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コミュニティマネージャー5年目の決断。

「前田デザイン室との関わり方を変えたいです」
「8月から、運営チームのリーダーはやめます」

前田デザイン室の室長であり、会社の社長でもある前田さんにこう申し出ました。

この度、クリエイター集団「前田デザイン室(通称:前デ)」の運営チームリーダーから、コミュニティマネージャーになった浜田綾です。普段は、前田デザイン室を運営している株式会社NASUで、編集・PR・コミュニティマネージャーとして仕事をしています。


今回の体制の変更を図に表すとこんな感じ。

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この変化について、9割の人にとって「ふーん」で終わる話でしょう。残りの1割の方も「わざわざ役割を変えるって、偉くなりたいってこと?」かと思う方がいるかもしれません。

どう感じるかは自由なのですが、私なりに考え抜いて覚悟を持っての決断でした。ちょうどコミュニティマネージャー的な役割をするようになって、今年で5年目。そこに至るまでの気持ちの流れを書いてみます。


コミュニティ運営から逃げたい。

実は去年の後半は、運営チームから離れようか、いや、前田デザイン室をやめた方がいいのか…。とにかくこの苦しみから逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。

去年といえば、前デの入会者を増やすために稼働すべきことが増えました。他方で、偶然その時行っていたプロジェクトで、揉め事も増えました。その中のいくつかは、私の対応がよくなくて招いたこともあります。ただ、運営チームの立場的に言わざるを得ないからやっていることでも、そも跳ね返りは私に来る。立場的に仕方がないとはいえ、自分の中の許容量を超えてしまいました。


なんで、ここまでしないといけないの?

つい最近まで私の前田デザイン室での活動は、NASUにおいて仕事ではありませんでした。仕事とコミュニティの間とでも言いましょうか、ちょっと曖昧な位置付けでした。だけど、仕事並の責任と稼働が増えた。周りからは仕事でやってるような立ち位置を求められて我慢することも増えた。けれど、私にとっても前田デザイン室運営チームの活動は仕事じゃない。


正直、仕事じゃないコミュニティでの活動において、なんでここまでやらないといけないわけ? のピークだったんだと思います。


とにかく逃げたい。
この苦しみから逃れたい。


運営チームを離れてイチメンバーに戻れば、こんなに悩んだり、苦しむことから解放される
。今思えば逃げですし、そんなに嫌ならやめればいいやん!って思いますよね。

なんでやめなかったんだろう……。
(自分でもわからなくなる)

多分、まずはそもそも私は前田デザイン室のこともNASUのことも嫌いじゃないし、むしろ大好きだから。離れたいのはコミュニティ運営の立場だけ。職務なら放棄できないけど、これは仕事じゃないんですよね。とはいえ、簡単にやめてしまうのは、あまりにも自分勝手じゃないですか。

それから、私が運営チームを離れたとして、誰がこの役割を引き受けてくれるのだろうか……。きっと後に引き受ける人も「綾さんと同じくらい動かないといけないのか? 」とか思うじゃないですか。考えすぎですかね? でも少なからずそういう気持ちになると思います。それがわかってるのに、放り投げることはできない。


コミュニティを運営している会社に入社して。

前デが大好きで立ち上げ当初から、前田さんと一緒にコミュニティを作ってきたのに、なんでこうなったのか? それは、2021年にフリーランスから、前田デザイン室を運営する株式会社NASUに入社したことです。

入社時のインタビューでの一コマ。人文字で「ナス」を表しています。


NASUにおいて、今でこそ編集と広報、コミュニティなど多岐に渡ってお仕事していますが、入社当初はコミュニティ事業の担当者の位置付けが大きかったのです。

ただ、それは他の企業のコミュニティ運営をお手伝いするという意味合いだったので、前田デザイン室はその一つに過ぎないし、もっと言うなら入社当初は、私は前田デザイン室の運営チームを離れていました。もちろん自社のコミュニティだから、関係ないですと言うつもりはなかったけど、私としてはあくまで当時の運営チームを尊重したいと考えていました。


今までと同じじゃいられない。


ただ、やっぱり今までとは同じではいられないんですよね。


まず、私自身の気持ちの問題。私としては、当時の運営チームを立てたいから、自分が前に出すぎるとやる気をそ削いでしまうのではないか?と考えていて、どこまで関わるべきか悩んだりもしました。

それから、責任と稼働量。喜ばしいことなのですが、前デの規模が大きくなってコミュニティ内のことだけでは完結できないことが増えてきました。責任が増して稼働が増えること自体は嫌だとは感じてなかったのだけど、稼働量が増えると相対的にこれまでのようにメンバーとしてプロジェクトを楽しむゆとりはなくなりました。

加えて、周りからの見る目が変わりました。これが一番大変だったし、私自身の自覚が伴うまでに時間がかかりました。私はNASUに入った後も、私も前デメンバーであり、運営チームメンバーの浜田綾のままでした。でも、みんなはそうではない。メンバーというよりも、前田デザイン室を運営している NASUの人で、コミュニティ運営をメインでやってる綾さん。だから私の発言と行動は、昔よりもうんと重たくなっている。NASUに入ることで、その見え方が強くなったんだと思います。


そういう変化をわかってないまま、やるべきことと耐えること増えたので、我慢の限界がピークに達したのでしょう。今思えば結局は私の自覚の問題なのですが、去年の段階では受け止められる度量がありませんでした。


前田デザイン室をぶっこわす。

前田さんと前デのことを話すたびに言い合うことが増えたし、私も前田デザイン室を楽しめてない。前田さんもそうだったと思います。前デは、ものづくりの楽しさを思い出すためのコミュニティである。それなのに、中の人間が楽しめていないのは全然良くない


そういう経緯もあって、前田デザイン室は今年2022年の1月から、サービス的な活動は自主性で動きたい人がやるという、シンプル化期間に入りました。前田さんは、この頃「前田デザイン室をぶっこわします」というnoteを書いています。本当にぶっこわすくらいの勢いだったんだと思います。

https://note.com/tmaeda/n/n90a87cfef18b

私は…ぶっ壊れていいとは思わないけど、大きな変化が必要だ。そうじゃないと、このまま続けることはできないと感じていました。

私以外の人は、やることが多くてもそんなに困ってなかったのかもしれないのに、コミュニティの流れを大きく変えるきっかけを作ったので、前田さんやみなさんには申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でも、私にとって必要な期間でした。


コミュニティ運営は、やっぱり楽しい。

シンプル化期間に入り、物理的にやるべきことが減ったので、気持ちにもゆとりが持てるようになりました。少し距離をおいて前田デザイン室と接するようになって、私はやっぱりコミュニティ運営が好きだなと気づけたことが増えました。

まずは、プロジェクトでの躍進ですね。やっぱり前田デザイン室はものづくりをするコミュニティですから。例えば、DOTOWN

前田デザイン室史上一番バズったプロジェクトとなりました。SNSでの反響はもちろん、取材依頼も多数ありましたし、コラボレーションのオファーや規約の整理など今までにないことが必要になりました。私自身プロジェクトメンバーとしては関わっていませんが、コミュニティとして誇らしいし、取材が必要ならそのやりとりやチェックも喜んでしたいですから。


コミュニティに入って迷子になっている人向け診断ツール「NUKEDONE(ヌケダン)」もそう。STUDIO DESIGN AWARD 2021で「PARTY賞」を受賞しました。これもコミュニティとして光栄ですし、誇らしい。できることがあれば、なんでもやりますよ。

小説『負けるデザイン』、これは私も少し執筆していますし、そもそも私が最初に書いた話から始まってるのでプレイヤーとしても関わりましたが、EXODUSさんとのやりとりなど細かな対応はあるわけで。私ができることはやりますとも。

『マエボン3』や「24時間マエダテレビ2」もそう。前代未聞の24時間限定クラウドファンディングを実施したり、CAMPFIREさんやPARK by CAMPFIREさんの会場をお借りしてのイベント運営だったので、間に入って調整する人が必要でしたから、喜んでその役割を買って出ました。


プロジェクトがコミュニティの外を飛び出して社会と接点を持つ際に広がってゆくために必要となること。そしてそれは、めちゃくちゃ裏方なのだけど、それなりにスピードと責任が必要である。それはもう、私が運営チームを離れても私が引き受けることになるでしょう。嫌な言い方をすれば逃れられないのだけど、別に私はそれらが嫌なわけじゃないです。むしろ好きです。


それから、コミュニティメンバーの変化を感じる機会が増えたこともよかった。中でも入会者が増えたらいいなの一環で始めた「前デメンバーに前デの過ごし方を聞く」スペース企画は、私にとってとてもよい機会となりました。このスペースでお話した人は、全員自分なりの過ごし方を持っていて生き生きしてるんですよね。そういう話を聞くのが私自身嬉しくて。


私にとっては美味しいご飯を食べるのと同じくらい、前デの過ごし方を聞くのが楽しいし嬉しい。みんながそんなふうに感じているのであれば、やっぱり自分ができることをしたい。この場所を守りたい。



前デの運営チームを離れるのはやめよう。
私はコミュニティ運営が好きじゃないか。


苦しいと感じたのは、求められるのは仕事並の対応なのに、実態は仕事じゃないから
。だったら仕事だと思ってやればいい。すでにそれくらいの責任感と稼働なんだから。でもそれは楽しんでいないという意味ではなく、コミュニティを運営していく上での重みを喜んでしっかりと抱えられる体制にしたい。


そういう経緯があって、運営チームリーダーからコミュニティマネージャーになりました。私は仕事と同じくらいの責任と覚悟を持って、前田デザイン室と関わっていきます。その決意の表れとして役割を変えました。コミュニティマネージャーとしていますが、正直呼び名はなんでもよかったんです。今までと違うよってことが示せればなんでも。

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別に役割を変えなくても、「私にとっては仕事として対応します」といえば済む問題では? と思うけど、4年以上やってきたことをガラッと変えるのは難しいもので。そうでもしないと、私は弱いし、甘ったれだし、すぐ楽な方に流れてしまいそうだから。

それと、私は「器が人を作る」と考えています。社長になったら自然と社長の器になる。リーダーになったらリーダーの器に…。器を変えることで、中の人間の意識も変わるはず。私はコミュニティマネージャーと名乗ることで、コミュニティマネージャーの器になろう、そう決意しました。


「必要悪」にならないといけない?

そう意気込んでいたのですが、先日株式会社ラブソルの代表 柴山 由香さんとお話する機会がありました。由香さんといえば、私が箕輪編集室の運営チームにいた時の運営チームリーダーで、私は由香さんからコミュニティ運営の多くを学んでいます。コミュニティにおけるメンターのような存在です。

上段左が、柴山 由香さん。


世間話的な話の延長線上で、今回の気持ちの変化についても話しました。すると由香さんからこんな言葉が。

「運営チームって必要悪なところがあるよね。立場的に言わないといけないことも多々ある。でもいなくなるとコミュニティは回らなくなる」と。

ほんとそうなんですよね。わかるわぁ、と納得すると同時に、きゅぅっと胸の奥が締め付けられる思いがしました。だって私が今からやろうとしていることは、その必要悪を自ら率先してやるということだから。

そんなのわかっていたことなのに。

由香さん的には多分、特に深い意味はなくさらっとおっしゃったんだと思うのだけど、「あなたがやろうとしていることはそういうことだよ。覚悟はあるの? 」(言われたわけではなく、私がそう捉えました)と問うてもらった気がして、いい機会となりました。


覚悟……、あります。だから役割を変えたのだから。私は前田デザイン室のことを大切に思っています。多分前田さんの次に、いや、時に同じくらい大切に思っています。でも、正直完璧に役割を全うできるのか、その自信はないです。「やれるって言えよ、仕事なんだろ!」と突っ込まれそうですが。だって、仕事になったとしても、コミュニティ運営をやっていくことで辛いことや嫌なことは0にはならないでしょうから。繰り返しますが、私は弱いし、甘ったれだし、すぐ楽な方に流れてしまうから。


だから、そんな未熟で不完全な私でもコミュニティ運営を楽しめる改善をしました。楽しめていないなら、楽しめるように変える工夫が今まで足りていなかったと気づいたからです。


リニューアルした前田デザイン室では審査制度を導入させてもらいます。これまでの経験則で言うと、揉め事の大半は、前田デザイン室にサードプレイス以上の機能を求められた時です。(念の為に言うと、そんなに数は多くないですよ)なるべく楽しめる場所を作りたいですから。そこには労力を割いてでもやりたい。

今日早速審査をさせてもらったのですが、めちゃくちゃ楽しかったです。一回喋った状態で入会していただくのっていいなと感じているところです。

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それから、運営チームだけではなく、NASUの他のメンバーにも運営補佐という形で前田デザイン室の運営体制の一員として関わってもらうようにしました。重たい荷物(という言い方は適切じゃないけど)も、みんなで運べば少しは軽くなるじゃないですか。これも私と同じく、今までも運営チーム的な役割と時にNASUのみんなにお願いすることはしばしばあったので、実態に合わせて見える化したというイメージです。

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それから、8月から運営チームリーダーをいちろーさんにお願いすることになりました。今までと大きくは変わらないのだけど、リーダーはいちろーさんで、私はより管理者寄りになります。いちろーさんは、私にはない大人の見守り力というか、懐の深さがあります。コミュニティ運営にとってかなり大事なことです。

新、運営チームリーダーの「いちろー」さん。

私がいるとはいえ、運営チームメンバーとリーダーでは、重たさが違うでしょう。でも、リーダーになることで見えるものがあるんです。山登りもそうじゃないですか、大変だけど山頂に登ってみるとそこからの景色は美しい。それは登ったものにしか味わえない。それと同じです。責任が増すことで大変なことは絶対あります。でもそれを経て見えるものは絶対あるから。

私はお節介だから、自分が経験してよかったことは他の人にも経験して欲しいですし、なにより同じ景色を見ている仲間を増やしたいのです。いちろーさんが、この役割を引き受けてくれたことを、とてもありがたく思っています。


長々と書いてきたけど、今思えば、例え仕事じゃなかったとしても仕事と同じくらいの気持ちで自社コミュニティと接することなんて、NASUに入った時からそういう気持ちを持つべきだったのかもしれない。でも私はそこに至るまで2年以上かかってしまいました。前田さんからは、役割についてこうしろと言われたことはなく、いつも私がこうしたいと言ったことを尊重してもらって感謝しています。


コミュニティマネージャー的な役割を引き受けるようになって、今年で5年目。ようやく本当の意味でコミュニティマネージャーになれたのかもしれません。


今の私は、コミュニティ運営が楽しい。

8月の定例会にて。OSIRO杉山さんからコミュニティの話をたくさん聞けてワクワク。


心から前田デザイン室を楽しんでいます

前デメンバーとミノペンへ。サウナとBBQで大人の青春を味わってきました^^



今まで以上にデザインの楽しさを思い出せる場づくりを本気で取り組んでいいくので、ぜひ気になった方は前田デザイン室で会いたいです。お待ちしています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




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私がコミュニティマネージャーを務めるクリエイター集団「前田デザイン室」では、新しいメンバーを募集しています。8月からは、前田デザイン室に入会できるのは4ヶ月に1回とさせていただきます。また、入会に際して審査を受けていただきます。(デザインの技能ではなく、前田デザイン室のカルチャーにあっているかどうかの意思確認です)今回の募集は8月20日(土)の23時59分で締め切ります。

今回以降だと、12月審査の1月入会になります。申し込みフォームはこちらから。


写真:Hayao Kimuraただのちひろよことも

(前田デザイン室のイベントは、写真撮影などメンバーの力で成り立っています。イベントにおいて私はメインの出演者でないことが大半ですが、こうして写真が残っているのは、メンバーのおかげです。ありがとうございます!!)

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