見出し画像

小説 これは私の夢のはなし

🐑#001「手紙泥棒」

「手紙泥棒がでたぞ。」
誰かがそう叫んでいる。
わたしは今夢の中にいる。
何故か図書館の本棚にぐるりと囲まれている。


「また夢でお会いしましたね。」と彼が言う。

彼はいつも夢に出てくる少しハスキーな声の人。
わたしは彼を夢の人と呼んでいる。

「今、手紙泥棒って?」とわたし
「此処で手紙を書くと取られてしまうんです。」と夢の人が言う。
「どうして取られてしまうのでしょうか?」と不思議そうなわたしに夢の人は笑顔で答える。
「さぁどうしてだろう。」
わたしは読みかけの本を閉じて何やら手紙を書き始めた。
「手紙を書くの?」夢の人はわたしの顔に頬を寄せて覗き込む。

夢の人は顔を赤くしているわたしを頬杖をして眺めている。

「手紙泥棒さんに書くんです。淋しいかなと思って。」わたしは照れながら答えて書いた。


                     手紙泥棒さんへ
あなたにこの手紙を差し上げます。
わたしもあなたと同じ淋しいことがあります。
でもナントカカントカ生きています。
だからあなたにこの手紙を…


と書きかけた瞬間。


突然ふわりと手紙が浮いた。
「えっ。どういう事。手紙どこ。」
動揺しているわたしの前を手紙は一瞬でぐるりと囲んでいた本棚に吸い込まれた。

そして次の瞬間、本棚が光はじめた。
赤、青、黄、緑、橙、紫、桃色、
チカチカと光って綺麗だ。
「どうなってるの?」わたしが言った途端に本棚から大量の手紙が吹き出してきた。
誰かが誰かに書いたラブレター。
誰かが誰かに書いた別れの手紙。
誰かが誰かに書いた思いやりの詰まった手紙。
まるで紙吹雪のようだ。

「きみの手紙が欲しかったのかもしれないね。」
夢の人が言った。
「あのわたし、あなたの、あなたの、」
わたしが何か話をしようとした瞬間目が覚めた。 

起き上がると足元で愛犬がすやすや寝ている。
今見た夢を思い出した。
忘れるのが凄く勿体ない気がしたからだ。
でも肝心なあの人の顔は。

「あの人の顔…。思い出せないなぁ。」


わたしは夢の人の顔も名前も知らない。


これはわたしの夢のはなし。


✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️✉️

読んで頂けた方誠に誠にありがとうございます。
大変嬉しいです。
不慣れな為、乱筆乱文失礼を致しました。
ではまた夢のなかで
どなたかの目にとまりますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?