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真空

名前のない季節が、私をまた傷つける
夜明けを待てない花たちが、少しずつ朝を早めていくたびに
ヒトは何事もなかったかのように
昨日作った歌を口ずさんでは泣いている
心だけがいつも半歩遅れて目を覚ます

散り散りになった木漏れ日の影を埋めなければ。
きっとこの街は満たされることなく
貪欲な口を開けたまま私の希望さえ糧にする

押し込まれたトーストが、私の内と外を
ゆっくりと一つにしていくのがわかる
いつからか空気を食べている。
この部屋は真空なので窓を開けることも許されない

張り裂けそうな心を抱えて、いつも大気圧に抗う私は
柔らかな花弁に触れるたび
ひっそりと壊れていく

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