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障害VS障碍=障がい? 表記の違いから見る障がいへの考え方

障害という言葉。気づけば障碍やら障がいといった表記が現れ、今では「障がい」表記で見かけることがほとんどです。
「害」の字から受けるイメージや、障がいを個人と社会のどちらを主軸とした問題とするかによって意見が分かれ、現状としては一旦「障がい」表記にしましょうということになっています。

皆さんはこの「がい」問題、どのように捉えていらっしゃるでしょうか。今回はこの「しょうがい」表記についてのコラムです。
この記事では一般的な表記に倣い、説明で使用する以外は「障がい」表記させていただきます。

参考HP:内閣府ホームページ内第26回障がい者制度改革推進会議議事次第
参考資料:資料2「障害」の表記に関する検討結果について

「障害」「障碍」「障がい」の違い

「障害」「障碍」「障がい」と表記の違いはあれど、この3つの言葉は現時点でほとんど同じ意味です。では何故表記揺れが起こっているのか、簡単に説明していきます。

元々は「障碍(礙)/しょうげ」だった

障がいは元々「ものごとの発生・持続のさまたげになる」意味の仏教用語「障碍(礙)/しょうげ」でした。それが平安末期以降「さわり・障害」と少し意味合いが変わっていきます。
やがて明治時代に入ると「障碍(障礙)」を「しょうがい」と読む用例が現れ、「しょうがい」と「しょうげ」の読み方が混在するようになりました。そこで「障碍(礙)=しょうげ」、「障害=しょうがい」と使い分けるようになったのです。
そして戦後「当用漢字表」や「法令用語改 3 正例」により、「障害」のみが採用され今日に至ります

きっかけは常用漢字表の改定

「障害」表記が使用されてきたにも関わらず、「障碍」「障がい」の表記が浮上したきっかけは常用漢字表の改定です。「害」から来る障がい者への良くない印象が以前より注目されていたことから、使用頻度の低いため追加字種とならなかった「碍」にスポットライトが当たりました。
現在も検討会議が重ねられており、「害」「碍」どちらがふさわしいか、正しいかの決着がついていないため、ひとまずひらがなで「がい」を使う自治体が増えたのがこの問題の現状です。

「チャレンジド」などの新しい呼び方にも注目が集まっているようですので、5年、10年後にはもしかしたら「障碍・障害・障がい」という言葉は使われなくなるかもしれませんね。

各表記から見る「障がい」への考え方

「障がい」という単語一つを調べてみても、考え方の多様性があります。そして表記が違うだけでも、思った以上に障がいへの考え方をうかがい知ることが出来ました。

障害から見える考え方

障害の表記は、先述の通り法律上の呼び方(現在は「障がい」が主流)ですので、指摘されなければ特に意識しなかったという人も多いと思います。
そのため「害」という文字を敢えて避ける配慮がかえって差別感情を意識させてしまう危うさもあるでしょう。
また医学モデル=個人モデル(障がい者個人の問題)にしているとの意見もあります。つまり「障害者」には「制限がある人/さわりがある人」、「個人が解決する問題」というニュアンスが含まれているというのです。

障碍から見える考え方

障碍表記から見える考え方は、言葉・漢字を重視するものが目立つように思います。「障がい」という言葉の意味に「碍」の文字が適しているか否かですね。
また障害表記から感じ取れる「医学モデル」とは反対に、「制限は社会にある」とし、「障がいを社会全体で対応していく」社会モデルとして、肯定的に受け止める人も多い印象です。

障がいから見える考え方

障がい表記は「害」の文字が障がいを示すときに不適切だと考える自治体、企業、団体が採用している表記です。「害」か「碍」かその他の表記かでけ着が付かない現状では、そうせざるを得ない、無難であるというのが実情ではないしょうか。
しかし「害」でも「碍」でもなく「がい」とひらがなにするのは、社会モデルを意識した表記の在り方を考えていく上で不適切とする意見も見られます。

社会モデルへの転換期

表記の違いから見える考え方は様々ですが、「障がいの受け止め方が医学モデルから社会モデルになりつつある」のがうかがえるのではないでしょうか。
たった一言、一文字から見える多種多様な考え方は、障がいを社会モデルにしていく上で重要なことだと感じました。

最後に障がい表記に対する否定的意見で興味深かったものを一つご紹介します。

「(前略)『障がい者』では読み上げソフトが『さわりがいしゃ』と読む」

「障害」「障がい」あなたはどっち派?~「害」「がい」論争

読み上げソフトを使用している人にとって誤読は厄介です。このような機械・IT方面にも着目していく必要があるでしょう。


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