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「人を動かす」を読んでみた


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▪️本書の要点

  1. 叱責や脅しでは人を動かすことはできない。相手に行動してもらいたければ「どうしたら相手がその気になるか」を自分に問うことだ。

  2. 人々は認められ、尊重されることを常に求めている。相手の話に耳を傾け、心からの関心を示せば、良好な人間関係を築くことができる。

  3. 人を説得したいなら、議論をしたり誤りを指摘したりしてはいけない。代わりに、穏やかな対話を心がけ、相手が自ら気づきを得て、考えを改めるよう仕向けることこそ大切である。

▪️要約

人を動かす

重要感を持たせる
人に動いてもらいたいなら、相手が欲しがっているものを与えることだ。
心理学者ジグムント・フロイトによれば、人の行動のすべては「性の衝動」と「偉くなりたい願望」に集約されるという。
また、アメリカの偉大な哲学者ジョン・デューイ教授は、「人間の持つ最も根強い衝動は、“重要人物たらんとする欲求”だ」と主張する。

「自己重要感」は、動物にはない人間固有の特性だ。流行のファッションを身にまとったり、新車を乗り回したりするのもこの欲求に突き動かされた結果である。

自己の重要感を満足させる方法は人によって異なるが、その方法がわかればその人物がどのような性格や嗜好を持つのか、ある程度わかるだろう。アメリカの実業家チャールズ・シュワブは「他人の長所を伸ばすには、ほめることと、励ますことが何よりの方法だ。上司から叱られることほど、向上心を害するものはない」と言っている。

では、あなたはどうだろうか。仕事場、家庭で相手に称賛や励ましの言葉をかけているだろうか。自分の欲から離れ、相手の長所を考えよう。そして、それに対して惜しみない賛辞を与えよう。きっと相手はそれをいつまでも忘れないだろう。

人の立場に身を置く

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人を動かす方法、それは人の好むものに着眼し、それを手に入れる方法を教えることだ。
息子に煙草を吸わせたくないと思えば説教してはならない。
代わりに「野球の選手になれなくなる」「100m競争に勝てなくなる」と説明するのだ。
著者が出会った一人の男性の例を紹介しよう。
その男性の息子が「幼稚園に行きたくない」とごねている。親としては「幼稚園に行きなさい」と怒鳴りつけたら、登園させることはできるだろう。だが、それでは幼稚園を好きにさせることはできない。
そこで、その男性は妻と一緒に、歌を歌う、絵を描くなど幼稚園でやるような面白いことをリストにした。
そして、男性は妻と一緒にそれを楽しそうに実演したのだ。すると息子は興味津々に「自分も仲間に入れて」と言い出す。しかし、男性は「幼稚園で遊び方を教わってからじゃないとだめだよ」と言ったのだ。
その翌朝何が起こったか。説教や脅しなしで、その子は幼稚園に行きたいと自発的に言い出したのだ。
このように、人に行動を起こしてもらいたければ、「どうすれば相手を焚きつけられるか」を自分に問うことが大切である。

▪️必読ポイント-人に好かれる

関心を寄せる

他人の関心を引くために、見当違いな努力ばかりを続ける人は少なくない。だが実際には、人は他人のことにほとんど関心を持っておらず、四六時中、自分のことを気にしている。大勢が写っている集合写真を見るときにまずは自分の顔を探すというのはその最たる例だろう。

自分に関心を引こうとしてばかりでは、真の友人はできない。心理学者のアルフレッド・アドラーも「他人のことに関心を持たない人は、苦難の人生を歩まねばならず、他人に対しても大きな迷惑をかける」と言っている。

著者は、友達から誕生日を聞き出すよう日頃から心がけていたという。相手の誕生日を聞いたら、それを忘れないうちに手帳に記入する。そして、その日が来たらお祝いの手紙を出すそうだ。この方法はとても効果的で、「誕生日を覚えてくれたのは世界であなただけだ」という場合も少なくない。

人に好かれ、真の友情を育みたいのなら、相手に誠実な関心を寄せることが大切だ。

笑顔を忘れない

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所作や動作は、言葉よりも雄弁だ。犬が飼い主を見て喜んで近づいてくるのは、まさに犬がかわいがられるゆえんである。

赤ちゃんもそうだろう。空間に赤ちゃんが一人いるだけで、その場が和むというシーンを見かけたことがある人は多いのではないだろうか。

笑顔の効果は強力だ。たとえ電話越しであっても笑顔は声に乗って相手に伝わる。たとえ気分が落ち込んでいても、無理やり笑ってみると不思議と幸福な気持ちが湧いてくるものだ。

幸不幸というのは、財産や地位で決まるものではない。何を幸福と考え、どうふるまうかによって決まるのだ。幸福でいるように日々心がければ、おのずと人生もそういった状態になっていく。

勇気、率直さや明朗さを持ち続け、正しい精神状態を保つことの効果は、とても大きい。

聞き手にまわる

著者があるパーティーに参加した時のことだ。たまたま有名な植物学者と知り合った。

それまで植物学者に出会ったことがなかった著者は、相手の話にすっかり引き込まれ、パーティーそっちのけで何時間も話し込んだ。そして別れる間際、その学者はカーネギーのことをほめちぎり、世にも珍しい話し上手とほめてその場を後にしていった。

しかし実のところ、カーネギーはほとんどしゃべっておらず、話をしていたのはほとんど相手であった。

この話が示唆するのは、「相手の話に傾聴する」こと自体が相手への賛辞になるということだ。話し上手になりたければ、聞き上手になるべきである。

相手が喜んで答えてくれるような質問を投げかけ、相手に話をさせるよう仕向ける。そうすれば相手もあなたに対する興味を持ってくれるはずだ。

心からほめる

キリストは「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」と説いた。誰しも他人から認められたいと感じ、世界において自分は重要な存在でありたがっている。

キリストの教えに従って人にしてもらいたいことを人に施そう。日常生活でほんの二言、三言でも相手をほめれば、その多大な効果を享受できるだろう。

また、レストランで店員が間違った料理を持ってきたとする。そのとき、「面倒をかけてすみませんが、取り替えてもらえますか」と丁寧に言えば、きっと相手は快く受け入れてくれるはずだ。

大切なのは相手への敬意である。丁寧で思いやりのある言葉遣いは、日常生活の潤滑油となり、育ちの良さを証明することにもつながる。「自分は重要な存在」と相手に思わせるのだ。

なお、家庭ほど敬意がおざなりにされる場所はない。あなたは結婚相手の魅力を最近、ほめているだろうか。もし答えがノーなら、特別なもてなしをして相手を驚かせてみるといいかもしれない。

人を説得するー議論をしない

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議論に勝つ唯一の方法は、議論を避けることだ。
議論をして勝つことは不可能であり、たとえ勝ったと思えてもそれは負けていることにほかならない。なぜなら、いくら正しい主張をしたところで、相手の心は変えられないからだ。言い込められたほうは自尊心を傷つけられ、憤慨するだろう。
他人の考えを改めさせるのは、恵まれた条件下でさえ難しい作業である。
だから、人を説得したいなら、相手に気づかれないよう巧妙にやることだ。
「人にものを教えることはできない。自ら気づく手助けができるだけだ」という言葉をガリレオは残している。
例えば、相手が間違っていると思う時であっても、「おそらく私の間違いでしょう。私はよく間違います」という文句から対話を始めてみよう。これに反対する人はおらず、そうして議論を始めれば、もしかすると相手は自分が間違っていたと自認するかもしれない。

穏やかに話す

「バケツ一杯の苦汁よりも一滴の蜂蜜のほうが多くのハエがとれる」ということわざはいつの世でも正しい。
自分の意見に賛同してもらいたい時は、相手と敵対してはならず、逆に相手に味方だと思ってもらう必要がある。
アメリカのある企業で、大規模なストライキが起こった。
それに対して経営者は悪感情を示さず、反対に「平和な態度でストライキに入った」とメディアで従業員たちをほめた。さらに、退屈そうにしている従業員がいれば野球道具を買い与え、ボウリング好きな者にはボウリング場を借りてやった。
すると、労働者たちは労使交渉のかたわら、工場のまわりを自ら掃除し始めたのだ。最終的にストライキは1週間ほどで妥結し、双方とも悪感情を残すことはなかった。
激しい議論の際にも、穏やかで打ち解けた態度を示すことは大切だ。「北風と太陽」の寓話のように、力ずくよりも感謝や親切を用いるやり方のほうがはるかに効果的である。

イエスと答えられる問題を選ぶ

人と話す際、意見が一致するテーマや問題から始めるといい。絶えずそれを強調しながら話を進めていけば、同じ方法に向かって議論が進んでいると、相手に理解してもらえる。
話し上手な人は会話や議論の序盤で、相手が「イエス」と答えるような問題を何度も取り上げ、相手の心理を肯定的な方向へと進ませていく。
反対に、人間が「ノー」と言うとき、単に否定の言葉を発しているだけでなく、体の内部では神経や筋肉も拒否反応を始める。無意識のうちに、「あとずさりするかどうか」を判断しているのだ。
だから「イエス」と言わせれば言わせるほど、相手を自分の望むほうに引き寄せやすくなる。この方法は、夫婦関係や社内の交渉事、セールスなど多くの場面に応用できる。

思いつかせる

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私たちは人から押しつけられた意見よりも、自分で思いついた意見のほうを大切にするものだ。したがって、相手に暗示を与え、結論を相手に思いつかせるといい。
後にアメリカ大統領となるセオドア・ルーズヴェルトの例を紹介しよう。
彼はニューヨーク州知事だった時分、政界の重鎮たちとの関係を良好に保ちながら、大規模な法改革を行うことに成功した。
ルーズヴェルトは重要な役職を任命する際、重鎮たちに候補者を推薦させる権利を与えた。重鎮たちは候補者を提案してくるのだが、ルーズヴェルトはそれを丁重に断る。最初の候補者は大概の場合、党内で面倒を見ないといけない人物で適性がないからだ。
その後、ルーズヴェルトは重鎮たちの協力に対して感謝を述べながら、そのやり取りを何回か繰り返す。そうしているうちに候補者が意中の人物に近づいてくる。そして、最終的に重鎮たちが推薦する人物を任命し、彼らに花を持たせるのだ。
そして最後に、「あなた方に喜んでいただくためにこの人物を任命しますが、次はあなた方が私を喜ばせてくださる番ですね」とルーズヴェルトは言う。その結果、政界の重鎮たちはもともと反対していたルーズヴェルトの法改正を支持したのだ。
ルーズヴェルトは、相手に気づかれないよう敬意を払いながら、重鎮たちに一連の候補者を自分の発案だと思わせたのである。

演出を行う

ある新聞社が誹謗中傷される事件が起こった。それは、「その新聞は広告ばかりで記事が少ない。読者が離れているので、広告を出しても効果が薄い」という悪意のある噂が出回ったのだ。
新聞社はその風説を覆すために対策を練り、反転攻勢に打って出た。どうしたかというと、ある日の新聞の記事をすべて抜き出し、それを1冊の本にまとめて出版したのだ。『一日』と題されたその本は307ページものボリュームがあるにもかかわらず、わずか数セントで販売された。
その演出によって新聞社の汚名は払しょくされた。新聞には価値ある読み物が掲載されているという事実を世間に知らしめた。
話し過ぎは相手をうんざりさせるだけだ。主張に注目を集めたいなら、単に事実を列挙するのではなく、先の新聞社のように演出に工夫を凝らさなくてはならない。

▪️すゝめ

『人を動かす』は1936年に初版が発売されて以降、世界各地で読み継がれているベストセラーであり、自己啓発本の先駆けといえる存在だろう。
1930年代のアメリカといえば大恐慌が起こり、そこから這い上がろうと足掻いた時代だ。あくまで想像ではあるが、当時の人々は恐慌により自信を失い、人に認められたい、なんとか成功したいという想いがことさら強かったのではないだろうか。大恐慌の影響が長引くなかで出版された本書は多くのアメリカ人の心をつかみ、ベストセラーになったというのが要約者の見立てである。
翻って私たちは現在、失われた30年の転換期にいる。先行きの不透明感は強く、自分のキャリアや生き方に自信を持てない人は少なくない。そんな今だからこそ、自己啓発本の原点ともいえる本書に立ち返ることの意味は大きいのではないだろうか。
泣く泣く要約に入れられなかったテーマもたくさんある。本書の原題は“How to Win Friends and Influence People”で、直訳すれば「友を獲得し、人に影響を与える方法」だ。それを知っていると、より具体的なイメージと共に読み進められるだろう。

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