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透けた拳

喋ったり、笑ったり、触れたり、触れられたり
そんなことができなくなった僕らはどうやら人間では無いようで
それは今だけでなく、生まれてからこれまでずっと人間ではなかったかのように
顔も知らない誰かの中で僕らの人生は書き換えられるようなのです

怒ったり、泣いたり、叫んだり、殺したり
それすら出来ない僕らにはやはり世界は変えられないようで
透けた拳が今日もこの惑星を貫いています
おもちゃのように色付けられ、蹂躙されたストーリーはどうやら泣ける話のようなのです

何一つ出来やしないでこの世界の一部に還元した僕らは
存在しない眼で、存在しない物語の始まりを見送っています
誰にも見えない拳で、誰も傷つけることなく世界を打ちのめしています
傷つくことはまるで生者の証明のように思われているのですから

分かりますか?
もうあなた達がいう所の悲しみではないのです
ありもしない心がこの宇宙が終わるまで
無限回張り裂けていくのです
認知の向こう側で僕らは死に続けているのです

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