出願数が減少していて、日本の農業の競争力への影響が懸念されているとあったけど、途方もない時間が(お金も)かかるのにちゃんとお金回収できなかったら、そりゃ品種開発したい人少なくなっちゃうよなって思う。

良いものを作った人に対しては、それ相応の対価が支払われないと、持続的なものではなくなってしまう。だから、品種の開発した人にちゃんとお金が戻る仕組みであって欲しいなと思う。一方で、食料を生産するという産業としての農業だけじゃなくて、環境を維持したり癒しを得たり日々の営みとしての業ではない「農」も存在していて、どっちもものすごく大事だと思っている。だからこそ、自家採種は登録品種のみ許諾制で、一般品種(在来種や品種登録されたことがない品種、品種登録期間が切れた品種)は制限されず、家庭菜園とかも自由だっていう制度にしようとしているのかなと思った。

そもそも品種開発は必要なのかみたいな意見も見たけれど、私は必要なのかなと思う。特に気候変動への適応策の1つとしてこれからますます大事だろうと思う。小豆島のオリーブ農家さんで収穫体験した時にいろいろお話を聞いたのだけど、6.7年前まではほとんど見られなかった炭疽病という病気が、気候変動による気温上昇と降水量増加で、多く見られるようになったそう。炭疽病になる前に収穫したり、木々の間隔を広くして風通しを良くしたりして、やりくりしてるけど、若いうちに収穫すると搾油率は低くなるし、間隔を広げると全体の収量は少なくなっちゃう。炭疽病に強い品種(ミッション→ルッカ)にだんだん植え替えて適応しているそう。今までと異なる気候やそこから発生する新しい病害虫とかに適応する選択肢として、いろんな性質を持った品種が開発されることは有効だと思う。

気候変動への適応とか以外にも、いろんな品種があることって、私は食を豊かにする楽しいものでもあると思う。私は八百屋さんでアルバイトしてはじめてそれに気づいた。そもそも品種を認識したことがあまりなくて、みかんはみかんとしか思っていなかった。でも、天草、みはや、麗紅、あすみ、はれひめ、ゆめほっぺ、、、一体何種類食べたのかわからないけど、どれも味とか匂いとかむきやすさとがそれぞれ違って、本当に楽しくて。ちなみに私はみはやが結構好きだった。農研機構が開発した品種で、鮮やかな色と強い芳香が特徴で(むいた後に手からめっちゃ匂いする!)、めちゃ美味しい。


最後に

買い物は投票だというのを私は大事にしているけれど、社会にとって良いものをつくった人に対して、適切なお金が支払われる社会であってほしいなと思うし、この法改正はそんな社会を目指しているのかなと思っている。

私が陰謀論めいたものを真に受けていた理由の1つは、国への信頼のなさがあった。今も100%信頼しているわけでは全くないけど、一つ言えることは、農水省には、日本の農業を社会を良くしたいって熱い思いを持って日々仕事をされている方がたくさんいるということ。農水省の方と知り合うまで、国のために働いている人がどんな人でどんなお仕事しているのかとか全く知らなくかったけど、全然お堅くなくて普通で。普通って言ったら変かもだけど、誰かのお母さんやお父さんだったり、いろいろもがきながらも熱い思いを持って、前に前に進んでいたり。(ばずまふっていう農水省のyoutubeチャンネル見ると、そのへんいろいろ感じられるかも?農業への愛に溢れてて個人的にはとっても好き。笑)

賛成派も反対派も上で書いた②の理想の部分については同じ思いを持っている気がして(そうじゃなかったらそもそもそこの議論からだけど)、だったら課題とその解決策はこれでいいのって部分について、お互いを叩き合うんじゃなくて、日本の農業をより良くしていくための建設的な議論がなされればいいなー。私もまだまだ勉強中なので、何か間違いだったり、これはこうなんじゃない?みたいなのあればぜひ教えてください。

※6/9追記
新しく聞いた話や勉強したことを踏まえて、陰謀論を真に受けていた私が冷静になって考えたこと②も書きました。よかったらこちらもぜひ。

参考

上にあげたものは農水省の資料が主だったけど、農家さん等の意見で参考にしたものをかき集めてみた。ん、ちょっとそれは違うのではという情報も混ざっていたりするけど。。。賛成反対については部分的には異なっていたりグラデーションがあったりするけれども、2つに分類しています。他にも検索すればいくらでも出てくるので、いろんな意見みながら私もあれこれ考える。

賛成
・久松農園 久松さん
https://www.facebook.com/tatsuo.hisamatsu2/posts/3227830250562147
・グリーンリーフ/野菜くらぶ 澤浦さん
https://www.facebook.com/shoji.sawaura/posts/1876827895782051
・林ぶどう研究所 林さん
https://note.com/grapelabp
・農畜産物流通コンサルタント/農と食のジャーナリスト 山本さん
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2020/05/30062.html
・トゥリーアンドノーフ 徳本さん
https://treeandnorf.com/it-is-very-difficult-thinking-about-plant-variety-protection-and-seed-act/
・農業ジャーナリスト 浅川さん
https://twitter.com/yoshiasakawa

反対
・元農林水産大臣 山田さん
https://www.facebook.com/masahiko.yamada.125/posts/2562465257213297
・国際ジャーナリスト 堤さん
https://www.youtube.com/watch?v=rCRaqnzfX5w
・農家ジャーナリスト 松平さん
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsudairanaoya/20200504-00176779/
・東京大学教授 鈴木さん
https://www.jacom.or.jp/column/2020/05/200507-44177.php?fbclid=IwAR01nizK-4L8QHlyLhnGet42X5OMi85IFXdtDmlig4HVYGrfuAeHboCMEnk
・元オルター・トレード・ジャパン政策室室長 印鑰さん
http://blog.rederio.jp/topics/seeds


議論・解説
・農Tube委員会 松本さん
https://www.youtube.com/watch?v=Y_bTu0e_bUI&t=717s
・Abeam Prime
https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p1921

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東京大学農学生命科学研究科農学国際専攻修士1年の岸本華果さん。「農業を通して消費スタイルや暮らしを良いものにしたい」と考えつづける岸本さんがいろいろとnoteに書いています。

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