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ハルツ地方②木組の家街道ヴェルニゲローデ

ブロッケン山の麓の街、ヴェルニゲローデ Wernigerode。
ザクセン・アンハルト州内にあり、1267年にハンザ都市に加盟した、とても古い歴史のある街だ。

ドイツにはFachwerkstrasse、木組の家街道というものがあり、ドイツ全土で6つのコース、98の都市が加盟しているという。
この街もその一つ。

街のシンボルの市庁舎は、マルクト広場に建っている。
ふたつの塔を持つその建物は、かつてはヴェルニゲローデ伯が所有していた建物で、遊技場や娯楽のための施設だったそうだ。
市に寄贈された後も、娯楽施設として使われ続けていたが、1543年に旧市庁舎が火事に遭った際に、こちらに市役所機能が移転されたそうだ。

市役所から見た広場。

マルクト広場の中心にあるWohltätersbrunnenという噴水は、この街に貢献したかたのお名前が刻まれている。

街は木組の家街道の名に相応しく、どこを歩いても木組の家ばかり。
この街は、カラフルな木組の街とも呼ばれていて、色とりどりの木組みと装飾が目に飛び込んで来る。


こちらは、メインストリートのBreitestrasse。

広場近くにある、一段と華やかな建物はカフェになっている。

通りを少し歩くと、ニコライ広場へ。
ピンク色の大きな警察署の建物と、噴水が印象的。

ウルムにある傾いた家のホテルはギネスブックに掲載されているが、この街にも傾いた家があり、今は博物館として使われている。
建物の前には、以前川が流れており、水車を使って紡績をしていたそうだ。

そして、この街で一番小さいというお家。
周りの建物と比べても、かなり小さい。
靴職人の家だったそうだ。

そして、高台にあるヴェルニゲローデ城は、いばら姫のお城だとも言われている。
Sababurgにも、いばら姫のお城がある。
ドイツ各地に色々なお城があり、それぞれ想像を掻き立てられる。

街から見上げるお城も、とても美しい。

お城の途中へ行く道には、城壁が残されていた。

歩いて10分ほどでお城に到着するが、街を走る可愛らしい観光バスも走っている。

お城中庭。

城内は撮影禁止のため写真はないが、宴会の間の豪華さは一見の価値がある。

街に戻って、お散歩。
街には、魔女グッズが溢れている。
Herzlich Willkommen ようこその代わりに、Hexelich Willkommen。
Hexeは、魔女のことだ。

薬草を使った魔女の伝説通り、ハーブを使ったリキュールがずらり。

夕飯は、お勧めして頂いたKartoffelnhausへ。
Kartoffelnはじゃがいも。
お店のお名前通り、じゃがいも料理がたくさんあり、サーモンと共に、焼き野菜がたくさん乗ったホイル焼きを頂く。

もう一軒はBrauhaus。
こちらは、とっても大きなビアホール。
この辺りの名物Sülze ゼラチンの煮こごりをビールと共に頂く。

私はこの街で、Nachwächer夜警のツアーに参加した。
1時間半で、街の歴史や建物の細かな装飾の意味など、プライベートではなかなか分からない所を面白おかしく説明してくださった。

魔女も蒸気機関車も、そして夜警ツアーも、観光客を惹きつけ虜にする。
街自体も非常に美しく、心地良い。

さて、私はこの街で、Weisser Hirschというホテルに滞在した。
白い鹿という意味で、このハルツ地方で一番古いホテルだということだ。

市庁舎の反対側に面する、白い建物。

ホテル室内に、ある物語がそっと置かれていた。
それは、一人の女性のお話から始まっていた。

*****

この地方が、まだ森だった頃。
未亡人となったシェーファー夫人は火事で家を失い、貧しい生活を余儀なくされていた。
しかし、心温かい彼女は、この地方を旅をする人のために、ささやかな食事を提供していた。
彼女は、お隣に住む少年マックスをとても大切にしており、いつか素敵な宿を持ち、旅人を歓迎したいという夢を彼に打ち明けた。

マックスは、願いを叶えてくれるという白い鹿の話を修道士から聞き、シェーファー夫人のために鹿を探しに出かけた。
探しに探し、少年はとうとう森の中で白い鹿に出会う。
白い鹿は少年の願いを聞き、樫の木の近くに宿を建てるようにと言い残す。

白鹿の言葉通り、マックスと両親、そしてシェーファー夫人が定められた場所に家を建てると、すぐに旅人が集まり繁盛した。
この地は、各都市へ移動する交差点。
多くの旅人がこの宿を訪れ、宿は建物を拡張せざるを得ないほどに繁盛した。

そして、この宿を中心に人々が家を建て、街ができあがった。
侯爵までもが、この地に遊戯施設を造り、それが後に市役所になった。

この宿に泊まった人はみな商売で成功し、新婚旅行で訪れると、素敵な第二の人生のスタートになるそうだ。

*****

私もまた、この宿に泊まったお陰か、ブロッケン山の登山日には、晴天に恵まれた。
ホテルは、この物語通りに増築を重ねた跡が見て取れ、古い建築と新しい建築が混ざっていた。
ホテルの従業員のかたは、みな人懐っこいほどに親切で、シェーファー夫人の夢を引き継いでいるのだと思うと、感動すら覚える。

この街、そしてこの地方の発展の始まりとなった場所。
そして、幸せをもたらすホテル。
この記事を読んでくださった皆様も、ご興味を持って下さっただろうか。
ここを訪れれば、きっとあなたにも幸運が訪れることだろう。

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ブロッケン山と蒸気機関車

世界一傾いたホテルがあるウルム

もう一つのいばら姫の街

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