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燈(アカリ)の章

〜翼〜

君はその日から
明らかに違う生き物になったと言える
少し寄れた制服のシャツ
背中から張り出した肩甲骨の下
たしかにそこに、白い翼が見えた

ベンチに座る私からは
乾いたグラウンドで光る
君の翼がよく見えた
俯いても、立っていても
羽化したばかりの蝶のように
頼りなげな翼は
それでも確かに、羽ばたきを始めていた

私の背中には
固いブラジャーのホックが
痣のように収まっていて
もうすぐ春が来るというのに
ため息が足元で積もり続けて冷たい。

一体何が
君の翼を宿したのだろうと
クルクルと回したボールペンに
問うている放課後
茜は暴くように刺す

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