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赤文字系雑誌「JJ」の休刊を分析

※先に言っておきますが、最後の方に雑誌制作、出版業界のかなりリアルなお金の出入りを計算してます。(数字は予測値)

「JJ」休刊の衝撃!

つい先日衝撃のニュースが飛び込んできました。「JJ」休刊。4年前に「AneCan」が休刊になったときもそこそこ衝撃でしたが、出版業界で働いているから衝撃だっただけで、その他大勢の皆さんにとっては「はいはい、また雑誌の休刊ね」ってなぐらいかもしれませんが。でも、自分が出版社で働いているって事を差し引いても衝撃的なニュースだったんです。ちなみに厳密にいうと休刊ではなく定期刊行をやめ今後は企画が雑誌に見合ったときには雑誌という形で発行する不定期刊とするとのことで、JJのwebやSNSなどは存続させる、つまりブランドは残すとのこと。まぁ出版業界では事実上の休刊です。

余談ですが、今後2度と出さないという雑誌でも、「廃刊」ではなく「休刊」という言葉を出版業界では使います。雑誌を販売するのに「雑誌コード」なるものが必要なんですが、これがなかなか取得しづらくお金もかかる為、雑誌コードを残すこと自体が出版社には資産になります。なので「廃刊」には絶対にしません。

赤文字系雑誌の隆盛

「JJ」を含めた、「CanCam」「VIVI」「Ray」の4誌を赤文字系雑誌と呼ぶのは今となっては知っている人も知らない人もいるかもしれませんが(表紙の文字が赤かったから)、いまから約15年前に赤文字系雑誌は栄華を極めてました。雑誌のターゲットが20台前半の女性なんですが、そのころちょうど自分も20代前半で、大学の周りの友達(女性)はみんな赤文字系に引っ張られてました。つまり自分を含めたギリ昭和世代にとっては思い入れのある青春ど真ん中雑誌が赤文字系雑誌。また4誌全部が毎月23日発売。23日に女子大生はそれぞれ好きな赤文字系雑誌を購入するためにコンビニや本屋に足を向けていたもの。特に赤文字系雑誌の中でも「CanCam」の人気が頭一つ抜けていて、山田優、蛯原友里、押切もえの3人を専属モデルにして若者のハートをガッチリ掴んでました。

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当時の赤文字系雑誌が好調だったのは本の売り上げがよかったのはもちろん、各誌とも核となるモデルはいるものの、当時は「読者モデル」を多用しモデルコストをかなり浮かせて雑誌を作っていた。また、当時雑誌の勢いに便乗するがごとく、広告もものすごい量入っていた。となると出版社は大儲けで、雑誌を売る為のプロモーションにお金をかけるようになる。例えばテレビでCMをうったりとか。こうして出来上がっていったプラスのスパイラルでどんどん伸びていく赤文字系雑誌。雑誌作りのルールで「広告は本全体のページ数の1/3以下でないといけない」というルールが実はありまして、広告の量が増えると必然的に雑誌全体のページ数が増えていき、結果的にかなり分厚い雑誌(300~500ページ)になるんですが、それが700円前後で買えるというお得感もあったと思います。

そんな栄華を極めた赤文字系雑誌の中の「JJ」がなぜ2020年に休刊という道を歩んでしまったのか。一応模範解答を書いておくと、時代は変わって、情報入手の手段が「雑誌」から「インターネット」、そして「SNS」へと変化していき、以前に比べて雑誌が売れなくなり広告も入らなくなっていったというのが思慮の浅い自称研究家とかが発表する見解であり模範解答。←面白くないよね。でもそれって「JJ」以外の雑誌にも当てはまるし、もっと雑誌を色々見ていると、星の数ほどある雑誌の中には、「JJ」より全然売れてないし全然広告も入ってないけど、すごく元気に毎月発売されてる雑誌がたくさんあります。そんな雑誌達からしたらいくら売れなくなったとはいえ「JJ」なんて羨ましいぐらいの立ち位置ですよ。

では、、、なぜ。

「JJ」休刊の理由(個人的な想像を含めた見解です)

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ここからは個人的な見解で、事実とは異なる部分も多数あると思いますが、「JJ」が休刊に至ってしまった理由を想像していきます。

ちなみに今時点での「JJ」ですが、発行部数12万部、おそらく毎号数千万、少なくとも1000万円を広告が下回ることはないとは思います。雑誌全体の中でも非常に成績優秀な部類の雑誌であることをご理解いただきたい。

①そもそもコストのかかるファッション誌の制作現場

②「読者モデル」需要→「インフルエンサー」需要へ

③「JJ」ブランドが邪魔する非効率的消費

①のコストに関して、ファッション誌は制作にホントにコストがかかるんです。モデル、ライター、スタイリスト、ヘアメイク、カメラマン、スタジオそれぞれお金がかかるのはもちろん、ファッション誌の場合それぞれに「一流」が求められます。他の雑誌はあの手この手でこの辺のコストをうまく削ってやりくりしているのですが、ファッション誌の場合、雑誌のブランドがかかってるんでここは妥協できないポイント。本自体の売れが減り広告収入も下がっていく中、削ることが出来ない痛い出費。編集スタッフとかにコスト削減のツケが色々回ってたんじゃないですかね。お察しします。

そして②の「読者モデル」から「インフルエンサー」へという部分ですが、これは①にも関わってくるんですが、とりあえずこの令和の時代に「読者モデル」の需要がありません。需要があるのはテレビに出てるような人気タレントや女優・モデル、坂道系アイドル、そしてインスタグラマーやYouTuber(フォロワー10万を超えるレベル)。出版社におけるインフルエンサーの需要に関しては今度別の機会にじっくりお話しします。つまり以前は人気があるのにコストがかからなかった読者モデルが今では通用せず、拡散力はあるが残念ながら色んな部分でコストもかかる方々を使わざるを得ないという状況。人気モデルやタレントに名前も知らないスタイリストでスタイリングして大した実績のないカメラマンで、その辺の道端で撮影...って訳にはやっぱいかないでしょ。読者モデルなら表参道でテキトーに写真撮っておけばよかったんです(ちょっと言い過ぎかな)。

そして最後の③ですが、これは日本の出版業界が抱える根深い闇ともいえるんですが、「JJ」ぐらいブランド力があり、人気モデルやアイドルなどを表紙にしたり中面で登場していると、書店さん、つまり本屋さんや書店に本を卸す「取り次ぎ」と言われる会社から「この本は売れる!」という期待値が上がります。その結果が先に記した12万部という発行部数につながります。しかし実際その12万部のうち人の手に渡るのは恐らく多くて6割の7万部ぐらい。少ないと5割の6万部、4割の5万部なんてことも。これは「JJ」が人気がないんじゃなくて、日本の出版業界のシステムなんです。実際に売れるであろう部数より多く印刷させられるシステム。多くの出版社がこのシステムに苦労してます。12万部の雑誌を印刷するのにかかるコストって恐らく1000万とか1500万を超えてくるんじゃないかな。でも多く見積もって6割の7万部が売れたとしても雑誌の定価が700円だと出版社の利益は大体1冊450~500円ぐらいなので3000万円ぐらいの収入。印刷コストと差し引くと1500万~2000万ぐらい。そこから①で書いた多大なる出費と編集スタッフや関わる人の人件費などなどを色々考えていくと、、、んんーーーー、といった感じになっちゃいますね。

最後にもう一度言っておきますが、完全に僕の推論です。事実ではありませんし、裏取りなども一切していません。出てくる数字も僕が暫定で定めたものです。なんとなくそんなこともあるのかなぁぐらいに楽しんで頂ければ幸いです。


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