図書館の”気になるクラシックCD”を、いろいろ聴いてみる #5
気になるクラシックCDを探して聴いてみる。今回はブラジルの大作を聴いてみた。
「ブラジル風バッハ」
ブラジルの作曲家である、ヴィラ=ロボスの代表作。
全部で第9番まである大作だが、有名な第5番以外はほとんど聴かれる機会がない。
私も、まだその全曲を聴いたことはなかった。
「ブラジル風バッハ」
そのタイトルから私が長い間、想像してきたことは
「クラシック音楽の父ともいわれるバッハが、もし、ブラジルで生まれていたら、こんな音楽を作っただろう。」
そうヴィラ=ロボスは思って、この作品を作曲したのだろう。
バッハ風のしっかりとした土台にブラジルの風味を加えて、というニュアンス。
そう、長い間、想像してきた。
しかし、実際は大きく異なっていた。
ブラジル風味、どころか、ブラジルそのものを感じた。
今回、この作品を聴くきっかけとなったのは、先日聴いたナタリー・デセイの「ヴォカリーズ」というCD。
「ブラジル風バッハ」もヴォカリーズで歌われる名曲だけど、そのCDには入っていなかった。
前述した「有名な第5番」がそれで、ソプラノがヴォカリーズで、とても印象的な旋律を歌う。
全曲も聴いたことがなかったな。。。
ということで「有名な第5番」も含め、全曲を聴くことにした。
図書館には「もちろん」全曲集があった。
CD3枚組の大物だ。
「ブラジル風バッハ」全曲
指揮:エンリケ・バティス
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ソプラノ:バーバラ・ヘンドリックス
他
まず、「有名な第5番」から聴いてみることにした。
チェロのピチカートに続き、美しく、甘く、そして、哀愁が漂うソプラノのヴォカリーズが、チェロのアンサンブルをバックにやさしく流れる。
これまでも何度か聴いた、耳になじんだ旋律だが、「バッハ感」は感じさせないもので、これまで「ブラジル風バッハ」の1曲、とは認識していたが、疑問に思ってこなかったことを、今更気が付く。
ブラジル音楽のうちの何かをベースにしたものであろう。
けれど、それよりもシャンソンに近い感じがするな。
というのが、今回新たに発見したこと。
ヴォカリーズに続き、歌詞が歌われるところが出てくるのだが、このあたりが特にシャンソンっぽい感じがしてならない。
女性の思いが、心の奥底から吐露されるような。。。
ヴィラ=ロボスは、パリでも勉強をしていたので、もしかしたらその時に影響を受けたのかもしれない。
それにしても、グッと心を掴まれるような哀愁。
続く第2曲目「踊り」は打って変わって、変化が激しい、情熱的なブラジルを感じさせるものになる。
第2番にある「カイピラの小さな汽車」は、汽車が走る様子が音楽で表される作品。
同じように汽車が走る様子を表した作品に、オネゲルの「パシフィック231」というものがあるが、鋼鉄の重い塊がものすごい勢いで走り出す様は迫力があり、怖さも感じるのだが、「カイピラの小さな汽車」は本当にちっちゃな汽車が、一生懸命走る様子が表される。臨場感もこちらのほうが強く感じることができる。
バッハ感が全くなかったわけではない。
第7番と第8番。特にフーガの部分は確かにバッハ感があって、なぜかちょっと驚いた。
今回、第5番以外も含め、この大作をはじめて一度に聴き切った。
ブラジルのヴィラ=ロボスの作品、そのものであった「ブラジル風バッハ」。
ヴィラ=ロボスは、ブラジルの各地、各民族の音楽を元にして、現代音楽も含め、そのニュアンスをうまく生かしたうえで、まとめて作品にした。
「ブラジル音楽」とさっきから書いてはいるが、よく知っているのは、せいぜいサンバ、ボサノバくらい。
もっともっと、奥深いブラジル音楽の世界があることを、「ブラジル風バッハ」は気が付させてくれた。
それにしても、ブラジルは、リオのカーニバルで演奏されるサンバのように、太陽いっぱいで明るいイメージがある。
でも、ボサノバもそうだし、ショーロもそうだし、「有名な第5番」もそうだし、こころがグッと掴まれるような、切なさ、哀愁は、どこから来るものなのだろうか?
これは現地へ赴かないとわからないのかもしれない。
いつか行ってみたい
ブラジル。
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