勧善懲悪症候群
いつか見たテレビ。寝ぼけ眼で、
悪者を倒してくヒーローの背中。
ぼくらもきっとおとなになれば、
この体がもう少し大きくなれば
あくってやつがやって来て僕が
ジャンプキックを決めてやるって
そう信じていた。
今朝見たニュース。二日酔いの頭で、
弱者を踏み潰してくヒーローの背中。
僕らがあれから信じた正義も
悪と信じて疑わなかったものも
その境界を誰も教えてはくれなくて僕が
そのどっちにいるのかってことも
まだ僕は知らないままだ。
都合や理由が絡み合って
自分の正義なんて貫けないままで
なんだか鈍ったみたいに思うけれど
まだ少し考えなくちゃいけないな
振りかざした剣がどんなに正義でも
返り血は避けられないってこと
傷つけた相手がどんな悪者でも
流れた涙は塩辛いってこと
僕らの持ってる言葉ってやつが
一番鋭いナイフかもしれなくて
手をつなぎたくて伸ばした誰かに
ナイフ突きつけてるかもしれないってこと
ジャンプキックの練習はもういいよ
誰が正義とかって、もういいよ
傷つけた君はアンパンチ。それだけで。
だから君も、バイバイキンって言って消えてよ。
それだけでいいよ。
もう僕たちの、勧善懲悪は。
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