小説2
このまま流されていく人生から脱却しよう。
そう決意してからも、外見は全く変わらない日々だった。
いざ今いる場所からもっと自分が自分の人生を楽しめるような方向へ進もうとしても、自分がどんな風に生きて行けたらしあわせなのかが思いつかないのだ。
「これがいわゆる<自分探し>ってこと?」
自分は実際ここにいるのに、その自分を探すなんて変だなあと思っていたこともあったのに、結局自分もそんな迷路にハマりかけている。
大金持ちになりたいとか、仕事を辞めてのんびりしたいとか、誰でも思いつくようなことしか出てこない自分が嫌になる。
その先の楽しい生活が全く思い浮かばなくて、ただお金と時間を消費することしか思いつかない。
しばらくグルグルと考えていたけれど、かえって迷いが深くなるだけのような気がしたので、ひとまず<自分が素敵だなぁと思える人>を探してみることにした。
今はSNSがあるから、全く知らない人の個人の生活や活動を覗き見ることができる。
ひとまず実現できそうかどうかは別として、いいなぁと思える人の投稿を追いかけてみることにした。
「この人は何で生計立てているんだろう・・・」って思うような優雅な生活の人がいたり、小さな工夫を重ねて素敵に暮らしている人もいる。
まず最初に仕事を辞めてしまうことなど、大きく生活に影響が出ることは避けようと思った。
なんとなくだけど、片付けと同じで人生を変えていくとしても、手をつけやすい部分ってある。
安定した収入を手放すのはいつでもできるから、そんなに嫌ではないなら仕事はとりあえずこのままいってみよう。
何人かのInstagram、blog、YouTubeなどをフォローして、毎日毎日追いかける。
どんなところが好きなのか、自分だったらどうするか。
まず最初に気になったのは、自分の部屋のゴチャゴチャ具合。
もちろん動画や写真を撮影するときには、ゴチャつきは隠しているだろう。
それにしても自分の部屋はモノが多く、色々な種類のものが混在し、余白が少ない。
過去のモノで溢れて、新しいものを迎えることも、空間を楽しむこともできていないことに気付いた。
だから<断捨離>って流行っているんだ。
人生リセットのひとつ目は部屋をスッキリさせることに決定。
ずっと大事にしていたマンガ本も小説も、飾り棚に入る分だけに厳選した。
小説は読み終わったらその役目のほとんどは終わっているはず。
今までの自分が選んだもので一杯の部屋では、新しいものは取り入れられないと腹を括って、どんどん売ったり捨てたりした。
大学時代のノートやレジュメ。
学生の時に着ていた服。
大量の中古で買ったマンガ本や雑誌。
使えなくなった訳でもなく、思い出がないわけではないものたちを処分するのは最初は気が引けたけど、慣れてきたら決断も早くなってきた。
今までありがとう。そしてさようなら。
過去を否定している訳ではない。
ただどこかで区切りをつけるのを放棄していた自分の過去と向き合う作業はきっと今の自分に必要なんだと思う。
処分しても処分してもそれほどスッキリしないぐらいのものが部屋にあった。
InstagramやYouTubeで素敵に暮らしている人を真似て、とりあえず最低限のものだけ残してスッキリした空間をつくろう。
間に合わせのカラーボックスやラックがいくつもあって、それをどかすと空間が広がった。
持っていることは豊かなことのように思えるけど、持っていることで生活を窮屈にしてしまうのだ。
片付けている間は、将来への不安を思い悩むことも減った。
だって将来は今の自分の生活の先につながるものだからね。
最初は引越しをしてそれを機に人生をやり直そうなんて思っていたけど、同じ部屋にいたって生活空間は変えられる。
何も置いてなくて壁が見えるようになった場所。
食事を摂るテーブルの上。
タンスの上の小さなスパース。
何もおいていないから、例えマグカップの玄米茶だってちょっといい感じの写真が撮れるようになった。
おにぎりとインスタント味噌汁と冷奴でも、シンプルなトレイに載せたらいい感じの休日ランチだ。
もともと素敵な生活の素は自分の生活の中にもあった。
それを自分で見つけようともしないで、溜まっていく過去のものたちを見て見ぬふりしていた。
生活の多くは自分で決めた選択肢の積み重ね
それを認めたくなかったのかもしれない。
まだまだ片付けは途中だ。
空いたスペースに今の自分が喜ぶものを買ってもいいし、空けておいてもいい。
それを決めるのは自分。
SNSの中でキラキラしている人に自分がなれなくても、自分が楽しめる毎日をまわしていけたらそれでいい。
インフルエンサーに憧れる気持ちはあるけど、バズるのが目標じゃないから。
インフルエンサーが見せてくれる素敵な世界を参考にアイディアもらって、自分は自分の素敵空間を作れたら上出来。
気を抜くとキラキラな存在でなない自分を否定してしまいそうになる時もあるけど、私は私の世界の演出責任者で運営担当者。
まだ私の人生を楽しむ旅は始まったばかりだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?