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オランダ アムステルダム フェルメールとアンネ・フランクの家

日本から友達が来ると必ず、ノイシュバンシュタイン城を見たいと言う。
あの城はドイツの代名詞とも言えるのかもしれない。
それでも、ここから電車で6時間ほどかかると言うと、みなが怯む。
 
その代わり、デュッセルドルフからアムステルダムまでは2時間半だというと、目を輝かせて、行きたい!と言う。
そんなわけで、お隣の国ながらアムステルダムには何度か足を運んだことがある。
 
日本語でいう『オランダ』は、俗称であったHollandから来ているが、オランダ語のオランダ国名は、Nederland『低い土地』だ。
その名の通り、国土の30%は海面下である。
また、国土の20%を開拓で作り上げたというのも、特記すべきことだろう。
 
 
アムステルダムの中央駅は、東京駅のモデルとなった駅としても知られている、とても美しい駅だ。

また、駅の近くには有名な『飾り窓』の地区もある。
ハンブルクにもレッパーバーンという地区があり、昼間その辺りを通った事がある。

アムステルダム王宮

街には、至る所に運河が流れていて、運河沿いの街並みはとても美しい。

運河巡りをしながら、街を眺めるのも良い。
様々な運河ツアーがあるので、気軽コースを選び、参加できるのが嬉しい。
時には、船上ホテルなど、珍しいものにも出会えるのが面白い。

アムステルダムは、その自転車の多さに驚く。
人口よりも自転車の数のほうが多いというのは、ただの揶揄ではないようだ。
そして、街中に停めてある自転車には、頑丈過ぎるほどの鍵がかかっているのが面白い。
 
 
ゴッホ美術館の写真は手元にないため、今回はアンネ・フランクの家と、国立美術館のフェルメール作品を中心に備忘録。
 
 
まず、アンネ・フランクの家については、内部は撮影禁止のため、外観しか写真はない。
アンネの家は大変な人気だ。
アムステルダムまではいつも日帰りのため、長い行列で入場を待つということができず、なかなか見学することができなかった。
しかし、今はインターネット予約が可能となったので、事前に予約をし、私達はようやくアンネの家を訪れることができた。

アンネの日記の記述にあった隠し部屋、アンネの部屋、家族の部屋。
アンネが書き残した教会や、その鐘も聞こえる。
 
アンネの日記を読んだ事がある人も、そうでない人も、是非一度訪れて欲しいと強く思う。 

そして、私が行きたかったのが、アムステルダム国立美術館Rijksmuseum。

私は本当に本当に長い間、この国立美術館を訪れたいと願っていた。
美術館は長い期間に渡り修復作業にあり、訪れる事ができなかったのだ。

この美術館は、1800年に開館した。
そして、2004年から、なんと10年に渡り閉鎖していた。
 
あまりにも待ち焦がれて、美術館の修復作業中のドキュメンタリー映画まで見てしまうほどだった。
ようやく修復が終わり、私は友達と一緒に美術館を訪れることができた。
 
ドキュメンタリー映画を見たお陰で、それぞれの専門家がこだわり抜いて、時には喧嘩になるくらいの討論を重ねながら、この修復に携わってきたことを知った。
建物を見るだけでも、私は鳥肌が立つほどに感動してしまった。
 
オランダ出身の画家はたくさんいるが、やはりレンブラント、フェルメール、ゴッホ、この3名は特別だろう。
私はその中でも、この美術館ではレンブラントの夜警と、フェルメール作品を見たかった。
 
レンブラント 夜警

この作品は、描かれた当初よりも小さいことをご存じのかたも多いのではないだろうか。
飾るための場所に対して大きすぎるからと、左側の60センチほどを切り取ってしまったのだという。
今となっては、世界の三大絵画とも評されるこの作品を、そのような理由から、いとも簡単に切り取ってしまったとは俄には信じられない。
 
光と影の魔術師、レンブラント。
自然と絵の中に二人の人物が浮かび上がり、惹きつけられる。
 
 
ここからは、フェルメール作品。
 
牛乳を注ぐ女
レンブラントの夜警と共に、この美術館の顔とも言える絵だろう。

恋文

手紙を読む青衣の女

私はフェルメールの作品の中で、この絵が一番好きだ。
 
専門家ではないので絵の解説はできないけれど、好きな絵なので私の思いを書き残しておきたい。
 
絵の中の女性が来ている青い衣装は、フェルメールブルー、ラピスラズリをふんだんに使用しているのがうかがえる。
 
お腹が大きく見えるのは、当時の衣装なのか、それとも赤ちゃんを身ごもっているのだろうか。
彼女の後ろに掲げてある、大きな世界地図。
オランダは航海の国であるから、もしかして彼女のご主人は船で海外に長旅に出ていて、旅先からのお手紙なのではないだろうか。
身重の妻を置いて遠くに出かけたご主人は、さぞ彼女を心配している事だろう。
そして、遠い国から送った手紙は、何日もかかって彼女の元に届いたのかもしれない。
 
彼女が郵便受けから手紙を取り出し、嬉しそうに封を開け、小走りに窓際に駆け寄り、手紙に目を落とすこの瞬間までの様子が、映像のように浮かび上がってくる。
 
窓が左側に描かれるのは、フェルメールの作品に多く見られる。
ご主人からの手紙を待ち望んでいた彼女は、より手紙が読みやすいように明るい窓際に行き、手紙を両手で握りしめて読んでいる。
その表情がとても柔らかに見えるのは、ご主人への愛情のようにも見える。
きっと、良い便りなのだろう。
ご主人が、そろそろ帰国するのだろうか。
赤ちゃんの出産には、間に合うのだろうか。
 
こんな風に、作品の中に描かれてすらいない彼女のご主人までもが、絵の中に見えてくるから不思議だ。
更には、彼女が手紙の代わりに生まれたばかりの赤ちゃんを抱き、彼女の背後の空白に、帰ってきたご主人が寄り添う未来の様子までが見えてくる。
 
一枚の絵に、まるで映画のようにストーリーがある。
 
この絵は、私にとって愛情が詰まった一枚の絵に見える。
だから、この絵が好きなのだと思う。
 
 
私はこうして、絵の中に物語を作り、作品を見ていくのが大好きだ。
観賞用のオーディオガイドを借りるのが苦手な理由は、こういった自由な想像ができなくなってしまうからだ。
 
画家が、何百年も前にどんな思いでその絵を描いたのか、誰も知ることはない。
むしろ、分からないからこそ、その曖昧さの中に、自分の思いを組み込める余地がある気がする。
そして、それこそが、私が美術館や絵が好きな理由なのかもしれない。
 
私は美術専門家ではないから、そういう楽しみ方が一番似合っているのだろう。
 
 
フェルメールの『小路』は、他の美術館へ貸し出し中のためか見ることができなかった。
フェルメールの風景画は二枚しかないので、是非見たかったのだが残念だ。
 
 
しかし、全部を見ることができない美術館に出会う度に、私は少し嬉しい。
なぜなら、私はまたここに来るだろうという余韻を残して、その街を去ることができるからだ。
私は、ちょっとばかり欲張りだ。
 
何度でも同じ絵を見たいし、何度でも同じ街を訪れたい。

東洋文化のコーナーでは、仁王像が展示されており、人々が圧倒されていた。

さぁ、アムステルダムには、今度はいつ足を運べるだろうか。
2023年2月10日から、過去最大のフェルメール展が開催されるそうだ。

修復によりキューピットが現れたドレスデン国立古典絵画館所蔵、窓辺で手紙を読む女。
私は修復後にドレスデンへ見に行きたかったのだけれど、どうしても都合が合う日に予約を取る事ができなかった。
絵は、東京で海外初披露が行われ、今は大阪市美術館で9月まで展示されているようだ。

そんな訳で、次のアムステルダム行きは、来年2月になるだろう。
私は今度こそ、あの絵をこの目で見たいのだ。
壁に描かれたキューピットと共に。

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