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「地域の物語を演劇にする2021」

私は2021年春、科研費基盤Cという研究費に代表者として採択されました。タイトルは「大学生と高齢者が共に学ぶ学習プログラムの開発と評価」です。本研究では演劇を通じて、大学生と高齢者が交流し学ぶ活動を提案するというものです。演劇百貨店の柏木陽さんと協同しながら研究を進めています。2021年度から3年間の予定ですが、コロナ禍もあり期間を延長できないかなあと今は考えているところです。

この活動の下地になっている活動は2017年から毎年続けてきた「地域の物語を演劇にする」という実践です。この実践では、高齢化が進む東京都日野市百草団地において、地域の歴史を聞き取り、学生が演劇にするプロジェクトを行ってきました。こういった活動を通じて、地域と大学との交流と学びの場づくりに関わっています。

さらにベースとなっているのは、2013年から国内外で実践や調査を開始した「ラーニングフルエイジングプロジェクト」というものになります。ラーニングフルエイジングというのは、学び多き高齢化という意味の、私の造語です。大きな寄付金や研究費が途絶えてからも理念は変わらず、活動を有志の方と続けています。
http://learningful-ageing.jp/

現在の私の関心は、ワークショップデザインやファシリテーション研究にはありません。それはすべて道具だと考えているので研究の対象とはしていないのです。その代わり、私の関心は、30代後半からずっと、どのように人生を終わらせるかということに向かってきました。そして、現在の超高齢化社会における様々な課題を教育学研究者として、また一人の教育実践者としてどのように解決していくことが可能なのだろうかと日々考えています。

大学生にとって、高齢者になるのはおおよそ50年後。彼らにとっては全く想像のできない世界です。しかし、それについて現在の高齢者との対話を通じてリアリティあるように感じ取ってもらうことは、偏見を乗り越え協同に向かう第一歩ではないかと考えています。

「今の高齢者にも、当たり前だけれど、20歳の頃があった。」

このことをはっきり身を持って大学生に知ってもらうべく、今年のテーマは「地域の高齢の方に20歳くらいのころの話を聴いてみてそれを演劇として創り、地域の方に見てもらう。」としました。演劇にすることによって、他人の言葉を自分の語りや動きに置き換えることができ、そこではじめて気づくものがあるのではないかと考えています。

コロナで高齢者の拠点となるサロンも閉室期間が長くあるなど進める上で困難は多々ありましたが、熱気ある学生のおかげで無事公演にこぎつけることができました。たくさんの観客を前にし、しっかりとした公演を終えることができました。

学習プログラムとして完了するのは、学生の振り返りやレポート、そして評価アンケートまで終わってからとなりますが、まずは2021年最後の山場を過ぎたかと思います。
この活動を5年間続けてくることができて本当によかったと思っています。


私の記事を読んでくださってありがとうございます。サポートされると今後の実践・研究の励みになります。よろしくお願いします。