見出し画像

番外編 コートをリペア

月に一度の中目黒の出張時、何もなくても立ち寄りたいお店がある。
それは、「ユニオンパスタイム」
元々は、長袖のアロハシャツが欲しいと思っていた時に
紹介してもらったお店。
お店とはいってもマンションの一室でディスプレイはなし。
カウンターがあっていつもそこにはお直しが終わったデニムが山と積まれている。
部屋の周りはいろんな色の糸が所狭しと並べられている。
そこで長袖のアロハを購入したのだ!
受注生産なので、好みの柄などを言って店の奥から商品を何点か持ってきてもらい、試着してお願いするシステム。
わたしの好みは、「上品なヤンキー」。
どこまで理解してもらえるかわからなかったけど、そう言ってみたら、全身トラ柄の藍のアロハがやってきた。
リネン、藍染、着心地良し!
で注文することにした。

着てみると案外馴染むのよ。


その時に、お店が扱っている色とりどりの薩摩ボタンも見せてもらった。
なんと素敵な!!
聞くと、ご自身のところでも作っておられるそう。

その間もひっきりなしにお客さんがデニムを持ち込んでくる。
知人も相当な無理を言っていろいろとお直しをしてもらったとのこと。
それならば、じつは…。
わたしはおずおずと、店主に昨年購入してどうしようと思っている古着について相談してみた。


その名はバブアー。イギリスの伝統的なコートである。
あこがれだけど、なかなか手が出ず、けれどもある時中目黒の古着屋さんがバブアーのフェアーをやっているのに遭遇!!
もともとメンズの作業着アウターなのでサイズも難しい。
そんな中、サイズがぴったりの色も好みのものがみつかった!
お値段も手頃!
なぜなら…それは、ボロボロだったから。

あこがれのバブアー!
あちこちに穴が空いている
1番ひどいのは袖口
やぶれすぎて中のインナーも見えてしまっている

上手く映らなかったけど、タグには電話番号と名前が書いてある
お名前は、A.MORLYさん

気に入っていたけど、昔のオイルコート特有の古いクレヨンの匂いがキツイ。
お湯で洗った。
バケツにお湯と洗剤を入れてふり洗い。
出るわ出るわ茶色の水!とりあえず、水が茶色にならなくなるまで水を変え続け、干す。
ということを2回やってみた。
こんなこと、バブアーではタブーなのだけど。
古いクレヨンの匂いをまとうと、頭が痛くなりそうでやむなく。
匂いは軽減されたけど、コートの色は抜けてさらに破れていくことになり、上記のような有様。
自分で直そうと糸でかがってみても、針が太かったらしく、そこからまた裂けていく。バブアーのコート生地のハギレをネットで購入したものの、それで全ての穴を塞ぐとなると、多分すごく重くなる。
さてさて、どうしようと悩んで1年経っていた。

そこにユニオンパスタイム!
おずおずと、
あの〜、古いバブアーなんですけど〜
と言ってみた。
「バブアーねー!あーねー!!」と苦笑いしながらも状態を見てくれることになったので早速翌月持って行った!

2回洗ったのでオイルでベタつく心配はなし、ハギレもつかってください!!
どうでしょう?
「いゃ〜、まあ、やってみますか!」
と快諾?していただいた!!
それから2ヶ月ほど。具体的には1ヶ月で出来上がりのお電話いただいて、取りに行けたのが、翌月。
期待で胸がパンパンになりながらさっそく行ってみた!!!

お店に行くと、私の前にはお客さんがいて、自分のデニムのお直しをお願いしている。常連さんらしい。
「何年も前にはきつぶしてもいいくらいはいてて、それから放置してたんだけど
やっぱり着たいなと思って。」
店主は生地をすかしてみたり、かがる糸を選んだり、丁寧にこのデニムのリペアの相談に乗っている。
「今履いているデニムをこんなふうに育てていくのはどうしたらいいですか」
という質問にも詳しく答えている。
いい会話だな〜と思って聴いていた。

そしてとうとう私の番!!!

店主、ニコニコしながら、
「やりましたよ〜。」
と袋から出す時に渡したハギレが落ちた。
あれ?ほとんど使っていない?
「そう!あまり使うと分厚くなっちゃうでしょ〜だからほとんど使わなかったよ。」
そして全貌を見せてくれる。
すごい!!!
小さな穴も大きな亀裂も丁寧にミシンをかけてくれて
力のかかるところや裂け方でミシンの方向もその都度変えてくれて
インナーもきれいに!!

丁寧にミシンで走ってくれている!
まるでコートの新しい模様!
そしてインナーも。

「補修してる間もいろんな人が見て、カッコいいですね!すごいですね!僕も持ってきていいですかって言われたよー!」

力のかかる方向や裂け具合でミシンの走る向きを変えている。
ひとことで言うとプロの技ってことなんだけど。
これからもし、自分が服をリペアすることがあれば、目標になるコートだなと思います。

直すと一言で言ってもわかっていなくては直せない。
古民家も同じようなところがあって、圧倒的に壊れていると何から始めて行けばいいのかがよくわからない。
そんな時によくわかっている人が見せてくれる姿勢やものに対する向かい方で
なんとなく光が見えてくることがあるのだなとわかった次第。

古民家の状況を正しくみてくれるもとさんやこのユニオンパスタイムの店主の方は作業を通して見せてくれるなと思っています。

ユニオンパスタイム店主
写真撮影、note掲載にも
気軽にOKしていただきました。
ありがとうございます!
何もなくても行きたい店です!