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(夢)日記:「イデタタスコーヒー」(2023/1/15)
今日は長くなるので、先に曲紹介をやっておく。聴きながら読んで貰えればばいいかと。(スマホの人は知らん)
■今日聴いた曲紹介
Alice Coltrane - Blue Nile
ジョン・コルトレーンの妻でハープ奏者のアリス・コルトレーンの名曲。スピリチュアル・ジャズ。フルートはファラオ・サンダース。
日記書くのサボって寝ていたら奇妙な夢を見たので今日はそれを日記の代わりとする。
(ちなみに覚えている限りではこれが初夢)
話の抜け落ちた部分などに脚色も交えて書き込んでいたら、短編小説ぐらいの長さになってしまった。
夢の話故に、矛盾点や話の荒唐無稽さには目をつぶってくれ...。
夢の中で俺はフリーの記者をやっていた。いや記者といっても、聞いてすぐに思い浮かぶそれではない。言うなれば、光の記者に情報を売る闇の記者。企業の隠す情報、秘密裏に開発中の新技術、そんな貴重な情報を集めるため、(何故かどこも常夏の)世界をあちこち飛び回っていた。
夢の物語はここから始まる。俺はでかい一仕事を終え、「次は何を狙おうか、こんな大事をやったからにはもう派手には動けないぞ」と思索していた。そこに一通のメールが届く。それは昔の友人からだった。
「おもしろい仕事をしている。今度遊びに来ないか?」そんな意味合いの事が書かれていた。そうだな、たまには休暇も悪くない。幸い予定らしい予定は入っていない。メールには二つ返事を返し、俺はさっそく飛行機でとある島まで飛んだ。
十数年ぶりにあった彼は、別人のようだった。肌は黒く焼け、髪の色は抜け落ち、まるで元日本人とは思えない風体をしていた。加えて特徴的なのがその引き締まった体格だ。趣味で鍛えた程度で身につく物とは違う、何か特別な運動にだけ特化した無駄のない筋肉。「おもしろい仕事」というのが肉体労働である事は見て取れた。
彼に案内されるまま、港から歩いて島の中心部へ。ここデロンギ島は人口1000人に満たない小さな島だ。中心地には電気が来ており、青果店や雑多な屋台、レンガ造りの家も見受けられるが、そこから少し離れると掘っ建て小屋のような家が木々の間に埋もれている。全くとんだ辺境に御招待してくれたものだ。
「もうすぐ日が暮れてきそうな時間だが、夜はキャンプファイヤーでもやるのか?」
「馬鹿言え、燃料が勿体ない。資源は限られてんだよ、お前にもさっさと寝てもらうからな。」
彼はこの島で既に大家族を築いていた。奥さんが2人に子供が7人。天涯孤独の身な俺とは全くの対照だ。レンガの家の中、言葉の通じない彼の家族達が運んでくれる手料理を食べる。その日は仕事の事を聞いても「明日になれば分かる」の一点張りで、ついに聞き出すことは出来なかった。
次の朝、といってもまだ暗い午前5時。彼は「これから仕事だ」と言う。まだ鳥も鳴いていない。虫の声だけが響く闇の中へ(家族を起こさぬよう静かに)飛び出した。
灯りのひとつもない真っ暗な道。
この島が現代の文明から分断されている要因の一つが、島を取り囲む断崖絶壁だ。小さな港のある唯一の砂浜以外は、切り立った高い崖が垂直に伸びている。彼に連れられて歩くうちに、波が岩にぶつかる音が強くなる。どうやら海に向かっているようだった。
崖際に着くや否や、彼はなにやら準備を始めた。不自然に1本立った太い杭にロープを巻き付けていく。やはり崖を降りるつもりらしい。俺はそこまで付き合ってやるつもりは無い。準備を終えて海の方を見つめる彼に訊ねる。
「教えてくれ、下に何があるんだ?」答えは返ってこない。代わりに、
「もうクライミングやらないのか?」そう聞いてきた。そういえば、こいつと初めて出会ったのは、大学のクライミングサークルだった。
「そんなの大学辞めた時からやってねーよ」
「なら黙って見てな」
午前6時を少し回った頃、それまで目に痛い程強く吹いていた風がピタリと止んだ。凪だ。波の音も次第に弱まっていく。そうか、これを待っていたのか。彼は何も言わず、慣れた手つきで黒い崖をスルスルと降りていった…。
崖を降り姿が見えなくなってから40分以上経った。もういい加減待ってられない。耐えかねて下を覗きこむと、すぐ側に腕が伸びていた。「うわっ」驚いて声がでてしまう。
「ちょうどいい、引きあげてくれ。」
片手と足をロープに絡ませ、もう片方の手で彼を引っ張りあげた。力仕事に慣れていない俺は肩で息をする。
「ありがとう。これだけ崖が高いポイントで挑戦するのは初めてだったんだ。思ったより乳酸が溜まって、登るのに時間がかかった。」
その割に、息も切れておらず疲れているようには見えない。
「それで?一体なんだってこんな事してるんだ?」
彼はニヤリと笑って、パンパンに膨れた麻の袋を見せつけてきた。
「これだよ。」
袋には、赤いコーヒー豆がぎっしりと詰まっていた。
家に戻ってくるなり、奥さんの1人が、焙煎済みの豆を使ってコーヒーを淹れてくれた。淹れたてのコーヒーを見ると、何故かぷくぷくと泡が出ている。
「この豆はな、世界中でここでしか取れない。貴重な豆だ。昔からこの島では伝統的に、結婚や成人の儀式の日、子供が生まれた日なんかにこれが飲まれてきた。」
朝のだんまりが嘘のように、彼は続けて語る。
「泡が出てるだろう。シャンパンと同じで発酵してるんだ。つまり天然の炭酸コーヒーだ。」
一口飲むと、独特な酸味と炭酸の刺激が心地良い初めての味わいが、口の中に広がった。
「島の言葉でイデタタス・コーヒーって言うんだ。これは神の飲み物さ。島の民だけが、これを収穫できる。」
島での出来事から約1年。記事のネタに困っていた俺は、この事を思い出し、記事にしてネットに公開した。自分の発信する情報の影響力も気にせず、軽はずみだった。
とあるコーヒー製造の大手企業が、その情報に飛びついた。企業はすぐさま島の調査を開始した。その後重機で崖をえぐり人が歩けるスペースを作り、大規模な豆の収穫を行った。企業が持ち帰った豆から、品種改良が成功し、一年後にはあの時のコーヒーと同じ物が普通にスーパー等で売られるまでになってしまった。
一方で、崖をえぐられた島は、コーヒーの木は枯れ果て、雨や波による侵食が進み、崖崩れ土砂崩れが頻発した。
島の伝統は失われた。仕事を失った友人は、家族を養うために漁師になったらしい。しかし元々島の近海は波が激しく、魚が取れないために、島に漁師はほとんどいなかったはずだ。俺のせいで苦労を強いられているのだ。あんな記事を公開しなければ。俺は謝罪のためにまた島を訪れた。
約3年ぶりに会った彼は、見た目に変わった様子はなかった。
「俺は怒っていない。心配するな。」
港で開口1番そう言われた。しかし島の中まで入れることは出来ないと言う。
「崖崩れが起こってからは、よそ者は島に入れなくなったのさ。神の怒りを買ったとか言ってな。でも俺はいいんだ、漁師になって色々苦労することもあるけど、気にしてない。」
謝罪は全く聞きいれてもらえなかった。
結局俺は謝る他に何もすることが出来ず、来た時の船でそのまま帰ることになった。
帰りの船の中で俺は記者を辞めることを決めた。
~fin~
長ぇわ。
炭酸のコーヒーってほんとにあるのかなって調べたら「炭酸 コーヒー まずい」ってサジェストが出てきた。そりゃそうだろうな。
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島の名前、様子はだいたい脚色
たまにしか夢を見ないけど、見るとこういう物語的な夢ばかり。後味の悪い話も多い。今まで1番嫌だったのは、自分はスパイ組織の一員で、組織の裏切り者を見つけ出し、駅のホームで電車に突き飛ばして殺すっていう夢。
なんなんだろね。
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