満ちた夜に欠け続ける
今宵、月があんまり丸いので
伸ばした手のひらが悲しいくらいに歪に見えて
僕は嫌になる
せめてもう少しましな形を
例えば、銀杏の葉のように
今宵、夜があんまり深いので
光のほうが白々しいほど夢を見せて
僕は訝しむ
やがて何もかも朝になるまで
例えば、人間が目を閉じる
満たされた夜が角を削がれた鹿のように
始まりと終わりは見知らぬ一点で
水平線を創るだろう
僕は眼を見開いていたはずなのに
あんなに丸い今宵の月が
今も欠け続けているなんて
水平線で切り取られたこの世の半分は
僕らの夢を朝と呼ぶ
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