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寝しなは戯れ

街頭が静かになりすぎた時間

吐息だけが循環するのは

健康的とは言えない

涙を流すことだけが

悲しみの手段ではないはずだから

拳で、突き上げて笑いながら

喧嘩しよう


空があんまり青くって

一体私は何色だったかしら

鏡を見ても夢は映らない

かえって些細なことで

自分を見失うことになるのですから

期待は甘い毒です

こんな具合で十代の自分に言い聞かせてやりたい

言葉たちが増えていくのです


「私は大丈夫だから」

何度も口にした言葉に絡め取られてしまって

空気が額を逆行する

私は今日も大丈夫です、いや本当に、

可愛くないほどに、恐ろしいほどに

私は大丈夫過ぎて目眩がしそう

だっていつもそんな顔

「はい、じゃあこれから弱音をはきます」、独り

弱いはずの自分のために白い陶器の洗面台

ありったけを吐いて流したら

人生じゃ足りないくらい

汚れてしまう、きっと私が


何者でもないなんてみんな言うけれど本当ですか

クリーニングに出したあとのシャツのように白々しい他人は

それなのにカラフルなんてずるくないでしょうか

どうせしばらくは生きている身体

何をしても私の体は私をまだ許してくれるようなので

一先ず今日は寝ます

夢で会いたい人なんて限られているけれど

夢をいつ見られるかも限られていてそんな時間も

私は私で居続けようとしている

独楽みたい


かすかに聞こえる警告音を子守唄にしてまぶたを閉じた

つないでつながって、やっぱり私はここにいたんだって

相対的な現在地を人工知能は教えてくれない

知っていることだけが人間の証明なら私は人間じゃなくたっていい

いつか恋をする時には空気に漂う残響になったっていい

誰かにすっと掬いあげられるような全部はいらない

君にも全部なんて教えてあげない、私も知らない

ここからここまでが今日です、そしてここが明日です

私へ、明日の私へ


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