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私の妖精

しん。しん。しん。
夜が降り積もる
重さのない夢の中で
私は風になるか、木漏れ日になるかを
いつまでも迷っている
手を伸ばせば翼にでもなれそうな青天の下で
あんまり高く飛ぶのは怖いから、と
小鳥と並んで私は歌う

ぽた。ぽた。ぽた。
朝が流れ落つ
瞬きで吹き消された夢の残香は
浅煎りの珈琲に少し似ている
覚めれば覚めるほどに
世界から遠ざかっていく気がして
冷たい廊下の角に生まれたばかりの陽だまりを見つけては
かじかんだ身体を染み込ませていく

とん。とん。とん。
私は脈を打つ
ままならない日常の中で
私の手の平に収まったこの箱庭くらいは
せめて私の血液を分け与えたい
生ぬるいパジャマを脱ぎ捨てて私は
私だけの妖精を作り上げる
強すぎる波に抗うために
私は私の妖精たちと共に在る

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