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ギリシャ①サントリーニ 白壁と青い屋根

サントリーニの景色を初めて見たのは、世界の都市がモチーフになったカレンダーだった。
以前記事にしたモン・サン・ミッシェルを見たのも、このカレンダーだった。

実家のリビングに掛けてあったカレンダーはとても大きなもので、海と空の青さに、白い家々がくっきりと浮かび上がり、その家の上にも青い屋根が乗っていた。
幼かった私は、1ヶ月の間、毎日その景色を飽きる事なく見続けた。
そして、その1ヶ月が終わると、紙が破れないように慎重にその1枚をカレンダーから外し、ポスターのように自分の部屋に飾った。
私は、この島に強い憧れを抱いたのだった。

あれから数十年。
ようやく願いが叶い、私はその島を訪れた。

サントリーニと言っても、それは正式名称ではないと知ったのは、ドイツに来てからだった。
ドイツでは、サントリーニはそれほど有名ではなく、ロードス島やクレタ島のほうが人気だ。
観光ガイドを読んでから、この島の正式名称がティラだという事を知った。
キクラデス諸島の最も南に位置するこの島は、火山の噴火で紀元前約17世紀頃にでき、その後カルデラとなったそうだ。
周りの5つの島が、その噴火の外輪山になるという。

火山の噴火といえばポンペイを思い出すが、ここでは小規模な火山噴火が続いていたため、大きな噴火を予測できたそうで、人々はほぼ安全に避難できたと言われている。
そのため、ポンペイのように高価な装飾品などは見つからず、人々はある程度の余裕を持って逃げる事ができたようだ。
海底に沈んだアトランティス大陸は、ここではないかとも言われている、とてもミステリアスな場所でもある。

島の中心地フィラ

島の交通は、全てこのフィラの街が中心に結ばれている。
古い港もここにあり、ケーブルカーやロバに乗って移動できる。
火山でできた島なので、どこも急斜面の壁ばかりだ。

3つのベルが並ぶ藍頂教会。

フィラからの夕陽も、とても素晴らしい。

サントリーニらしい街イア

ブルードームが3つ並ぶ島の有名スポットは、ここにある。

夜景も美しい。

イアの中心にあるパナギア教会

美しく咲き乱れるブーゲンビリアは、白い壁と青い空にぴったり。

狭い路地が街の中を走っている。

島の北西に位置する港アムーディー。
ここでも、切り取られたかのような絶壁の岩肌を感じる事ができる。

港で日干しされていたタコ。
ちょっぴり痛々しい。

城塞

あちこちの街で、夕陽が沈むのを見てきた。
ここからの夕陽が美しいと聞いて、私は必ずここを訪れたいと思っていた。

この日の朝、私は早起きをし日の出を見に行った。
その日の太陽は、私に新しい歳をプレゼントしてくれた。
夕方になると、その美しさを私に見せつけながら、まるで沈むのを躊躇うかのように、ゆっくりと沈み始めた。

私は、ギリシャワインが注がれたグラスを通し、燃えるようなオレンジ色のドレスを纏った太陽を見た。
白ワインは、太陽の光を浴び、ほんのり黄金色に染まった。
この景色こそ、最高のお誕生日プレゼントだ。

アクロティリ遺跡

ここは紀元前17世紀頃に栄えた都市遺跡。
その年代のものとは思えない、3階建ての家がある事に驚いた。
上下水道も完備していたのには、更に驚いた。
火山灰に埋もれていたため、非常に保存状態が良いそうだ。
ここで発掘されたボクシングをする子供の壁画は、アテネの国立考古学博物館で会える。

こちらがその壁画。
別途アテネの記事で取り上げたい。

アクロティリ遺跡の近くに位置するレッドビーチは、赤い岩肌の絶壁にビーチが広がる。

ゴツゴツした岩山を抜けると砂浜になっており、澄んだエーゲ海で泳いだり、日光浴を楽しむ人が大勢いらっしゃる。

カメニ島へのボートツアー

ここは、サントリーニのお隣の島。
今でも活火山のため、温泉を楽しみに出かける人も多いそうだ。
オールドポートまで、急な坂道を下る事30分。
ケーブルカーもあるが、非常に混み合っていたので、徒歩で下る事にした。

ケーブルカー以外には、サントリーニ名物のロバに乗ることもできる。

ようやく港に到着。

船から見るサントリーニも、息を飲む美しさだ。
何層にも重なる岩層の上に、白い家々が乗っている。

ネオ・カメニ島に着いてから、火山口まで歩くこと20分。
火山口は、ほんの少し硫黄の匂いがして、日本の温泉街を思い出す。

頂上からは、360度の眺望を楽しめる。
遠くに見える山の頂上には、古代ティラ遺跡がある。

ネア・カメニ島からパレア・カメニ島へ移動。
ここは温泉を楽しむ事ができる人気エリア。
船からみんなが海に飛び込む。

ここは、クレタ島と同じくミノア文明が栄えた島。
高い文明と生活水準がここにはあった。
そして、ここに住んだ遠い昔の人々も、この島から同じ夕陽を見ていたのだと思うと、果てしない時の流れが脈々と繋がっているのを感じ、夕陽を見ながらじんわりと感動してしまった。

サントリーニは、日の出から日の入り、そして夜景まで、撮った写真の全てをここに載せてしまいたいほど、どの風景も一枚の絵葉書のように美しい。

幼い頃、一枚のカレンダーの写真に魅せられた私は、あの景色の奥にある更なる絶景を想像することはできなかった。

あの頃の私に、そっと教えてあげたい。
サントリーニは、どの景色を切り取っても絵になる島だということを。
それがたとえ、ただの白い扉だったとしても。

*****

幼い私が感動したカレンダーシリーズ。
モン・サン・ミッシェル

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