見出し画像

人工痴脳

都合のよい入力と
適当な出力を設定し
量子計算の渦によって生成された
ありきたりな欲情を
インストールして
現実世界と見分けもつかない幻想を反芻し
ただそれだけで満たされていられたら

記憶からポップアップした
オプションウィンドウには
無表情のゴシック体で
愛だの恋だのが並んで
そのどれもが必要でも重要でもなく
単なるスパイスとして
愚かな僕の脳みそで機能する黒胡椒

機械学習によって再現された五感と
どこにでもありそうなストーリーが
未来永劫続く閉じた輪の中で
退屈さえ逃げ出しそうなほどに
希釈された罪悪感だけが残りながら
分化しすぎた感情フォーマットと
大まかすぎるラベリングシステムのお陰で
極彩色の快楽だけがここでは神様でいられる

数十億回目の邂逅と知りながら
いたずらにスパークした脳神経回路は
飽きずに絶頂を迎えていく
とっくに太古になった表情が
モザイクに歪んで
もうきっと思い出せない
僕はいつまでも許されないことに
これからもずっと甘えている


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?