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雲上の露天風呂 北アルプス白馬鑓温泉に行った話

2019年9月 白馬三山縦走1日目。登山口である猿倉から歩いて4時間あまり。標高2100mの白馬鑓温泉まであと少し。

硫黄の匂いと滑りを帯びた石で、目的地がいよいよ近くなってきたことを知る。
勢いよく水路のような溝を流れる水から湯気が出ている。触ってみるとたしかに暖かい。途切れなく続く湯量の豊富さに、期待で胸が膨らんだ。

白馬岳の優美な姿を見たい、せっかく行くのだから三山回りたいと決めた今回の山行。ルートを決めた後に、宿泊場所である白馬鑓小屋に100%源泉掛け流し、開放感にあふれる露天風呂があると後から知って、まずは白馬鑓温泉が第一のメインになった。

テント場の受付を済ませ、いそいそとお風呂の準備をする。山荘の一段下にあった露天風呂は、屋根無し、囲いなし、斜面にあるため遠くの山々までパノラマを見渡せる、驚くほど開放的なお風呂だった。つまりその反面、周りからも丸見えなのだが。

さらに女性にとってハードルが高いのが、メイン風呂は混浴という点。別に一つ女性専用風呂もあるので覗いてみると、板壁で完全に覆われ、半分屋根もついているので、覗き防止対策は完璧だが開放感が劣る。広さも6人が足を伸ばして入れるくらいで狭くはないが、とにかく壁により閉塞感がある。

夜に1時間ほど、混浴風呂を女性専用にしてくれる時間があるが、すぐそばに温泉があるというのに、そこまで待つのは耐えられない(この時まだ午後1時)し、明るいうちに景色を見ながらつかりたい。

唯一の救いは、水着着用が許されているということ。しかしだ。男性は誰も水着は来てない。むしろ隠してもない人もいる。そして入浴中の女性は誰もいない。圧倒的なアウェー感とはこういうことを言うのだろう。

でも入りたい。意を決して、女性専用の脱衣所を使い、スポーツブラとショートパンツの姿で乗り込んだ。脱衣所からメイン風呂の間に、山荘に続く通路があるので、普通に着衣をした人とすれ違うのがまず恥ずかしい。

先客は男性が5人ほど。幾ばくかの気まずさが漂うが、端っこで大人しく気配を消して、お湯に肩を沈めた。

青空の下、遠くの山々や雲を眺め、自然の音に包まれながら、暖かいお湯に身を預けると、重いザックに縮こまっていた体がどんどんほぐれていく。
体が熱くなったら、ヘリに腰掛ければ、涼しい風が体を冷やしてくれる。標高が高いゆえの寒暖差が心地よい。

結局、その後女性専用風呂にも行き、貸し切りなこともあり、今度は周りの目線を一切気にせずのびのびとお湯につかる。あっという間に1時間以上が経っていた。

その後テントに戻って昼食を食べ、昼寝をした後女性専用風呂に、夕食後は女性専用時間に露天風呂に、と3回温泉を堪能し、ほかほかの状態で寝袋に潜り込んだ。

翌日は出発が早いため朝風呂は出来なかったが、朝日が上がった時に温泉からは歓声が上がっていた。

今日も良い天気になりそうだ。硫黄臭が染み付いたスポーツブラとショートパンツを、乾かすためにザックにくくりつけ、次の目的地、白馬鑓ヶ岳に足を進めた。


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