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三丘庵山荘(プロローグ)

※ タイトルに誤りがありましたので、訂正版です。写真は「千年水」です。

鮎の友釣り発祥の地、兵庫県宍粟市を貫く清流揖保川。その源流の溝谷集落に三丘庵山荘はあります。ここは人の住む家が三軒にまで減り、空き家となった古民家が目立つ限界集落。最盛期は11戸が軒を並べ、小学校の分校もあったそうですが・・・この集落の外れからは、広葉樹を中心とする自然林が広がる国有林で、猪、鹿、狸、狐などが棲む野生動物の天国です。(昔は熊も沢山いたそうですが)まさに「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は寂しき」の世界・・・秋になると静寂の中に遠くでケーン、ケーンと鳴く鹿の声だけが響きまず。今も、集落内に罠が仕掛けられ、年に十頭を超える猪が捕獲されています。稀に村中の道で狐や狸に遭遇することもあります。

溝谷は、揖保川の支流公文川のさらに支流の最深部にあたり、細い渓谷を抜けた開けた場所に位置しますが、地形が南北を向いた小さな扇状盆地となっているため、比較的風通しと日当たりが良く、夏は集落を貫く渓流がクーラーの役目を果たし、エアコン無しでも快適に過ごせまず。標高が500m近くあるので、姫路に較べると気温が5℃は低いでしょうか。逆に冬は寒く数回積雪があります。平成29年には積雪が170cmに達したそうですが、平成30年は最大50cmほど、この冬はまだ根雪になるほどの降雪はありません。北側に1,100m級の三久安山が聳えているため、よほどの豪雪シーズンでも無い限りこの谷が雪で埋もれることは無いようです。また車の通行に支障をきたすような積雪があった場合には、朝から市の除雪車が出動してくれます。

水道は谷の上流に簡易浄水場があり、この集落を起点としてずっと下の集落まで配水されています。炊事用コンロはLPGですが、給湯にはコストの安い灯油ボイラーを使用しています。暖房には、薪ストーブ、石油温風ヒーター、石油ストーブ、セラミックヒーター、電気コタツ、電気カーペットなどを適宜使い分けています。薪ストーブは誰もが憧れる暖房アイテムですが、結構燃費が悪くコスト高です。ただ、揺らめく炎を眺める癒し効果と、体の芯から温まる遠赤外線効果は、他の暖房器具では味わえないものです。

残念ながら携帯電話は圏外ですが、光ケーブルによる固定電話とインターネット回線が通じているので、通信環境については全く不自由はありません。私はTVを殆ど観ないので、ケーブルTVは契約していません。YouTubeやニュースアプリがあるので別段不自由は感じていません。嬉しいことに、クロネコヤマト、佐川急便、郵パックは普通に届きますので、通販で困ることもありません。多分、イケハヤさんやMarksさんも同様な環境で田舎暮らしを楽しんでおられることと思います。

この古民家は元々、姫路に住む牧師さんが長期契約で借受け、平成29年まで国際ボランティアの拠点として約20年間利用していました。「自然楽舎」と名付け、主にアジアを中心として若い研修生を集め、合宿形式で農業指導者の育成をしていたようです。多い時は20 〜30人もの若者が暮していたようで、集落の人との交流も活発だったようです。その牧師さんが80歳で亡くなり、半年ほど空家になって宍粟市の空家バンクに登録されていたところを私がたまたま見つけたのでした。

私は昆虫採集に熱中していた小学生の頃から山歩きを覚え、母方の叔父が後のモンベル創業者になったほどの山好きということもあって、一緒に大阪近辺の山歩きを楽しんだり、高校時代には一緒に北アルプスを上高地から黒四ダムまで縦走したりしていました。プロの登山家を夢見ていた叔父は高校を出てすぐ社会人となり、紆余曲折を経てアウトドア用品業界における一大ブランドの立上げに成功します。一方私は、大学卒業後平凡な技術者人生を歩み、4回転職して現在に至っています。勿論大学時代や社会人になってからも山登りやキャンピングを愛し、ロッククライミングや雪山も経験しましたが、あくまでも趣味の範囲でした。

若い頃は、信州に山小屋を持ちたいという夢がありました。妻子を抱え、関西に家と勤め先を持つ身には見果てぬ夢でしたが・・・ それでも休みになると、妻子を連れて上高地、平湯、軽井沢、ひるがの高原、しらびそ高原、大仙、秋吉台等々、色んな処へキャンプに行きました。時間とお金が無い時は、手近な兵庫県内のキャンプ場や宿泊施設にも随分通いました。時々一人で別荘地や田舎暮らし物件を見て歩くこともやっていました。しかし、団塊の世代が早期退職を始める15~20年ほど前は、田舎の古家といえども高かった。ちよっと魅力的に感じた物件は安くて1,000万円、良い物件は1,500万円以上しました。まだまだ自宅のローンが残る身には、とても手が出せない価格でした。

月日は流れ、気の早い中高年が「終活」に励み、自宅を売って有料老人ホームに入ったり、地方都市の一戸建てから都会のマンションに移ったりし始めているため、空家がどんどん増えてます。一方、デフレが続いて20年・・・大都会の真ん中でさえ空家が目立ち、過疎化が進む地方の町や村は不動産が大暴落しています。まして古いリゾートマンションなど、少子高齢化で大きな需給ギャップが発生し、タダ同然。しかし、お買い得と思ったら管理費や積立金がバカ高いので手を出す人はほとんどいません。

私の山荘も例に漏れず、家賃が何と20年前と同じ2万円/月! 買取ったとしても大した金額ではありませんが、こちらも古希を過ぎた身・・・古民家の相続を喜ぶ者もおらず、身軽な方が良いので、とりあえず10年契約で貸して頂くことにしました。家の状態ですが、先住者の牧師さんが20年かけてコツコツとリフォームされていたので、一応二ヶ所のトイレはウオシュレット、和室から洋間化された部屋が3部屋、古いですが台所も一応システムキッチンです。また、鋳鉄製の薪ストーブのほか、大きなダイニングテーブルセット、大きな食器棚、大型冷蔵庫、応接セット等を先住者からそのまま引継ぎました。慌てて補修すべき箇所も無いので、少しづつマイペースで自分好みにリフォームを進めたいと思っています。

気になる光熱費ですが、電気、ガス、水道で約1万円ぐらいでしょうか。薪は友人からのプレゼントなどがあり、今のところタダで調達できています。あとインターネットなどの通信費として約5,000円弱かかっています。年金以外に月に5~10万円程度稼ぐことが出来れば、山荘を維持できる計算になりますので、何とか頑張って維持して行きたいと思っています。

山荘から車で5分ほど下った所に名水「千年水」が渾々と湧いています。平安時代から利用されて来た由緒ある湧水で、雑菌ゼロ、塩素分ゼロ。常温でも長期保存がきき、安心して生で飲めて大変美味しいことから、大きなポリタンクやペットボトルを山積みした車が、神戸や姫路方面から毎日のように汲みにやって来ます。特に土日は順番待ちが出るほどの混みようです。横を流れる公文川も千年水に劣らぬ清らかさで、美しい渓流を形作っています。

ただ、平成30年の西日本大水害で周囲の崖が崩れて濁流が溢れたため、徐々に清流に戻りつつあるものの残念ながら水害以前の美しい姿にはまだ戻っていません。水害時は、たまたま山荘に来ていた私も、唯一のアクセス道路が崖崩れで通行不能となって閉込められたため、周辺の集落の方々と一緒に防災ヘリで救出されるという貴重な体験をしました。その傷跡も約1年かけて、ようやく修復されました。崩落部分には立派な砂防柵が出来ています。

この溝谷の地は平安の昔、朝廷の命で木地師集団が移住して切拓いたことが、麓の歴史資料館に残されています。また歴史資料館のある家原遺跡公園には、縄文時代から鎌倉時代にかけての住居が復元され、木工の体験館もあります。四季折々に公園内で町興しイベントが開催されたりします。公園内には、第三セクターが運営する日帰り温泉「まほろば温泉」があり、地域住民だけでなく遠く神戸や大阪から入浴にやって来ます。ここの泉質が人体細胞の浸透圧と等しいため(等張性)、美肌の湯として知られています。

http://www.harima-ichinomiya.jp/mahorobanoyu/senshitsu.html

この豊かな自然に恵まれた地で人々が、縄文の昔から狩猟、採集、稲作、林業、木工、養蚕などを生業(なりわい)とし、何代にもわたって営々と暮らしを積み重ねて来たことが、先祖代々の墓や古民家の佇まいや古く立派な神社や美しく広がる水田などから窺い知ることができます。

話が長くなりました。プロローグはこの辺りでおしまいにしたいと思います。この三丘庵山荘での日々の暮らしを、ルーティーン日誌としてこれから連載して行こうと思います。準備が整えば、動画としてYoutubeにも投稿して行く予定です。ブログも開設予定です。乞うご期待!

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