ショートストーリー 革命
「ちょっと古いピアノだけど売れるだろう。」
この度、ボクは中古ピアノとして売りに出される事になった。ボクはこの前までピアノ教室のピアノだった。
ボクの後がまは新しい立派なピアノだったから仕方ないし、ピアノは調律が狂えばなかなか音を奏でられなくなると使えない。
「なあ、お宅も御払い箱かい?」
隣の目が眩む程のグランドピアノさんが声を掛けてきた。
「はい。まあ、色々諸事情ありまして、。」
グランドピアノさんはボクよりも0の数が一つ二つ三つも多い。
「お高いんですね。グランドピアノさんはどんな所で活躍されてたんですか?」
ボクの問いにグランドピアノさんは鼻高々に声高々に答えた。
「私はね。音楽ホールさ。オーケストラとかが演奏する場所。わかるかい?」
「ああ、プロのピアニストが演奏する場所?」
ボクのいたピアノ教室で学生達がよく言っていた。そこはプロの場所らしいし、憧れの場所なんだそうだ。
「そうだよ。色んなピアニストが弾いていた。」
「どんな曲がお気に入りだったんですか?」
グランドピアノさんは「うーん」と考えると
「ベートーベンもモーツァルトも良いけど、やっぱり私はショパンだね。」と答えた。
「ショパンか~。ボクの場合は学生さんが練習してましたよ。プロか、、すごいな。」
「プロでもね。ショパンの革命は奏で方が違うんだ。あの感覚はゾワゾワ、ワクワクするね。」
「また、弾いてくれれば良いけどボクは普通だしなかなか売れないですよ。」
「そうだね。私も半月ここにいるよ。だけど大丈夫さ。だって、見てごらん。」
グランドピアノさんはボクの前の古びた年季が入ったピアノを見て言う。
「あのピアノはもう値段も付けられない程のオンボロさ。それに比べれば私達は直に売れるさ。安心なさいな。」
「本当だ。値段が無い。」
見れば向かいのピアノには値段も無く埃さえたっていた。
そこへ一人の客がピアノを見てまわっている。
「さて、私の買い手かもしれないな。」
グランドピアノさんは自信満々だ。
その客は身なりも綺麗でしかも、店員の態度も丁寧だ。たぶん、プロのピアニストかな?
「こちらがグランドピアノでして、お客様にはこちらが宜しいかと。なんたってプロの方のピアノですから。」
「いや、あのピアノをください。」
客の指差す方には古びたピアノがある。
「あれは、売り物にはなりませんし調律しても直ぐに狂います。違うピアノになさるのが良いかと、。」店員はしどろもどろだ。
客は古びたピアノを空け音を確かめるかの様に演奏し始めた。聞き覚えがある曲。
これはショパンの革命だ。
古びたピアノは少し狂った音だか情熱的でいて上品だ。客がピアノを幸せに弾き終わる頃には店内は拍手喝采だ。
「やはり、これを買います。」
まさに奇跡では無くこれはショパンの革命だった。
ショートストーリー 革命 をお読み頂き有り難うございます。どなたかの目にとまれば幸いです。
お時間よろしければまた見てください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?