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短読13 ございます。(イルカ)(タラコ)/灰色の安土桃山時代で練習

はじめに

13首目は、Kさんの歌です。ご投稿ありがとうございました。意味のよくわからない歌をどうイメージしていくかについて考えました。どうぞよろしくお願いします。

ございます。(イルカ)(タラコ)/灰色の安土桃山時代で練習

K

まず読んで思ったこと

 この短歌を読んだときに、すごい困ったなぁというか、苦手なタイプの作品が来たなあと思いました。詩を解釈する上で、やり方としてはまず書かれている意味、例えばこの作品が言いたいこととかストーリーをどういう風に汲むか、追っていくかっていうのが一つやり方としてあって。もう一つ、書かれている言葉のイメージをどうやって拾って、(作品の)世界観みたいなものを読んでいくかっていうところがあるかなーって思うんですけど。この歌の場合は、後者になってくる(イメージを拾って読む方法をする)のかなって思いました。
 一見して、やっぱり意味みたいなものはよく分からなくて、結構記号が多いですよね。記号が多いってことは、書かれてるものが少ない、情報が少ないって一瞬思ったりもするんだけど、正確に言うとその言葉は私たちが普段使っている言葉じゃないやり方で情報を伝えてくる、何かしらの指示をしてきているから、意外とこの歌は指示がなされている短歌なのではないかと思いました。
 それで何度かこの歌を口に出して読んでいったときに、私の中では発声練習みたいだな、〈ございます。〉ということがあって、〈(イルカ)(タラコ)〉っていう文字列が続いていく。最終的に〈練習〉って言ってるから、なんか練習してるんだなって思うと、言葉を発する練習なのかなって思いました。イルカ・タラコはなんなんだろう。人物(名)みたいにも見えますね。蘇我入鹿っていたと思うんですけど。タラコも「こ」がつくから人物名みたいに見えてくるかもしれない。
 下の句、三句目以降が〈灰色の安土桃山時代で練習〉ってあるんですけど。まず安土桃山時代っていうのは結構豪華絢爛な、戦国時代の派手な時期だと思っていて。でもそれが灰色だから、意外と楽しくないのかもなーって思いました。結局何を追っていくといいんだろうな。ここに書かれたリズム感でテンションを上げていくといい歌なんだろうかって今のところ考えています。

さらに読む

 この歌には「変な歌ですねぇ」と言ってウケて笑うことが一番大事な気がしています。「なんだこれ!?」と思うものには、それを理解するためにどうしても読み筋(一貫したストーリーや意味)を追いたくなってしまうのですが、むしろわからないなりに、気楽に読者も自由に楽しんでみることがいいように思いました。
 個人的に面白かったのは、本来7音である2句目が〈(イルカ)(タラコ)〉と6音になっているのに、「イルカ・タラコ」のように、イルカとタラコの間でブレスが入ルことで7音ぽく見せかけているところです。リズムというのは、反復したりズラしたりすることで、動きを生む効果があるように思います。[iua-aao]のaの音の明るさが、どことなく開放的で可愛らしさを備えたポジティブなニュアンスがあるのも目立ちます。
 〈練習〉というのは、結局本番ではないから公には見えないところでするのが基本だと思う。でもその直前にやっていること(初句と2句目に書かれていること)はなんかよくわからないし、でもそれを本気でやらないといけないような感じの理不尽さが、一種〈灰色〉なのかもしれないし、血なまぐさい戦いに巻き込まれないといけない時代が選ばれているのも、自分にはどうにもできない理不尽さとして立ち上がりそうな気がしました。ここは固有名詞のイメージが解釈をピックアップしてくれている感じもします
 記号のことをもう少し書きたかったんだけど、〈ございます。〉〈(イルカ)(タラコ)〉〈/〉、は読み上げるときの指示という感じが強い以外に思いつかず、それはつまり記号で伝達するときは、何かのルールに基づく必要があるということでもあるのかなあとか思います。
 自分の内で展開されたイメージのままに連ねた言葉を、短歌という形式に載せて読者に手渡したとき、それがどういう広がり方をするのか聞くというのも詩の面白さだなあと思います。

企画趣旨はこちらから

https://note.com/harecono/n/n744d4c605855


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