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哲学② 怒りに対する唯一の抗体

写真:Aorakiへ続く道(ニュージーランド)

”You can't be angry and grateful simultaneously. It's the only object that really works.” - Tony Robbins


運を信じないものは経験がないものの印である

by ジョゼフ・コンラッド(小説家)

人生には流れがあります。

その点、2023年は、初めて海外に丸々1年間滞在し、同時に8カ国に渡航するなど、おそらく自分の幸福度の最大値を叩き出したと自負するほど”いい流れ”に乗ることが出来ました。

念願のフランスにて

一方で、2024年は大きく出鼻を挫かれています。まだ、年明けて2週間ですが、多くのタフな出来事がありました。特に先週末から今日にかけては”地獄の四日間”と名前をつけてしまいたくなるほど”悪い流れ”を引いてしまった心象があります。

失恋

まず、1年間同棲までした彼女と修復不可能な絶交になりました。そして、そのまま彼女は日本へと本帰国しました。同棲していた分、今も空になった部屋に帰るたび心が締め付けられます。シドニーを発つ前夜も、私の判断で帰宅せず、そのままフライトの時間までシドニーから150km離れた土地にいたため、1年もの間、海外で築いたかけがいのない関係は無情にも最後の時すらも共にすることなく終わりを迎えました。

退場

そして、そんな気持ちを少しでも晴らそうとした野球の試合で、最終回ランナー二、三塁で三ゴロの間に本塁を狙った私は、キャッチャーの手を掻い潜りホームプレートにタッチし3点をひっくり返す逆転劇かと思われた矢先、審判の誤審により、タッチ判定されずアウトになりました。この試合、自分のチームに不利な判定が続いていたこと、試合の中で1番重要な場面で誤審が出たことに対する抗議も含めて、強めにアピールした結果、退場処分となりました。

別れ

その翌日、同じ時期にシドニーに来て歳も一つ違いだったことから仲良くしていたトルコ人の女の子が帰国するため、最後のお別れ会をしました。シドニーは、人の出入りが激しい街なので仕方がないですが、だからこそ同じ境遇を分かち合える仲間が去るのは非常に胸が裂ける想いです。彼女の他にも、帰国予定日が近い友人がたくさんいるので、連続する別れの瞬間に意気消沈しています。

怒り

極めつけが、"Karen"です。これまでの流れを断ち切ろうと気持ち新たにいつものビル清掃をしていたところ、とあるビルの住人が「そこに車止めないでくれる!?まじでありえないんだけど!くたばれ!」などと初速から最高速度のFワードを連呼してきました。でも、彼女が住んでいるビルディングを掃除しているのです。そのビルディングの前に車を停めちゃいけないというのはどういう理論でしょうか?普通に声をかけてくれるならまだしも、罵声をいきなり浴びせる程でしょうか?海外ではそういう自己中心的な無理難題を突きつけてくる中年白人クレーマーのことを"Karen"といい、自分もYouTubeなどで見たことがありましたが、まさか自分が被害者になるとは思っていませんでした。

どん底からの発見

正直、心はボロボロです。

1番悲しみは彼女との別れにあります。ただでさえ失恋はいつでも胸が切り裂かれそうなほど悲しいのに、海外という特殊な場所で1年間も同棲をした彼女と金輪際会えないのかと思うと喪失感や空虚な気持ちに襲われます。そんな中、2個も3個もとどめの一撃を連続で重ねられて、心が折れかかってました。と同時に、幾つも重なる理不尽に激しい怒りの感情が自分の中に渦巻いています。

私はいつも勇気をもらっているトニー・ロビンズの「You can't be angry and grateful simultaneously. It's the only object that really works.(怒りと感謝は相容れない故、感謝は怒りへの唯一の抗体になる)」という言葉を思い出しました。これは、いつもイライラしたときに心掛けていることでしたが、正直今まではピンときていませんでした。

優しさへの気づき

たしかに、この四日間はどん底で苦渋の汁を舐め続けさせられましたが、同時に多くの人の底知れぬ優しさにも助けられました。

20日以降家がなくなり車で生活しなければならない私に、心から寄り添おうとしてくれ、私にその間のホテル代をすべて出させてくれと言ってくれた、フランス人のLiliana。(私がフランスに5週間も滞在できたのもすべて彼女のおかげ)

最後の夜、彼女と過ごしたくなかった私を快く家に招いて歓迎してくれた今吉夫妻。

家がなくなることを知ったら、うちに泊まりにおいでと躊躇いもなく提案してくれるサダさん

国立公園で一人寂しさを紛らわせていた私に、満面の笑顔で交流してくれたトルコ人のTankut。

日本からも気にかけてくれてたくさんの温かいメッセージをくれる高校や大学の大好きな友達たち。(ここ最近メッセージくれた人には特に助けられた)

挙げたらキリがないほど、素晴らしくて温かい人たちが支えようとしてくれました。そうして初めて「怒りと感謝は相容れない故、感謝は怒りへの唯一の抗体になる」という言葉の持つ意味を心から理解できた気がします。

人生には、何度か大きくて乗り越えなければならない高い壁が存在します。立ち向かわなければならない時、大きな不安や恐怖、連続する理不尽に対する怒りなどのネガティブな感情が押し寄せてくる経験を一度は誰しもがすでに経験していると思います。そんな時、支えてくれる”誰か”がいる環境を普段から準備しておく必要があります。そして、それは小さな感謝の積み重ねでしか築くことが出来ない代物だと私は信じています。

誰かが辛い状況の時に、相手の立場に立って手を差し伸べることができる人こそ、真の優しさを持った人です。そういう人に私はなりたい。

すべては我々の知覚の問題

こうして感謝に気づき始めるスパイラルに入ったからには、過去に起こった辛い出来事をリフレーズしていくことが出来ます。

失恋のリフレーズ

精神科医の樺沢紫苑は「失恋するとメンタルが鍛えられる」と言います。心を痛めた経験をして、そこから立ち直る経験をすることで、人間は非常に成長をすることができる。失恋を経てメンタルタフネス、レジリエンスを養うことができる。そういう経験をしないで30〜40歳になると大変なことになるとういうわけです。

失恋とは自己アイデンティティの一部喪失によって、引き千切られるような痛みに襲われます。しかし、その経験を乗り越えていくことで一回り大きな自分に成長できます。今、私は悲しみの中からまだ抜け出せないですが、来週からは心機一転して新しいスタートを切れるように準備しています。

退場処分のリフレーズ

退場処分についても、必要な行為だったと後悔はありません。これは野球に限らずですが、日本人は基本的に舐められえていると思います。なぜなら、全く怒らず相手が悪くてもペコペコしているからです。この忍耐強さ自体は素晴らしい個性だと思っていますが、今の多くの人は本当の強さを手放して、形骸化した忍耐強さをなんとか持ち続けようと苦心しているように見えます。

ただ、忍耐強さとやられっぱなしは全く違います。シドニーに来て、はっきりと言わないから搾取されている日本人をたくさん見てきました。その一部が今回の野球の試合にも出たのだと思います。そんな時は「怒る」ことが重要です。自分の立場が不当に脅かされた時、あなたは本当に「怒る」ことが出来ますか?「怒る」ための牙が抜かれていませんか?その「怒り」は上の人間や社会に対しても同様に向けることが出来ますか?一度立ち止まってちょっと考えてみてください。

Karenのリフレーズ

"Karen"については施しようがありません。災害です。残念ながら、同じ人の見た目をしていても、思考力が全く常人のレベルに到達しておらず、不幸を撒き散らすモンスターが一定数存在するのが現実です。そういうのは相手にしないようにしましょう。そういう時はたいてい同じような被害者がいるので、シェアしてみると笑い話に出来ます。今回のケースでも、うちの会社はそのKarenに度々被害に遭っており、過去には車のリアガラスを破られているそうです。

まとめ

人間はポジティブな感情よりも、ネガティブな感情の方が圧倒的に記憶に残りやすいように生体設計されています。負の感情に支配されている時は、たいてい身近にある小さな幸せや優しさを見逃してしまっています。

そういう時は一度立ち止まって、感謝できる物事を再認識することで、怒りへの抗体へとなり得ます。

締めとして、失恋したからこそ見える新しい解釈の一曲を紹介します。

Bye by me - Vaundy

タイトルの発音は「自分への別れ(バイバイ私)」でありながら、綴りを正しく読み取ると「自分から恋人への決別(私からの決別)」をしているそんな曲。

愛していたんだきっと
思い出すことを
愛して、愛して
満たしているなら
忘れても、もういいよ
伝えたいことはもう伝えたから
忘れても、もういいよ
この先もいっぱいたまっていくから
愛してやまない傷を
無くして新しい日々を
またね
Bye by me

Bye by me - Vaundy


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