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星の金貨を求めて

おいでませ。玻璃です。

私の高校生生活は部活なんて最初から入る気はなし。
それよりバイトしなきゃ。

今みたいにスマホで簡単、すぐに次の日からバイトに行くということはできず、お店の前の張り紙を見て電話をするとか人からの紹介とか。

とりあえず、高校の近くの小さなショッピングモールの中のレストランでバイトをすることになった。
でも、休みの日にわざわざ高校のある長門市まで列車に乗っていくのも面倒だし、定期券が切れた時にはお金をかけていくのはもったいないと感じた。

そこはすぐに辞めて、萩市内をあちこち当たった。
そんな時ちょうどチェーン店のお弁当屋さんが新規開店で、アルバイトを募集していたので迷わず応募し、バイトに通った。

お金を自分で稼ぐというのはいいものだ。
大変でも親にいちいち言わなくてもお金を使えるし、通学代も自分で払える。定期券をフェンス越しにパスしてもらわなくても良くなった。
友達との飲食も気兼ねなくできる。
微々たるバイト代でも私にとってはキラキラと天から降る星の金貨のようだった。

とはいえ、同じバイトをずっとしていたわけではない。
お弁当屋さんも嫌なことがありすぎて辞めてしまった。
この頃の私は何をやっても続かない。

だからと言って次のバイトはすぐには見つからない。
そこで、私は友達と電話帳を片手に

「アルバイト募集していませんか?」

と、市内の店に根性で電話をかけまくった。
こうと決めたら突っ走るのはこの頃からだ。

そうしてホームセンターにかけた時に、単発なら棚卸の手伝いのバイトを募集しているという。
2日間だけのバイトでも有難い。

単発のバイトが終わって、さて次はどうする?
そんな時にまた新たな情報が。

ニューオープンの居酒屋だ。
居酒屋といっても週末は家族連れの飲食客で賑わう。
定食の種類も豊富だ。

二階にも部屋があるので、お酒や料理を運ぶために上がったり下りたりとかなり重労働だった。
大変な中でも頑張れたのは、バイト終わりの”まかない”のおかげだ。
ぶっきらぼうな板前のおじさんが黙っていつも特別に、萩の美味しいお刺身を付けてくれた。
そんなご褒美をもらいながら、友達と二人で割と長く務めた。
家に帰ると夜10時近い。真冬になるとバイト終わりに街を抜けて日本海の港近くまで自転車で帰るのは凍えてしまう。

「玻璃ちゃんおかえり。」

母がお風呂を沸かして待っていてくれる。
すぐにお風呂に入って温まると疲れて湯船に顔を浸けながら眠ってしまう。

明日もまた7時5分の列車だ。
遅刻魔の私はよく寝過ごして遅刻していた。

それでもバイトはしばらく続けた。
私にとっては死活問題だからだ。

両親に対して、モヤモヤする感情はもちろんあった。
この頃父とは険悪で、直接口をきかないことも多く、母が姉に

「玻璃ちゃんがお父さんに反抗的で困る」

と相談していたほど。
まさかそんな父を10年という歳月、介護することになろうとは。
この頃の玻璃ちゃんが聞いたら気を失って倒れるだろう。

そうして私のバイト生活はまだまだ続くのだった。
ではまたお会いしましょう。




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