新シーズン開幕。快勝も不安要素がちらほら?【愛媛FC戦レビュー】

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試合情報

J2リーグ第1節 東京ヴェルディvs愛媛FC @味の素スタジアム 15:00KO
前半2-0/後半1-0 合計3-0
〈得点者〉
【東京ヴェルディ】
(37分、45分+3分)小池
(66分)山本
【愛媛FC】
なし
〈交代〉
【東京ヴェルディ】
(58分)端戸→松橋
(79分)佐藤(優)→橋本
(91分)小池→佐藤(凌)、福村→富澤、梶川→奈良輪
【愛媛FC】
(64分)山瀬→前田、前野→内田
(70分)藤本→吉田
(83分)田中→森田、小暮→西岡

いよいよ始まる新シーズン

なんやかんや騒がしかった昨シーズン末を経てついに開幕する2021シーズン。補強に関してはまず穴埋め優先で行われ、とにかく上積みの部分に期待がかかるシーズンとなった。そんな開幕戦の相手は愛媛FC。監督が川井監督から和泉監督に代わり、よりアグレッシブさを増したチームになっている。ただ攻撃面のことを考えると実力としては恐らく下位クラスになるのではと考えているので、ヴェルディが今年何をやりたいのかを体現できる良い対戦相手であることは予測できる。そんな中3-0で快勝。橋本のプロデビューや阿野の初スタメンなどたくさんのニュースもあり良い開幕となったが、今シーズン悩まされそうな部分もあったので、そのあたりにも触れながら振り返っていきたい。

スターティングメンバー&基本フォーメーション

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新たな仕組み「偽CB」

これはオフシーズンからCBでプレーしていたと思われる加藤を中心とした可変システム。ボール保持時に3-2-5へと変化するのだが、加藤が理仁と横並びになるというもの。下のGIFを見ていただきたい。

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3バックは左右に順足。右は若狭、左は福村でボールの供給をスムーズにし、中央に理仁と加藤のセットで相手のファーストラインを越えた先で供給元になるというような形になる。またこの仕組みにはもう一つ利点がある。それは加藤が持ち味にしている「ボール奪取」の部分。いわゆるネガティブトランジションでの持ち味発揮にも大いに貢献できるということになる。昨シーズン北九州に在籍していたが、footballlabのボール奪取に関する指標ではリーグ10番目の非常に高い成績を残しているほど、ボール奪取に長けている選手でもある。この能力を生かすためにもこの偽CBの仕組みは非常に合理的で、最大限選手のポテンシャルを引き出すにはもってこいだろう。またこの試合では理仁の球際の強度がかなり目立っており、加藤との攻撃時2CHコンビは攻撃面だけでなく守備面でも支えていくことになると考えられる。実際1点目の起点になったのはこのネガティブトランジションの局面からだったので、肝になることは間違いない。
1つ補足しておきたい点としては加藤だけがCHの位置に入るわけではない。若狭も福村も入ってはいくので、あくまで加藤は選択肢の一つであることは強調しておく。
しかしこの仕組み自体はいいのだが、ボール保持に関しては少し不安な要素が前後半通して見られた。顕著だったのは右サイドになるが次のトピックとして触れていく。

ハイプレスに対しての解答はどうする?

課題になりそうだと感じたのは、おそらく昨シーズンにも課題になっていたであろうハイプレスに対しての解答の部分である。今シーズンも3-2-5でのビルドアップを基調としたサッカーになっていくとは思うが、意図的に相手を動かして前進しようという場面がなかなか見られなかった。特に右サイドのロストは顕著で前後半通してなかなか改善できない部分だったと考える。それが下のGIF。試合時間は5:23~。

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このように相手の誘導に従うような形でサイドに誘導され、前線とも距離感が悪く、受け手の選手の状態も悪くなかなか同サイドから前進することはできなかった。8:30~も同じようなシーン。
愛媛の守備はSHの選手を前に押し出してくるので、基本的にはその奥のスペースが狙いどころになる。下の図のような感じ。

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しかしこの試合ではそこに入ってくるタイミング、体の向きなど選手の状態も不安定で各選手ごとにかなり異なる状況が多く、昨年からハイプレスに苦しめられたチームにしては大丈夫?というポイントでもある。実はこれにより、前半はボールロストが多かった。というのも、このSH奥のスペースでのボールロストだけではなく、同サイドで攻略しきれないがゆえに逆サイドからの攻撃を試みることになるものの、愛媛のハイプレスにより中央を経由したサイドチェンジができず、ロングボールからロストしていた。それが下のようなパターン。

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このように同サイドへのパスコースがないうえ、同サイドの選手は受けに下りて来てしまうので裏は狙えず、逆サイドの選択肢しかなくなるという順番になっている。
ではCBの馬場の時点でプレスがハマるとどうなるのか。観戦していた方はこの試合の開始早々、馬場が縦パスをカットされたシーンを覚えている方もいると思う。それも同じくプレス回避のルートを作れなかったことに起因していると考える。それが以下のような形。

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このようなシーンがこの試合では2度あった。この時点でハイプレスをどう攻略するかに悩んでいたように感じる。ハイプレスによって少しずつ下がる最終ラインと前線の距離が離れることで愛媛にとっては守備のしやすい状況が作られていた。これは愛媛が上手だった部分だろう。
では、逆に同サイドの選手が裏を狙うとどうなるのかを体現したのもこの試合。2点目がその形である。下の図を見ていただきたい。

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このように同サイドに対して裏抜けをチョイスすると一気に得点につながると考えられる。しかし、このパスを何人の選手が蹴れるのかという問題になる。この試合では優平のみ。何度もできるものでもなく、再現するには難度が高いため、もっとトライしやすい形のビルドアップ経路の追及は必要になるだろう。もちろんハイプレスに対しての裏抜けは必要ではあるが。

「ポケット」がキーワードの愛媛

愛媛の攻撃について。ボール保持時はDHが1枚下りる形での3-1-5-1のような形が基本になっている。そしてキーワードは「ポケット」。
なぜキーワードだと分かるのかついてはこの試合の39:15あたりで和泉監督からと思われる声が聞こえるのだがその際にポケット狙え!のような声をかけている。実際愛媛は執拗にヴェルディのSBの奥、またはポケットを狙いに来ていた。パターンとしては以下の図のような形。

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基本的にはこの2パターン。中央からの攻撃はなくこれらに傾倒しているとも言えるほど徹底していた。
1つ目は愛媛のボール保持時3バックのHVの選手から直接サイド奥を狙うパターンの2つ。
2つ目は高い位置を取ったSBから、インサイドに絞ったSHやFWが引き出した相手SBの裏へのランニングをするパターン。

キーワードは「ポケット」であるが、内側の選手が外に向かってランニングしボールを引き出すのが基本形となる。前半はそこから1度チャンスを作るも、裏に抜けても中に枚数が足りなかったり、同サイドでボール保持するもシュートまでつなげられなかったりと、裏に抜けてからの精度が非常に重要なため攻撃の難易度が高いという部分も見受けられた。正直厳しいなという印象が強く、もう少し内側も使えないと相手にとっては非常に守りやすいという印象がある。

まとめ

この試合は完勝も、次節山形戦に向けては疑問符がつくような試合になった。昨シーズンは山形に対策されコテンパンにやられている。ビルドアップに多少問題を抱えているようにも見えたので、心配な部分ではある。
それでもこの試合を支配していたように感じたのは、ネガティブトランジションの部分で即時奪回ができ、ショートカウンターなどで前進する回数が多かったからだと考えられる。後半に関しては両チームのペースダウンも相まって、少しボール保持は改善したものの上位相手にはそうはいかないだろう。
またフィニッシュに行けるときは素早くその局面を目指すという意識の高さもあり、昨年よりは素早く攻める意識は強いのではないかと筆者は考えている。これの答え合わせはもう数節見てみないと分からないが。
個人的には選手の入れ替えにより、まず昨年の出来に追いつくところからだと考えていたが、ネガティブトランジションのように上積みできた部分があったのは良かったと感じる部分である。次節が本当に試金石になると考えているので、そういった目線で見てみるといいかもしれない。

今節のレビューは少しボリューム少なめでしたがいかがだったでしょうか。久しぶりだったので出来はそんなに良くないかもしれませんが、何か参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

また次の記事でお会いしましょう!

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