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「MBA100の基本」を読んでみた


MBA100の基本

▪️本書の要点

  1. 論理思考はすべての土台となる存在である。論理思考力はトレーニングに比例して強化される。

  2. 正しい戦略をもつことが、企業が今後生き残れるか否かの鍵を握っている。環境に対応させた効果的な戦略を継続して遂行することが大切だ。

  3. マーケティングは企業にとって生命線である。顧客の本質的なニーズを正確に把握し満たすことがマーケティングの基本だ。

  4. 新事業を創るにあたっては、「まずやってみる」という姿勢が重要だ。  行動をしながら、一定の成果を出していくなかで完成度を高めていくべきである。

▪️要約

すべての土台「論理思考」

ー生産性を高める論理思考力

Radachynskyi/iStock/Thinkstock

論理思考、それはMBAの全体像において根底に位置する存在である。
どれだけ素晴らしい知識やノウハウを手に入れても、論理思考力がなければ全くの無駄になってしまう。

また、コミュニケーションで重要な説得力も、論理思考力の一部である。
論理思考力は意思決定能力と並び、ビジネスの生産性を向上させるうえで必須の要素といえる。

自分の意見に説得力を持たせるには、論点を把握しずれを防ぐ必要がある。論点にずれが生じるのは、「過剰」と「混同」が原因であることが多い。
強く関心を寄せる事を過剰に考えたり、定義や前提へ過剰に執着したり、一般論と個別論を混同したりすると、論点はずれていってしまう。

論点のずれは、様々な無駄を生み出す。
たとえば、本来の目的から脱線した会議を進めたばかりに決定事項が先送りされてしまうと、このうえないほどの機会損失が生じる。
論点のずれを防ぐためにも、「何を考えるべきか」を最優先に考え、把握しておくことが重要だ。

3つの根拠とピラミッド構造

「何を考えるべきか」という論点を把握したら、次は主張の根拠が必要だ。ひとつの主張における根拠の数は3か4つにするべきだ。
それが説得力を高めるうえで適切な数字だからである。

加えて、説得力を高めるにはしっかりとした論理構造も必要だ。
論理構造を組み立てるための考え方として、「ピラミッド構造」というものがある。頂点にメインとなる主張、その下に主張を支える3つ程度の根拠、さらにその下に根拠を支えるための根拠をつくる。
その際、主張を支える根拠に高い納得感をもたせることが、ピラミッド構造を組み立てるうえで最も重要である。

メタレベルの視点が思考力を伸ばす

客観的な視点で物事を考えることのメリットは計り知れない。
にもかかわらず、人は物事を考える際、自分が置かれている状況を蔑ろにしてしまいがちである。一歩距離を置き、まるでもう一人の自分が自分自身を冷静に眺めているようなイメージ、つまりメタレベルで物事を見ることが大切だ。

客観的に自分を見ることで得られるメリット、そのひとつは思考の生産性向上である。客観的な視点をもつことで、正しい順番通りにステップを踏んでいるか、ステップを飛ばしていないかどうかが確認しやすくする。

また、自分を客観視できるということは、自分に必要な能力を高める方法がわかるということでもある。「自分をよく理解する」ことが、スムーズなスキルアップにつながる。

正しい戦略

ー戦略が企業を守る

eternalcreative/iStock/Thinkstock

一見、不動の地位を築いている大企業でも、経営を一歩誤れば市場から消滅してしまう可能性は十分にある。ベンチャー企業であれば尚更だ。
特にIT、グローバル化の影響により、戦う舞台は世界に移されつつある。
急激に変化するスピードに対応しなければならないことはもちろん、これまでとは次元の違う争いを強いられている。

これを切り抜ける糸口になるのが、正しい戦略だ。
環境に対応させた効果的な戦略を継続して遂行することが、企業が生き残るための道である。たしかに難易度は高いが、だからこそ、まずは戦略を立てるうえでのポイントを理解しておきたい。それだけでも実効性は大きく変わってくる。

最悪の戦略とは

企業を繁栄させるうえで大切な思考、それは「競争を避ける」ということである。競争は最悪の戦略だ。知恵を巡らして正面衝突を避け、戦わずして目的を完遂する方法を考えることが何よりも求められる。

では、競争を上手く回避するにはどの方法を取るのがいいだろうか。ひとつは、すきま産業に特化することである。小規模な市場でも、トップが見える位置にいれば、競争力は維持できる。

また、差別化も衝突の回避には有効だ。競合とは異なる視点で顧客にアプローチをかけることで差別化を図るのである。

その他、ゲームのルールをつくるのも、競争を回避するうえではきわめて効果的である。むずかしいが、成功すれば手柄は大きい。時計業界を例にあげよう。かつて正確に時を刻むことがルールであった時代、日本のセイコーは業界の頂点に立つことができた。しかしその後、ファッション性という新しいルールをつくった企業により、トップの座を譲ってしまうこととなった。

いずれの場合も、「勝てる戦を戦う」ことが、戦略の構想する際のポイントである。

生き残る秘訣

環境への適応こそが、企業が継続して成長するための鍵である。
仮に現在のポジションが他の追随を許さないほどであったとしても、環境への適応に失敗すればその存在感は影を潜めることになるだろう。

企業が競争で優位に立っていられる期間は。一般的な想定より短いことが研究によって明らかにされつつある。このことから、環境へ適応すること、すなわち常に変化することこそが理想の状態だと見なされるようになってきている。

一例を示すと、M&Aで繁栄を遂げた会社ゼネラル・エレクトリックは、主要事業の売却とインフラ事業中心へのシフト、これらを大胆にも実行した。企業価値数十兆円規模の大きな企業がこれほどまでの変革をおこなうことは稀だが、日本の企業にとっては参考にすべきところもある。

企業の生命線「マーケティング」

ーキャッシュを生み出す仕組み

Purestock/Thinkstock

売上を上げ続けるための活動、それがマーケティングである。
マーケティングが適切におこなわれているからこそ、企業はキャッシュを得ることができ、従業員の給料日に無事給料が支払われるのである。

マーケティングにおいて最もやってはいけないのが、顧客へ強引に売りつけることだ。マーケティングを正しく機能させ、顧客に買ってもらう仕組みさえ整えれば、強引な販売をせずともキャッシュは得られる。

これを実現させるうえでのポイントは2つである。
1つ目は「常に顧客を起点に考える」という、マーケティングの原点となる考え方だ。具体的には、ターゲット層・ニーズ・購入方法・満足度の達成方法、これらすべてを顧客ベースで考える。

2つ目は「マーケティングの基本プロセスを知ること」
マーケティング・プロセス全体を意識することではじめて、「キャッシュを生み出す仕組み」が実現するのである。

ニーズを正確に把握する

マーケティングの基本は、顧客の本質的なニーズを正確に把握し満たすことである。

このとき、ニーズとウォンツは異なることを覚えておきたい。
顧客が本当に必要としているものは何か、売り手は深く考える必要がある。

たとえばメガネメーカーの場合、顧客が欲しいのはメガネだと考えてしまう傾向にある。しかし、顧客の本質的なニーズはメガネそのものではなく、ストレスなくモノが見えるようになることだ。この点を履き違えると、顧客ニーズを満たす別の商品やサービスによって、市場が奪われてしまう危険性がある。

仮に、レーシック手術が今より安価になり安全性も担保されれば、「ストレスなくモノが見える」というニーズが満たされ、それによってメガネ市場が消滅することも考えられる。今一度、マーケティングや製品開発が、顧客の根源的なニーズに叶っているかどうか確認するべきだ。

ビジネスの原石を見つけるには

人間の欲望はポジティブなものとネガティブなものに分けられる。ただ、人間には本来怠け者の側面があるため、不満を解消したいというネガティブな欲望の比重の方が大きい。ビジネスの原石が眠っているのはそこだ。

消費者のニーズを解消し、ビジネスとして大きな成功を収めた事例として、携帯電話があげられる。携帯電話は、家でしか電話が使えない不便さや不満を解消した。

ビジネスの原石を見つける鍵は、自分自身がユーザーの立場に立って、日常にある不満を見つけることだ。そして、それを解消できるかどうかを考えてみるのである。

新事業創造における心構え

ーまずはやってみる

Eetum/iStock/Thinkstock

今でこそ自動車事業で日本を代表するトヨタ自動車だが、もとは織機メーカーだった。自動車事業は経営の過程で取り組んだ新規事業であり、それが成功を収め現在に至っているというわけである。

新事業の創出には、既存事業の多角化とベンチャー企業による新事業と2パターンに分けられるが、いずれにせよ経済が成長していくためには、新事業の創出が欠かせない。

新事業創造において大切なのは、「完璧より、やる方がいい」と考えることである。まず行動し、一定の成果を出しつつ学習を重ねながら完成度を高める方が、はじめから完璧を求めて時間を費やすよりもはるかに効果的だ。

最初から完璧を求めてしまうことは、失敗への恐怖や不安のあらわれであり、人間の性だともいえるだろう。しかし、新事業の創出において、完璧などそもそも存在しない。だからこそ、まずはやってみる。この姿勢が、現代における成功への近道である。

ダメージは最小限で次なる挑戦へ

こうした姿勢は近年、「リーンスタートアップ」と呼ばれている。
最初から大きな投資をする代わりに、最小限のプロセスをくりかえす。そうすれば、仮に失敗したとしても、被るダメージを最低限に食い止め、次の挑戦に移行できるようになる。失敗するなら早い段階でする方がよい。次のイノベーションに向けた余力を残すことが大切だ。

また、新事業をはじめようとする際は、「失敗」と「成功の過程」の見きわめに力を注ぐことを心がけよう。この見きわめは、確立された方法論もなくむずかしい。それゆえ、事業をそのまま進めるのか、失敗とみなし方向転換するのかについては、慎重に考える必要がある。

アイデアの数はやがて質になる

ビジネスの原石になり得るアイデアは、できるかぎり多く集めた方がいい。

一般的に、集められたアイデアは、規模や成長率、儲けやすさ、成功する可能性などのフィルターにかけられ、絞り込まれることになる。このとき、やはり母数となるアイデアが多ければ多いほど、すぐれたアイデアが見つかる可能性も高くなる。

アイデアの数を増やす方法として有名なものに「ブレーンストーミング」がある。ただ、アイデアを考える姿勢がぞんざいだと、ブレーンストーミングの効果は下がってしまう。よって、インセンティブなどを設けて、参加者が積極的に取り組める環境を用意するなどの工夫も大切だ。

結局のところ、質の高いアイデアを出すためには、「徹底的に考え抜く」ことが必要不可欠である。考えが行き詰まったら、そこからさらにもう一歩踏み込んで考えてみよう。そうすることで、一線を画するアイデアや方法論が生まれ、またひとつ新しいビジネスが誕生するのである。

すゝめ

「基本」、それはすべてにおいて最も大切な土台である。
今現在どのような立場にあろうとも、基礎を学ぶこと、あるいは学びなおすことはいつだって有効だ。本書には、今回取りあげた項目以外にも、問題解決、分析、アカウンティング、ファイナンス、リーダーシップ、交渉など、ビジネスパーソンにとって心強い武器となる知識が贅沢に詰め込まれている。最大の成果を挙げるためのバイブルとして、手の届く場所に常時、忍ばせておきたい。

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