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夢の話を聞いて欲しい

3
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#短編小説

夢の話を聞いて欲しい 3

夢の話を聞いて欲しい 3

結局のところ、彼女とどのような会話をしたのか、残念ながら私は覚えていない。一つだけ覚えているのは、私達は用意された料理にほとんど手つけないまま、ログハウスを後にしたことくらいだ。それは、思わず会話が盛りがってしまったからだ、とか、料理がひどいものだったからだ、とかではなかったと思う。何故なら私は、不意に立ち上がりどこかへ歩いていく彼女を追いかけるようにその場を立ち去ったのだから。

ログハウスを出

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夢の話を聞いて欲しい 2

夢の話を聞いて欲しい 2

彼女と並んで、昇降口を出た。

沢山話したいことがあるはずなのに、私達は何も語らないまま、昇降口の裏にある職員用の駐車場へ向かって歩いていった。

途中、不意に私の右腕に彼女は両腕を絡めた。

人が減った放課後とはいえ、校内でこんなことをしてもいいのか、と不安に思ったが、彼女は何も言わずそのまま歩いていった。校舎の窓から、いくつもの視線が、私達二人を射抜く気配がした。すると彼女は、一層きつく私の腕

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夢の話を聞いて欲しい 1

夢の話を聞いて欲しい 1

夢をみた。

明け方まで仕事をした日の、3時間に満たない仮眠の間のことだった。

私は中学校と思われる建物の中、1人で教室の入り口に立っていた。

外は少し曇っていたように思う。

他の教室から特段声は聞こえない。昼休みや休憩時間ではなく、放課後だったのであろう。

(そして私の思い出す放課後は何故かいつも厚い雲に覆われた空だ)

教室の中には数人の生徒に囲まれた女性教師がいた。セーラー服を着た女

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