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タイへの転勤、子どもの難病…数々の転機の先に見つけた「自分の幸せに責任を持つ」生き方

30~40代はそれまでの生き方の「見直し」を迫られる人が多い世代です。誇りをもって続けていた仕事を辞める決断をする人もいれば、それまで住んでいた場所を離れざるを得ない人もいるでしょう。そのようなターニングポイントでは、慣れ親しんだ環境が大きく変化することもあり、時にストレスを抱え、日常の喜びをも見失ってしまう人もいます。

そんなとき、その転機を、「自分自身がより納得して生きるためのきっかけ」だと捉えられたら。その後の人生を、力強く歩くことができるのではないでしょうか。

今回、お話を伺ったのは、子育てコーチとして活躍中の森真智子さん。現在は多くの受講生をサポートしている真智子さんですが、過去にはご家族の海外転勤が原因となり、自己価値すら見失ってしまう「アイデンティティクライシス」を経験されたのだそう。 

今回のインタビューでは、さまざまな転機に向き合ってきた真智子さんご自身の葛藤やその乗り越え方を、過去のご経験を紐解きながら伺いました。

森 真智子さん
「親子のあたたかいつながりをつくる」子育てコーチ。タイ駐在時代にコーチングと出会い、それまで悩んでいた家族との関係が改善。現在はポジティブ心理学と掛け合わせたオリジナルの視点で、親子の幸せな関係づくりをサポートしている。

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「自分には価値がない」転勤で見失った“自分らしさ”

――パートナーのタイへの転勤がきっかけとなり、それまで続けてきた仕事を辞めることになった真智子さん。当時の心境を聞かせてください。

真智子さん:
もともと介護の仕事をしていたのですが、「家族で一緒に生活したい」という想いがあったので、夫の転勤が決まったタイミングで仕事を辞め、一緒にタイへ行くことを決めました。

夫が海外転勤を希望していることは以前から知っていましたし、「いずれそのタイミングも来るだろう」と心構えもありました。

――突然のお話ではなかったのですね。

真智子さん:
そうですね。とはいえ、いざ現実になると「あ、本当に決まっちゃった…」と戸惑う気持ちもありました。

転勤の話を聞いたのは育休中で、すでに復職後の計画も立てていましたが、結局そのとおりにはならず…。育休明けに半年間だけ働いて退職し、タイへ向かいました。

働くことが好きだったので、タイに行ってからも働きたいと思っていましたが、どうやらそれは叶わないということがわかって。「タイにいる自分」というものがどんなものか、イメージが持てないまま新生活が始まりました。

タイ駐在時代の一枚

――異国の地での新しい生活。とても心細かったかと思いますが、どのように過ごされていましたか?

真智子さん:
知り合いもまったくいなかったので、何でも自分1人で開拓しないといけない状況でした。さらには、日中は1歳半の息子とずっと一緒。自分のペースで物事を進められないことに、イライラが募っていましたね。

そのなかで、当時、夫が「お金がないなぁ」と呟くことが度々あったんです。本人からすれば何の意図もなかったのでしょうが、それを聞くたびに「日本でワーママをしていたほうがよかったんじゃないか」と思うようになって。

自分で稼いでいないからこそ、自分にお金を使うことにすら、躊躇することもありました。何かを楽しいと感じる気持ちも、自信も失いがちでしたね。

家族と一緒に過ごすために、自分でタイへ行くことを決めたはずなのに、自分の決断にすら疑問を抱くようになっていました。「自分は何のためにここにいるのか」、というアイデンティティクライシスに陥っていましたね。

今を変えられるのは自分だけ。コーチングで得た「自分に集中する」マインド


――そのような状況を、どのように打開していったんですか?

真智子さん:
最初のきっかけは、同じくタイで駐在生活を送っていた仲間との出会いです。彼女たちが主催していたお茶会に参加し、いろいろな方とお話するなかで、自分1人で抱えていた悶々とした気持ちが次第に楽になるのを感じたんです。

その後、お茶会で出会った人たちとコミュニティを作り、運営メンバーとして活動するうちに、少しずつ自信がついていったように思います。できることを、できるときにしようと思って動いていました。

様々なテーマで開いたお茶会

――人との出会いで視野が広がり、行動力が生まれていったんですね。

真智子さん:
そうなんです。さらに当時、もうひとつの大きな出会いがありました。それが、今の私の活動にもつながる「コーチング」だったんです。

友人に誘われて参加した子育てコーチングの講座で、「コントロールできるのはいつだって自分だけ」という考え方を知ったことで、家族に対してイライラすることが減りました。当時は、息子に対して感情的に怒ってしまうことが多かったんです。その原因は、子どもを私の思いどおりにコントロールしようとしていたことにありました。

でも、そもそも他者をコントロールすることなどできませんよね。

「あぁ、できないんだから、しなきゃいいんだ」と腑に落ちてからは、子どもとの関わりがとても楽になりました。それが1番大きな変化ですね。

――相手の行動を変えようとすると苦しくなる…私にも身に覚えがあります。

真智子さん:
夫から「お金がない」と言われてモヤモヤしていたのも、私がそういう捉え方をしていただけなんですよね。

「物事は自分の捉え方ひとつでどうにでも変わるんだ」と強く感じました。

生まれた我が子に難病…見つけたのは、「自分の幸せに責任を持つ」生き方

――そんななか、2021年に誕生されたお子さんにご病気が発覚します。私たちには想像も及ばない苦労があったかと思いますが、当時のことを聞かせてください。

真智子さん:
タイで出産した娘に、生まれてすぐ胆道閉鎖症という病気が発覚しました。一度目の手術までは、タイで治療を受けています。

胆道閉鎖症とは
生まれて間もない赤ちゃんに発症する肝臓および胆管の病気。肝臓で作られた胆汁の通り道である胆管が、生まれつき、または生後間もなく完全につまってしまい、腸管内へ排泄できないのがこの病気の原因。指定難病。ケースによっては生体肝移植の対象となる。
参考URL


娘は入院中、発熱を繰り返し体調が安定しない時期がありました。予定していた退院日が何度も延期になって、当時は本当に辛かったですね。「1日も早く退院できますように」と何度も願いましたが、「叶わない願いもあるんだな」とよく感じていました。

夫の駐在の任期はまだ数年残っていましたが、娘の容態が安定しなかったこともあり、夫をタイに残して、子どもたちと私だけで帰国することに決めました。

――大変な状況でしたね…。

真智子さん:
 はい。でも、そのなかでも少しでも前を向こうと、以前から気になっていた「ポジティブ心理学」の勉強を始めました。「この講座を受けるころには、娘はきっと退院している」という願いを込めて、病室で申し込みボタンを押したことを今でも覚えています。

そのなかで、「支援者は自分の幸せに責任を持たねばならない」という言葉に出会いました。正直、当時はあまりピンと来ていなかったのですが、娘との闘病生活を経て、次第にその意味がわかるようになっていったんです。

――どんなことがあったんですか?

もともと自分がやりたいと思って始めた勉強でしたが、先が見えない毎日を過ごすうちに、子どもが大変なときにやりたいことをやっている自分に罪悪感を抱くようになっていきました。

そんなとき、コーチングの師匠が「あなたは自分に呪いの言葉をかけている」と言ってくださったんです。当時の私は「私がやりたいことをやると、娘の状態が悪くなるのでは」と感じていました。でも、それはあくまで私の捉え方の問題。私の勉強と娘の状態は関係ありません。

「自分を責めるような考え方は手放し、違う言葉を自分にかけて」。

師匠の言葉を受けてから、「私がやりたいことをやっても、娘は大丈夫。だから、まわりの環境や状況に関わらず、自分の願いとまっすぐに向き合おう」と決めました。これが、「自分の幸せに責任を持つ」生き方にも繋がっていきましたね。


思わぬ転機や辛い経験。人生に活かすマインドとは?

――人生のなかで出会う「転機」をその後の人生に活かすために、大切にすべき考えを教えてください。

真智子さん:
何か大きな出来事が起こったとき、まず見つめるのは「自分自身の気持ち」「自分の本心」です。

転機には良いこともありますが、そうではないものもあります。私の娘の闘病などがまさにそうですよね。

辛い経験をしたときにネガティブな感情が湧き上がるのは当然のこと。しんどいときは、とことん休んで、自分と向き合う時間をもってほしいなと思います。

――まず転機をどう受け止めているのか、自分の状態をよく知ることが先決なのですね!

真智子さん:
動けないと感じたなら、それは自分の心が満たされていない証拠です。自分自身の内面を見つめ、自分が何を求めているかを知り、その過程で「自分を幸せにする小さな行動」を続けることで、次第にやる気が出てくると思います。

「自分の気持ちを満たすことに集中する」のが何より大事です。

私自身、以前は「とにかく行動が大事!」と考えていましたが、コーチングやポジティブ心理学を知ってからは、「感情」をより意識するようになりました。

落ち込むときはとことん落ち込み、すぐに切り替えようとはしていません。嫉妬を覚えたなら、「あ、私は今羨ましいと思っているんだな」と、そのときの感情をじっくり味わうようにしています。

――ネガティブな状態を、あえてすぐには切り替えない理由は何なのでしょうか。

真智子さん:
ポジティブな自分もネガティブな自分も受け入れることが、「どんな自分も認める」ことに通じているからです。

それがすぐには受け入れられないような自分であっても、「今は認められないんだな」とフラットに自分を観察する。認める過程にいる自分すらも大切にできたらいいのかなと。

子育てコーチをしているなかで、クライアントの皆様とお話していると、「ネガティブなことを言うのはダメだ」と思い込んでいる方が多いように感じます。でも、ネガティブなことも考えるのが人間なので、どうか無意識に自分を評価しないでほしいんです。

過去の私は切り替えが得意な反面、ネガティブな感情は置き去りにしがちでした。何か失敗をしても、落ち込む前に、すぐに次の行動に移ってしまう。嫉妬を感じる自分や悔しさを感じる自分には鈍感だったと思います。

でも、それでは「どんな自分も認める」ことはできませんよね。

――ネガティブな感情を味わうと、そこから抜け出せない人もいるのでは…。

真智子さん:
たしかに、ネガティブ感情は長い間持ち続けるとしんどいですよね。ですから、ある程度味わったら切り変える「行動」が必要です。

タイミングは、「~したい!」という気持ちが沸いたときです。「美味しいもの食べたいな」程度で十分。能動的に動きたくなる瞬間が見えてくれば、それが切り替えの合図だと思います。

大きな行動でなくても大丈夫。ささやかな行動の積み重ねが、少しずつポジティブな方向に視点を向けてくれると思います。

――小さな気持ちの変化にも気がつける自分でありたいな、と感じました。本日はありがとうございました!

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「自分を満たすことの大切さ」「自分自身の本音」。真智子さんのお話からは、どんな状況でも「自分」への視点を忘れないでいようとする強い気持ちが伝わってきます。困難な状況に出会うと、人はついその原因を自分以外の周りの環境や第三者に向けがち。

けれど、その出来事がどんなものであれ「変えられるのは自分の行動だけ」だと知り、「今の自分にできることを積み重ねる」ことで、人生を主体的に歩めるのかもしれません。そんな自分本位の生き方が、「自分で自分を幸せにする」ことにつながると、真智子さんのお話を伺いながら考えました。

そんなの真智子さんは、現在子育てコーチとして活躍中。実体験とポジティブ心理学を活かしたコーチングで、多くのご受講生の「なりたい姿」への実現をサポートをされています。

「自分軸を取り戻したい」「納得感を持って生きていきたい」そんな想いを持つ方はぜひ、真智子さんのコーチングを受けてみられては。お試しで受けられる、60分間の体験コーチングセッションもオススメです。ぜひチェックしてみてください。

〈取材・文=ながたせいこ(@gankomoriko)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉

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