見出し画像

葵(アオイ)の章

〜色色に夜明け〜

彼を照らした光が
眩しすぎて私にはむしろ闇だった
君の影にすら私はなれなかった
横顔すらまともに見たことがなかった

ある朝彼がいつの間にか
目の前に居た
描くことしかできない私の前に
彼は降り立った
羽ばたく音が聞こえた
私が彼の飛び立つ場所に
なれるかもしれないと思った

言葉にはできないから
ひたすらに描いた
描いて描いて
絵の具が尽きるのに
心は満たされた

彼が飛び立つのを
私が一番近くで
その羽ばたきで起きた風で
夜を振り払う程に

朝が来た
晴れた朝が来た
色にまみれた指先に
彼の羽が触れる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?