ひとがた

僕は一体、何を守ろうとしているのだろうか。
容れ物である人の中で、
魂が魂たる瞬間は限りなく不可視で、
僕らは触れて確かめるしかないが、触れることは
とても恐ろしく思える。
時にそれは、容れ物を溢れて、
隣で微笑んでいる母の心に
ベッタリと張り付いていたりする。
時にそれは、母の心を蝕んで、
取り返しのつかないくらい溶かしてしまう。

そんなことは日常だ。僕らにとって。
溶けた心に気づかないまま、
また母は笑っている。
ほほ笑みかける。それは呪いですか?

一体、どこまでの魂を、
僕は守ろうとしているのだろうか。
それは尊厳という可笑しな名前で
頭をすげ替えられた人形のようで、
身体はケタケタ笑っている。
僕の魂は、芯から凍りそうな温度で、
その人形を、せっせと磨いている、
そして、いつか共に死ぬだろうけれど。

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