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5) 男性厳禁の家なんだからピーヒャラしないでほしい(19歳)

1人暮らしを始めて1年。

19歳になった私はおかしな住民のいる物件から逃げ出す決意をした。
お経を読み始めたり、「コロスゾ」と夜な夜な叫ぶ隣人とこれ以上壁を共有するのは心臓に良くない。
前回の物件探しの失敗を振り返り、

1. 物件は必ず自分の目で確かめる
2. チャラいスタッフのいる不動産へ行かない
3. 叫んだりしそうな隣人がいないか事前に確かめる

この3か条をしっかりと胸に刻みつけ、2回目の引っ越しは大学のすぐそばにある小さな不動産屋さんにお願いすることにした。
ここは地元に根差した事業を展開しているらしく、学生向けの物件も多く取り扱っているらしい。スタッフも女性が多くとても優しく丁寧な印象があった。

紹介してくれた物件は
・女性、学生限定
・2階建ての2階
・日当たり良し、角部屋
・大家さんの家と隣接している

スクリーンショット 2021-04-29 午後10.53.07

さらに家賃も据え置き。
通学距離は若干伸びたが間違いなく優良物件!

私が求めているのは心の平穏だ。学生オンリーのアパートで和田アキコを爆音で聴く人はいないだろう。

季節は春。外は桜が咲き乱れ、新生活を迎える人々は期待に胸を躍らせている。
私は早々に荷物をまとめ、スキップしながら新たな住まいに引っ越しした。

スクリーンショット 2021-04-29 午後10.53.13

先にも書いたようにこの物件に男性は住んでいない。
すぐ隣に住んでいる大家さんも「男の人は来ないから安心よ」と言っていた。
各部屋へ入るには敷地内の通路を通らなければならず、大家さんも頻繁に出入りしているのでそう気楽に他人が入れる環境ではないはずだった。

はずだった。


引っ越して数日後、私は奇妙な物音で夜中に目を覚ました。

ピー...ヒャー…

何かの鳴き声?
鳥?

私は耳を澄まして声の出所を探した。一定のリズムで高く細い声が聞こえる。

ピー...ヒャー…

私はしばらく沈黙したのち、声の正体を理解した。
外からではない、隣の部屋からだ。念のため壁に耳を当てて確認したが間違いない。ついでに部屋がガタガタ揺れる音までする。

スクリーンショット 2021-04-29 午後10.53.13

優しそうな大家さんの言葉を思い出す。

心の平穏はどこに...!!
私はぐぅ、と少し唸って布団を頭までかぶった。

しばらくはその声と人工的に作られた地震に悩まされていたが、春の終わりとともに鳥たちは別れを告げたらしい。
夏が近づくと代わりにカエルの声が田んぼから聞こえるようになった。

騒がしさは変わらないが田舎で聴き慣れたカエルの方がずっといい。
窓から夏の夜風を迎えながら私は穏やかに眠りについた。

引っ越し教訓2.
可能な限り隣人がどんな人間か引っ越す前に探ろう。

続き


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