なぜその提案はウケないのか。コト売り父さん、モノ売り父さん

提案してますか!?僕は最近サボり気味なんですが、いろんな会社に顔出していろんな会議に無駄に参加してるのもあり、通る提案通らない提案というのをたくさん見てます。

失敗する提案の原因は大体の場合必要性がよくわからんことに起因している気がします。なぜそうなるかというと、方法論やツールや手法などのモノを先に持ってきてしまうからなんですね。

このモノ売りの方法にはいくつか問題があります。

  • そもそも何が嬉しいのかよくわからない

  • なぜ今このタイミングでやるべきなのかわからない

  • 必要なのかあったら良いななのかがわからない

ちょっとこの辺について書いてみようかなと思います。

モノ売り父さん: 画期的な方法見つけました

「すごい事業分析モデルを見つけました!ビジネスモデルキャンパスというんですが、これで施策検討しましょう!」

多分どこかの雑誌で読んだのでしょう。ビジネスモデルキャンパスとは販売チャネルやコストなど事業に必要な要素を網羅的に上げるためのフレームワークです。いっときはやってましたね!

さっそくモノ売り父さんは分析をするための計画を立てプロジェクトの提案をまとめてます。さて、プレゼン。えらーい人からの最初の一言はこちらです。

「この間も分析してなかったっけ?4PとかSWOTとか。」

モノ売り父さんは、他のフレームワークとの違いやビジネスモデルキャンパスの成功事例などを頑張って説明しますが全く刺さりません。

「すごそうなのはわかったけど、ここでまた3ヶ月も分析に費やすのは合理的とは思えない。それに、前の分析と違う結論が出たらどう整合を取るの?」

結局、提案は流れてしまいました。モノ売り父さんは考えます。

「偉い人にはこの手法の素晴らしさはわからんのです。けど、良い議論ができた。指摘された点をカバーできるモノをまた提案しよう」

コト売り父さん: プロジェクトのリスクが高まっています

「開発プロジェクトも中頃。けど、このままだとラージリリースになってしまう。この新規事業の成功確度を上げるためには少しでも実地検証を行いたい。」

コト売り父さんは線表を眺めながら考えます。本当はスモールスタートしたかったが、なんやかんや要望を盛り込んでたらいつのまにか一年掛のプロジェクト。それは仕方がないにしても、少なめに見積もっても感覚的には1.5億円くらい使うことになる。1.5億と言えば今年の売り上げのx%。決して小さい数字ではない。

ここで一度プロジェクト全体の点検をすることは有益に違いない。コト売り父さんはこう提案することにしました。

「当初予算は五千万円くらいでしたが、いつのまにか増えるに増えて概算で1.5億円くらいの費用に膨れる見通しです。このままリリースするリスクは高いように思われるので、一度方向性が正しいか検証するフェーズを設けたいと考えています」

しかし偉い人はいいます。

「これまでも十分に検証はしてきたはずだ。開発を止めてまでやる必要はないのではないか。」

「はい、ごもっともです。しかし、今回の費用増の主要因は機能追加です。当初の計画時になかった機能が膨れ上がっており、当初の検討が今でも有効であるかには疑問があります。」

ここでビジネスモデルキャンパスをスッと差し出す。

「これは、現状判明している限りでの分析です。コスト構造として運用費が増すことは明らかですが、これをカバーできる収益については非常に楽観的です。ここで、販売チャネル・顧客セグメントの検証をして収益性の確度をあげ、特に開発維持費が高いxxとyyの見直しだけでも行うことにはメリットがあります」

偉い人は即断はしませんでしたが、もし仮にその検証をした場合のpros/consを整理を指示し、変更後の計画についてもきちんと見直して再提案せよということになりました。

コト売り父さん並みに仕事できたら苦労ないね(ぉ

何が違うのか: コト vs モノ

だいぶ極端な例を書いた気がするのでモノ売り父さんのいまいち感が満ち溢れてますが、大なり小なりこういうことは結構起きてます。

例えば提案書のタイトルを「xxxの導入」だとか「xxxの検討」とかにしてませんか?大体この手のタイトルの提案書は文書構成がxxxの説明から入って最後に有用性を述べるような構成になってます。モノから説明してコトに向かうんですね。

よほど創造性にあふれた頭脳を持ってる偉い人なら、驚異的な読解力と空気読み力によって画期的な応用方法を閃いたりするでしょうけども、まぁそうはなりません。

なのでまず基本的な話として、文章構成を真逆にする必要があります。これこれヤバい、これを実現しないといけない、なのでこれを使う。これこれヤバい、がどのくらい刺さるかで全てが決まります。もはや後半はどうでも良いというか、極論偉い人は実行しないので、何がヤバくて対処に何がいくら必要で影響は何かくらいしか興味がありません。実行の方法は極論あなた次第です。すごい!やばい!などのコトに向かわないと提案は通らないんですね。

若いコンサルの人とか学生ビジコンとかでやりがちなんですが、みんなSWOTしましたとか4Pやりましたとか言うんですが、やってやりっぱなしな感じが否めません。道具を覚えると使いたくなる気持ちはよくわかります。

しかし、その分析をいかに精緻にやったところで点はつかないんですよね。見られているのは、その提案自体のインパクトの大きさと、その合理的納得度です。まずインパクトがドーンとでないことには響かないんですね。

その次に合理性を担保するためにフレームワークを使ったりするんですが、小慣れてるコンサルほどPPMとかSWOTとかいいません。なぜなら、プレゼンの中でマーケットシェアと成長率が重要であると言えれば「PPM」とかのキーワードは単なるノイズです。

なんなら過去のコンサルがPPMとか言って失敗してたりすると完全に巻き込まれ事故を起こします。コンサルっぽいフレームワークにアレルギーがある人すらいます。笑う。

こういうのは技術系にも言えます。長い人生の中でやれnodeがいいのreactがいいの、フルリファクタリングするべきだだの、いろんな提案受けてきてますが、大体「なんで?」がうまく説明できません。会話としてもいきなり「flutter使いたくないですか?」とか言われても「僕は好きだけど、それとこれとは別」みたいなお返事しかできません。

モノは隠しておいても良い

良いコトに行き当たらなかったら割り切って手ぶらで行く方がいくらかマシなこともあります。もちろん、何にも話題がないのはキツイですが、ニュース見たり、競合を調べたり、IR読んだりして、何が重要そうなのかどういう業務をしてるのかをなんとなく頭に入れておきます。その上で「最近の注力ポイントはやはりここですか?」とか話題を振りつつとにかく相手にしゃべっていただく。で、ミーティングの終わり10分くらいで「例えばこういうコトができたら嬉しくないですか?」というのをあてて次回具体提案を持っていくとかでいい気がします。

最初からモノ持っていくとそれがアンカーになっちゃうんですよね。iOSアプリ作ってる人にはiOS開発の依頼しかいかないんですよ。コトに向き合うにはモノはふんわりさせておいた方が大体うまくいきます。

どっちの父さん?

さて、自分はどっちの父さんでしょうか。

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