見出し画像

朝井リョウ『スター』感想

10/7に発売された『スター』を読み終えた。一気に読んでしまっては勿体ないという気持ちを抑えてどんどんページを進めていった。

ハァァァァア…と思わずため息が出る。幸せなため息だった。いつもどこかで思い切り裏切られるが今回は身構えて読んでいたからか、比較的ソフトな衝撃で済んだ。

公式のTwitterでは発売までのカウントダウンもあり、noteでは小出しに本編が読めた。続きが気になりすぎて手がつかなくなりそうだったので、今回はそのプロモーションに触れずに本作に触れた。先入観なく読みたかった。

いつからか朝井リョウという存在が、私の生活の一部となっている。

水曜日発売の『anan』の「紙のラジオ」も楽しみで仕方ない。日曜日の「ヨブンのこと」というラジオ番組もリスナーだ。

こんなに愉快でおしゃべりな人があんなに人の心をエグる作品を書いているのがはじめは信じられなかった。メディアへの露出も多い。本人は書き手があまり表舞台にでるのはちょっと…と、話すが読み手としては純粋に嬉しい。



以下、感想です。ネタバレを含みます。


とりあえず私にとってのスターは朝井リョウで間違いない。社会に対して言いたいことを、作品で表現してくれて言語化してくれる人はそうそういない。

とゆうかヒルドイド軟膏問題やYouTuber界隈の事情のことも異様に詳しい。広告収入の仕組みとか普通あんなに知らない。私もこの作品でYouTubeの動画に差し込まれる広告動画のタイミングとか回数についてやっと意識した。知らないところでこだわって作ってくれていた人がいたのだと思った。

無料でエクササイズ動画で毎晩運動している身としてハッとさせられた。そういえば動画の冒頭で少し長めの広告が入っても、途中で広告が入ることがない。エクササイズを変なところでとめられないように編集する時にこだわっていたのかと合点がいった。

後半の尚吾の恋人である千紗の言った言葉がずっと頭の中に響いている。

「星ってほんとうは星形じゃないよね」

読み終わってからみたプロモーションにも使われていた。どうゆうこと意味を指しているのかは読み終わったら分かる。

鮮やかに想像を飛び越えていく。そんな気持ちになれる。

今回の登場人物の中で、尚吾と紘の周りの人間関係で一番好きだと思ったのが千紗だった。恋人に対して色々と言いたいことがあるのだが、その場では言わずにいったん冷静になれるまで寝かせてから自分の意見が伝えられるところを見習いたい。大人だ。

紘の地元の描写も好きだ。まず方言が読んでて可愛い。桑原さんとのスピンオフでないかな…と若干期待してしまう。何者→何様の時みたいに…。


数年前に映画化された『何者』は観に行った。体質的に映画を見るとなぜか頭痛がしてしばらく体調が悪くなることも分かっていて、帰ってすぐに眠れるように一番遅い時間帯のものを観に行った。

あの時もスクリーンで有村架純が言った「私たちはもうそうゆうところまできたんだよ」というセリフが、足が止まりそうになった時に踏み出す勇気をくれる。

私はたぶん朝井リョウが書く女性のセリフに弱い。いつもどこかで背中を押されている。

どこかで心を守る盾になっている。

よりにもよって2度目の転職のタイミングだったため、就活をテーマにした作品はバシバシ刺さってきた。


2021年春に黒版の『正欲』(新潮社)から発売される予定であることも折り込みのチラシで発表された。

来春の楽しみが出来てとても嬉しい。そしてその折り込みチラシの裏には朝井先生が手書きでメッセージを添えてくれていた。毎回思うことだけど字がかっこいい。読みやすくて誠実そうだと勝手に想像してしまう。

帯に作家生活10周年記念プレゼントが抽選であたるというキャンペーンまでつけてくれていた。先着順ではないことは分かっていながらも、はやる気持ちを抑えきれず、昨日のうちにハガキに応募券を頑丈にテープで貼り付けてポストに投函した。どうか当たりますように。


あとこのエッセイが本当に好き。新刊を読む時以外はなんとなくこのエッセイを眠る前に読むのが習慣です。第3段のエッセイが出る事も期待してしまう。

今回の『スター』に出てくる眼科医もまさか繋がっている…?と思ってしまうほど朝井リョウに染まった生活を送っている。

小説に眼科医ってあんまり出てこないなと読み終わってふと思う。









この記事が参加している募集

無印良品のポチ菓子で書く気力を養っています。 お気に入りはブールドネージュです。