見出し画像

映画『裸足で鳴らして見せろ』


とんでもなく素敵な映画に出会ってしまった。2022年の夏。

この日は大学の後輩と渋谷で遅めのランチを済ませた後、
かこさとし展を観に行く予定だった。

かこさとし展のチケットはオンラインで購入済みだったので会場に向かうと
時間指定のチケットが必要なことが分かった。

時間指定のチケットがなくても入れる時間は17時半以降。
後輩は用事があるからと、
急遽、後輩と再集合することになった。

後輩との再集合までの時間、どうやって過ごそうか。
ふと、映画を観たくなり渋谷の映画館で16時台の映画を探してた。

ふと目に止まったのがこの、『裸足で鳴らしてみせろ』だった。
ユーロスペースに訪れたのも、この日が初めてだった。

監督も、主演の二人(直巳役:佐々木詩音/槙役:諏訪珠理)も名前を聞いたことがなくて、
観終わって、何度も検索をかけた。

光を音で表現する、という思考が好きだ。
絶対に伝わらないはずなのに、暖かさ、色、景色が
槙の声から伝わる。
アンテロープキャニオンの光、美鳥さんには伝わったのかな。

他にも音については面白い使い方をしていた。
知識が何もないからこれといったことは言えないけれど、
なんとなく、音の使い方に遊び心があって、その上できちんと効果を得ている。
監督の伝えたい内容、芝居、脚本、セリフ、カメラワーク、構成、、、
その他、全ての効果をきちんと音が繋げている感じ。

直巳は、あそこまでしなきゃいけなかったんだろう。
直巳にとっては、それだけ大事なことだったんだろう。
槙も美鳥さんも、直巳にとって今までの人生を通しても
もったいないくらいの存在で、与えてくれたからきちんと返そうとした。
ただ、それだけがあそこまで彼を動かしてしまった。

ラストシーンの切なさは、二人にしか分からないことで、
より切なさを増した表現に感じられた。

映画を観終わって、槙の気持ちも、直巳の気持ちも、
本人でないと分からないけど、分かりたいと思ってしまった。

公式サイトにはLGBTという解釈をしている人の言葉が載っていたけど、
主人公の二人(直巳と槙)の関係性は、そんな言葉に
括れないんじゃないかと思って、ほんのちょっとだけ気に食わなかった。

あぁ、槙は直巳の癖が自分に移っていることに気づいてないんだろうな。
あの誰にでも起こりうる普通のことが、あの歪んだ二人に起きていることが、
とてつもなく美しいと思った。

この映画については、他にも書きたいことがたくさんあって書ききれない。

映画館で観てほしい、この感動を劇場で受け取ってほしい。
いろんな人にこの作品を観てほしい。いろんな感情になってほしい。

ただの、友達との再集合までの時間潰しだったはずなのに、
私の人生においてはかけがえのない128分だった。

はる。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?