【超短小説】年雄とよく喋る店員

年雄が行く近所のコンビニに、若い店員が入った。

よく喋る。

店員どうしで。

コンビニに入った瞬間から話し声が聞こえてくる。

そこそこのボリュームで話しているから、内容がよく聞こえる。

仕事の話ではない。

「絶対高い方がいいって」

「でも、プラス4000円ですよ」

「4000円であのスペックが付いてくるんだって」

「いやー、4000円か・・・。そのスペックいります?」

「絶対いる!買ったあと分かるって!スペックの良さが!」

年雄はポテトチップスをレジに出した。

「マジでスペック最高だから」

「いるかなー?」

「いる!絶対いる!スペック!」

年雄は話をやめない店員に聞こえるように咳払いをした。

「あのスペックがたった4000円って考えた方がいいって」

"ピッ"

店員は話ながらバーコードを読み込んだ。

年雄は150円レジに置いた。

「マジでスペック!スペックすげーから!」

年雄はコンビニを出た。

結局、一度も店員と目が合わなかった。

夢中になるってすげーな。

浜本年雄40歳。

若い時は、何でも夢中になればいい。

俺のいない所で。

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