見出し画像

2018年8月15日世界で一番の「ロック・スター」はELLEGARDENだった。


2018年5月10日、10年止まっていた時計が突然、動き出した。
2008年に活動休止を発表していたELLEGARDENが2018年8月に全国3公演をすると発表したのである。

その後、二度の先行販売及び一般販売のチケットがあったが、落選祭りとなり高額転売も見受けられた。
そんなチケットをZOZOマリンスタジアムでの公演を、しかもアリーナを運良く2枚手にすることが出来た。


15日の朝は物販の列に並ぶため5時過ぎに起きた。
前日の14日、公式のツイッターではこんなツイートがあった。


これを見て同行者には、「最後に笑うのは正直な奴だけだって〜。9時から並ぼうよ〜」と散々言った。
しかし、実際には朝6時に物販の待機列が生成されていた。そして同行者と自分は7時半には待機列に並んでいた。

結局、物販でグッズを買えたのは午前11時過ぎだった。その時点でも売り切れのグッズがあり、さらには既にメルカリに多数のELLEGARDENグッズの出品があった。
そんな状況を受け、通販によるグッズの販売が決定した。


はっきり言って、15日の朝に待機列を作らせず9時から並んだ人にしか買わせないスタンスなら、このような事態にはならなかったはずだ。この点について主催側は猛省して頂きたい。


そんな主催側への怒り、さらに同行者が慣れないコンタクトレンズを付けるのに手間取り、会場入りは17時となってしまい自分自身のイライラはかなりのものだった。


しかし、マリンスタジアムに到着し、コインロッカーに荷物を預けて身軽になると、徐々に気持ちが高ぶる。スマチケで入場し、所持品チェックを終えると気持ちは最高潮に達した。


そしてこの光景。


辺りを見渡す。
ここはフェスの会場ではない。間違いなく全てELLEGARDENそしてONE OK ROCKのライヴを観に来た観客だ。
晴れ渡った空。傾く太陽。心地よい温度。
全てが最高だった。


昔のELLEGARDENのライヴ会場では、細美さんのiPodを繋げて会場に曲を流していた。
今回の会場で流れていたのはASIAN KUNG-FU GENERATION、MONGOL800、POLYSICS、9mm Parabellum Bullet、10-FEETといったELLEGARDENとツアーを回っていたバンドの曲だ。


そして18時過ぎ。ONE OK ROCKのライヴが始まる。
ONE OK ROCKのライヴが終わったのは19時前。


会場には再びELLEGARDENとツアーを回っていたバンドの曲が流れる。


19時過ぎ。それはいきなりだった。


STANCE PUNKS「すべての若きクソ野郎」のヴォリュームが徐々に大きくなり、照明が一気に暗くなる。


流れる「ELEVEN FIRE CRACKERS」一曲目「Opening」のリミックス!
そしてスクリーンに映し出される「ELLEGARDEN」の文字!
そして大歓声!
前へ前へと流れる観客と戸惑う観客!
「Oi!」だか「はい!」だか分からない掛け声!

10年ぶりのELLEGARDENのライヴに来たと実感した瞬間だった。


そして、細美さんが歌い出す。
「ああ。こんなのダメだよ……」
と心の中で叫びながら、込み上げるものを必死に抑え

「I'm a fuckup and I'm nuts so she's gone」

と歌う。自分も会場の全員も。
誰もが待ち望んでいたELLEGARDENのライヴはやはり「Supernova」から始まった。


「Supernova」は日本語に直すと「超新星(爆発)」宇宙で太陽の何倍もの大きさの恒星(自ら光を出す星)が最後に起こす爆発である。そしてその後巨大な恒星だった星はブラック・ホールへと変貌する。


そんな意味を持つ曲が始まり、次の瞬間の光景に相応しい言葉は何だろう。
それは一つしかない。


爆発だ!


少なくても自分は「10年も待たせやがって、遅ぇんだよ!」といった気持ちで、水道水を入れたペットボトルのキャップを開けて頭上に水を撒いた。

水はいくつも撒かれた。10年前はよくライヴハウスやフェスで見られた光景だ。
近年、「アーティストの機材に掛かると大変なことになる」「周りに迷惑だ」「そもそも水を撒く意味が分からない」といった声に押され、すっかり見る機会もやる人も減った水撒き行為。
しかし、ここは違う。10年間活動休止していたバンドには10年前と同じスタイルで観客も応えるのが筋ではないか。そんな空気があった。


叫ぶように歌うところを叫ばなかったり、テンポがCDと同じかそれより遅いかで演奏したり、自分も含めて速い曲で暴れたあとにすぐ疲れたり、MC中にスクリーンに映し出されるメンバーを見て、後ろから「……太ったなぁ」という声が漏れ聞こえたりと10年という歳月を感じさせる瞬間がいくつもあった。


辺りを見回したが、平均年齢は20代の後半といったところ。もっと30〜40代の全盛期を知る人が多いかと思っていたが、この点は意外だった。
「懐かしい曲、やります」とMCがあり、「Missing」(2004年発表)を演奏したり、「オールドELLEGARDENファンに捧げます」と「Middle Of Nowhere」(2002年発表)を演奏したり、2002年発売の2ndミニアルバム「MY OWN DESTRUCTION」から一曲も演奏は無かったりと、そんな点には個人的に驚いた。
しかし、これらは何よりも活動休止の10年間でELLEGARDENが新たなファンを取得した何よりの証拠ではないだろうか。

それにしてもELLEGARDENの曲は本当に色褪せない。活動休止から10年経った今も。そうなると、これからも。
それはソングライターの細美さんが「クリスマスソングみたいな誰もが口ずさめるメロディ」を大切にしていたせいもあるのだろうか。
力強さを感じさせながら、どこか優しいELLEGARDENの曲が会場の外でも聴いている人々をも包んでいく。


以前、

正直な話、あの4人が同じステージに立った瞬間を目にしたら目が潤み、音が鳴った瞬間に泣ける自信がある。(ライヴDVDの「ELEVEN FIRE CRACKERS TOUR 06-07 〜AFTER PARTY」の「金星」のイントロが流れた瞬間に泣いた人の様に。)

と書いていたが、この日、自分はなかなか泣かなかった。


しかしそれは「Missing」で訪れた。

「Missing」の1番のAメロ、細美さんの歌い出して涙が溢れた。
はっきり言って「Missing」は大好きな曲でも、思い出がある曲でもない。
しかし、この曲が流れている間、涙を拭うのが大変だった。


「Surfrider Association」からは、近くに出来たモッシュピットに行った。「Surfrider Association」ではサークルモッシュをした。サークルで走り、外側の人達とハイファイブを決める。そして、その様子をスマートフォンで撮影する人……。
そして「モンスター」や「Red Hot」ではサビ前に輪が出来、サビに入ると真ん中に空いた空間になだれ込む……。
このようなモッシュが生まれる光景は水撒きとは違い、今でも様々なライヴで見られる光景だが、再びELLEGARDENのライヴでそしてELLEGARDENの曲で出来ることが何よりも感慨深かった。


「虹」のイントロが流れた瞬間、モッシュピットから同行者の元に戻った。
今回の同行者とは昔、些細なことでケンカになり、しばらく口を利かない時期があった。
しかし、仲直りのきっかけはELLEGARDENの「虹」だった。そして今もライヴに行く仲である。そんな曲をどうしても、同行者と一緒に聴いて歌いたかった。
モッシュピットから戻った自分を同行者は見て少し驚いた様子だったが、無言で肩を組んだ。

そして肩を組みながらジャンプして二人で「虹」をサビから歌う。



「虹」が終わるとメンバーがステージから去った。そして照明が暗くなる。
しかし、観客は再びメンバーが戻ってくることを願いながら拍手をする。


程なくして再び照明が明るくなり、メンバーが出てくる。


MCを挟み「Make A Wish」。
もちろん同行者と肩を組み歌う。しかし、自分は物足りなかった。

「モッシュピット行こうぜ!」

同行者にそう言って肩を組んだまま先程、自分がいたモッシュピットに連れて行く。
そこにはもう既に、先程より二周りは大きな空間が出来ていた。
普段は声優・アニソン歌手のライヴに行くのが多い同行者は少し不安そうな表情を浮かべていたが、ここまで来たら引き返せない。
BPMが速くなるパートになり、真ん中へなだれ込む!


水が撒かれ、汗だか水だか分からないもので濡れたTシャツを着て熱を帯びた体同士がぶつかり合う。細美さんの歌声は聴こえずに、隣の人の調子外れの大声が聴こえる。


文字に起こすと地獄のような場所。でも最高に楽しい場所。そんな場所についに同行者を連れて来た。さっきは不安そうな表情を浮かべていた同行者も楽しそうにモッシュをする。


そして「月」。
この曲では最後のサビ前に全員がしゃがみ、サビでジャンプするのがお約束となっている。
この光景は、活動休止前のSTUDIO COASTでも見られた光景だった。
運良くチケットを手に入れ行ってみたものの、全く楽しめなかった活動休止前のSTUDIO COASTのライヴ。あれから10年が経つ。

活動休止前のライヴは一曲一曲「これが終わったらもう聴けないかもしれない」と悲壮感が会場全体に漂っていた。

でも今日は違う。ただただ一曲一曲が楽しいのだ。
そして悲壮感なんて微塵もない。最高に楽しい祭りだ。

そして再びメンバーがステージを去る。もちろん観客はまだまだ聴き足りないし、拍手は鳴り止まない。そして、再び照明が明るくなる。
最初の歌い出しが「Sunday」に聴こえたため、
「あれ?Make A Wishのもう一回速いところやるの?」と思ったが違った。
「BBQ Riot Song」だ。

「俺達は暴動なんか起こさない。その代わり、鉄板の上の暴動は起こさせてもらう」

といったELLEGARDENらしいアティチュードを盛り込んだ曲である。

「See you some time on the beach」

とその場にいた全員が歌い終わり、細美さんが
「ONE OK ROCKとELLEGARDENでしたー!」
と叫ぶとスタジアムの外で花火が上がる。
間違いない。映画みたいな最高のエンディングだ。


ライヴが終わって様々な気持ちが混ざり合っていた。
ただ一つだけ言える。一番強い気持ちは、「めちゃくちゃ楽しいライヴだったと思える気持ち」だと!
そして、泣いたり笑ったりとにかく感情が忙しいライヴだった。

退場時にステージの写真を撮ったが、そこに写っている人々の顔がみんな笑顔だった。

終演後にゴミ拾いをする気満々でゴミ袋を持っての参戦だったが、拾ったゴミはペットボトル数本と2つ程のゴミ。とにかくゴミが少ないのには驚かされた。

力尽き、その場にへたり込む人々もいる中、足早に会場をあとにした。


この8月15日、日本でいや。世界で一番の「ロック・スター」はELLEGARDENだった。
そして、一番の影の功労者は「2年前」からこのツアーの準備をしていたON OK ROCKだ。

今思うことはただ一つ。

またELLEGARDENのライヴを観れる日を楽しみにしている。その時は、8月15日のこのライヴ以上に楽しいライヴにしたいものだ。









この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?