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せどり業のビジネスモデル分析

こんにちは、がぱけん(@gapaken335)です。

このアカウントは私が仕事や書籍、日々の気づきを通して考察したものを共有するものです。少しでもみなさまのインプットや気づきになると嬉しく思います。

今回のテーマは「せどり」。いわゆる転売業です。

と言っても本記事はよく見かける「誰でもできる副業のやり方教えます!」だとか「これであなたも月収100万円!」といった類のものではありません。

今回はせどりを純粋にビジネスモデルとしてどういう形なのか?という観点でまとめています。「せどりをやりたい人」というよりは、「面白いビジネスを知るのが好きだ」「ビジネスモデル分析の型を知りたい」という人に向けて書いていますのでご了承ください。

ちなみに私は実際にせどりビジネスを実施していません。
ネットの情報と知人の話をベースに書いているだけなのでご理解ください。

(認識が違ったらコメントください。精進します。)

それでは早速本題に入りましょう。


せどりビジネスとは。

まずは商流と儲けの仕組みを整理しましょう。
せどりとは

①店舗のセールやECサイトで商品を安く仕入れ
②Amazonやフリマアプリなどで販売する

という流れで利益を得るビジネスです。シンプルですね。
①の部分の違いによって店舗で仕入れを行う店舗せどり、Amazon、楽天などで仕入れを行う電脳せどり、楽天ポイントを含めて利益をだす楽天ポイントせどりなど様々な手法があります。

高く売れそうなものを安く仕入れて売る
やっていることは古くからの商人と一緒ですね。

せどりビジネスの参考についてはこちらの動画にとてもよくまとまっているので、ご覧ください。

仕入れる商品のあたりをつける専用ツールや、販売メソッドが非常に発達していて再現性の非常に高いビジネスであることがわかります。



せどりの顧客提供価値。

せどりビジネスはどんな価値を顧客に提供しているのでしょうか?

物を仕入れて消費者に売るビジネスは一般的に小売流通業と言われます。
小売流通業が担う機能は「情報と商品を生産者から消費者へ円滑に移転すること」。
すなわち「消費者が欲しい商品を買う機会を、より広範囲に提供する」というものであり、せどりビジネスも基本的にはこれに類します。

せどりの活動を身近な例で例えると、以下のようなイメージでしょうか。

チョコを買いたい人がいたとします。
彼はチョコを買おうとして、家から近いコンビニにまず入ります
しかしそこでお目当てのチョコが売っていなければ買うことができません。
そこでせどり事業者は業務用スーパーで安くチョコを仕入れ、コンビニにチョコを卸し補充します。

本来コンビニで買われるはずだった分業務用スーパーは売上が増えコンビニは在庫を確保することができ、消費者は欲しいと思った場所でチョコを買える。そしてせどり業者は価格差で利益を得る

このような形で成り立っているビジネスです。

実際のせどりでは、ここでいう業務用スーパー(仕入れ先)はセール中の家電量販店やブックオフ、コンビニの部分はAmazonやメルカリが入ります。

ここまでの話だと、せどり業者は卸業者と同様の価値を提供しているように見えますが、それは違います。
せどり業は「一般消費者が購入可能なチャネルから商品を仕入れて一般消費者へと販売する」ということを忘れてはいけません。
卸業者の基本機能である「生産者から」という部分が抜け落ちているのがポイントです。

通常の卸業者は一般消費者が直接買えないルートから、需給調整や品目の集約などの機能を発揮しながら一般消費者に商品を届けます。

しかしせどり業での仕入れ先は、一般消費者もアプローチできるところが基本です。

「(本当はもっと高く売れるのに)安値で売られている商品を見つけて、(安く購入できる手段を知らない)顧客に高く売る」という構造、つまり情報格差を利用して利益を得る仕組みなのです。



5フォースの観点からせどりビジネスを考える。

あるビジネスの収益構造を理解する場合、5フォース分析が有効です。

5フォース分析とは、ハーバード大学の教授である、マイケル・E・ポーター氏が1979年に発案したフレームワーク。非常にクラシカルな分析ではありますが、2021年現在もビジネスモデルの基本を理解する上では有効な理論です。

氏によると、収益構造は「競合他社」「新規参入者」「買い手」「売り手」「代替材」の5つの外部要因により決定されるとされています。

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この理論では
・競合他社が少なく、自社が差別化できており
・新規参入障壁が高く
・顧客の購買力が弱く
・仕入れ先の立場が低く
・代替材がない
というビジネスが理想
であるとしています。

さて、今回のせどりビジネスにこちらを当てはめてみましょう。

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まずは競合他社。

せどり業者のライバルを指します。
競合他社について分析する時重要なのはその数と差別化です。
せどり事業としての事業者数は正確なことはわかりませんが、雑誌やネットで非常によく見かける事実からするとそこそこの数ライバルはいるとみて良いでしょう。
加えて他社と差別化できるのか?と言うのが重要な論点ですが、残念ながらせどり業者の提供価値は販路のスライドなので、あまり大きな差別化は難しいビジネスです。
ただ、「仕入れ商品の差別化」は可能ですし、独自のノウハウや知識が活きる可能性も十分にあるのでそこがポイントだと考えます。


次に新規参入業者。

せどりの参入書壁は非常に低いことで有名です。
手順がマニュアル化され、ツールが開発されており、資格や設備、認可など必要なものはありません。「誰でもできる副業」として様々なところで紹介されている通り、ライバルが増加する可能性は非常に高いビジネスと言えます。

三つ目は買い手(顧客)。

ここではAmazonなどの販売チャネルと購入するエンドユーザーの二つの要素を考える必要があります。

販売チャネルに関しては、プラットフォーム依存性が非常に高いのがネックです。商品を安値で仕入れても高く販売できるチャネルがないとビジネスとして成り立ちません。もし、販売手数料を一斉にあげられたら、一気に収益性がなくなるなどのリスクを孕みます。

生殺与奪の権を他人に握られている状態ですね。

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エンドユーザーに関して、商品にもよりますが基本的に購買力は高くないものと考えられます。EC市場自体は近年堅調に右肩上がりとなっており、直近もコロナ需要で成長中です。

ここからは仮説ですが、最近ECサービスを使い始めたと言う層(ネット内リサーチ力が弱い層)も国内には確実に増えているはずで、そう言う意味でもせどり業者としては追い風かもしれません。

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出典:経済産業省 平成27年度調査~令和元年度「電子商取引に関する市場調査」

四つめは売り手(仕入れ先)です。

せどりのスタイルにもよりますが、基本的にはここも自身でコントロールできる部分が少ない場所になります。

店舗の在庫処分目的のセールや、ミスプライシングを狙って動く形になるのでせどり業者のアクションとしては「良い仕入れ先を探す」と言うアクションしかできず、受け身の状態です。

生殺与奪の権を(以下略)。

また、ブックオフは中古書籍の販売価格をAmazonに合わせて設定しているようです。他の店舗やサービスに関してもせどり対策は店舗側からある程度進んでいくものと思われます。(現状まだまだ隙間は多いようですが)


最後に代替材

気をつけるべきはせどり業者以外の小売店の値付けやセールでしょう。Amazonのカート内の実質競合として存在するので注視が必要です。


以上をまとめるとビジネスモデルとしてはあまり盤石なものとは言えないことがわかります。

・競合が多く差別化が難しく
・新規参入が容易で
・プラットフォーム依存の販売で
・店舗の値付けとプラットフォームに依存した仕入れをして
・非せどり業者も含めて価格競争に巻き込まれる可能性がある

と言うビジネスなのです。

特に多くの要素を自らの意思で決められない構造はビジネスとして大きなリスクを孕みます。楽天ポイントせどりなどプラットフォームのルールに大きく依存しているものは、一つのルール改定でビジネスモデルが崩壊する可能性が十分あるので注意が必要です。


せどりビジネスはなぜ成り立つか。

前項で、「あまり盤石なビジネスモデルではない」と言うことを述べました。ビジネスとしての安定性が悪く、差別化も難しく、ミスプライシングが起きてなければ市場として成り立たない市場であると。

それではなぜせどりビジネスが成り立っているのでしょうか?

それの答えは「必要な売上金額が少額だから」と私は考えます。

基本的にせどりは個人事業の延長線上にあることが多く、その多くは副業です。上場している会社であれば、継続的な成長を株主から求められますが、個人事業であれば安定した収入を一定得られれば目的は達成できます。

一人当たりEC市場規模10兆円に対して、ミスプライシングが数パーセント存在するとして、仮に1%とおいても市場規模は1000億円とそこそこ巨大な可能性があります。
一人で扱う金額としては副業だったら年間数百万円程度売れれば十分やる価値はありますし。専業で規模が大きい人も売上数千万円程度でしょう。

おそらくですが、なかなかに大きな市場を、大量の個人が同じような手法でちょっとずつシェアを持っているような状態が今のせどり業界なのではないでしょうか?

ちなみに私はノウハウを餌に低賃金でオペレーションを外注している業者をみたことがあります。
実質提供している付加価値が低いので人を雇うのが難しいビジネスなのだとしみじみしたことをおぼえています。

差別化しづらく、あまり利益率の高くない労働集約型のビジネスなので、一つの業者がスケールして他を圧倒する現象が起こらない。だからこそ、個人で食べていくには十分な売上は誰でもあげられる。と言う状況なのでしょう。

そう言う背景もあって、上位のせどり業者は、実際の商品の売買から儲けたい人にノウハウを売る情報商材屋さんへ変貌していくのでしょう。
業が深いですね。


せどりビジネスをやるべきか。

以上を踏まえてせどりビジネスをやるべきかどうかと言う問いに対して個人的な見解を述べます。

「一生の仕事とするのはおすすめしないけど、副業とか一時のお金儲けなら全然あり」

と言うのが私の結論です。

よく言われる文句の通り再現性が高く、努力すれば一定の所得が得られると言う意味では非常に魅力的な事業だと思います。やればやるだけお金が入る(はず)なのでサラリーマンよりも瞬間的にお金を手にすることができる可能性も否定できないでしょう。

しかしながらそれを事業の柱にするにはリスクが高いというのが感想です。「ECプラットフォームが一斉に対策を講じる」と言う一つの出来事でビジネスが崩壊する可能性があり、オペレーションを回すだけで永続的に稼げるわけではないことは前提としておく必要があると思います。

なので、専業でせどり事業を始めるにしても、「その先」を意識したプレイングが重要になってくるんじゃないかと僕は思います。

せどりで得たキャッシュで別の事業を起こす、ノウハウを生かしてより参入障壁の高い輸入販売にスライドする、もしくは生活費を絞った基盤を基本にすることでキャッシュを投資に回してそのまま労働社会からアガる(FIREする)なんてのも選択肢です。



結びとして。

若干の苦言も呈しましたが、せどりビジネス自体を初めて知った時はその仕組みに感動すら覚えました。

サラリーマンであり、企業間のビジネスのみで世界がまわっているような錯覚から覚めて一気に世界が広がった感覚を覚えました。

また、せどり業を実施すること自体の付加価値は低いですが、せどり業のノウハウを開発した方は(賛否あるでしょうが)とても高い価値を生み出していると感じます。

どんな時代、どんな仕組みでも、うまく利用してお金を儲けられる仕組みがあるものですね。今後もアンテナを貼っていこうと思います。


読んでいただきありがとうございました。

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ではまた。






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